1. 喜田村洋一弁護士に対する懲戒請求、近々に綱紀審査会へ申し立て、袴田事件に類似した構図の民事事件

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2014年04月22日 (火曜日)

喜田村洋一弁護士に対する懲戒請求、近々に綱紀審査会へ申し立て、袴田事件に類似した構図の民事事件

弁護士懲戒請求の最終プロセスに、綱紀審査という制度がある。日弁連のウエブサイトによると綱紀審査は、次のような制度である。

綱紀審査は、学識経験者(弁護士、裁判官、検察官およびそれらの経験者を除きます。)である委員のみで構成される綱紀審査会において行われます。

KOKUSYOで報じてきたように、わたしは著作権裁判(原告・読売の江崎法務室長 被告・黒薮)の勝訴(2010年2月)確定を受けて、江崎氏の弁護士を務めた喜田村洋一・自由人権協会代表理事に対する弁護士懲戒請求を第二東京弁護士会へ申し立てた。

江崎氏の名義で裁判所に提出した催告書の作成者が、実は喜田村弁護士の代筆であった可能性を認定する判決を根拠とした懲戒請求申立だった。江崎氏サイドには、もともと著作者人格権を根拠として提訴する権利がなかったのに、名義を「江崎」に偽って提訴し、それを前提に書面を提出し、みずからの主張を展開したからだ。

最近、捏造した証拠に基づいて、検察が有罪を主張した袴田事件が注目を集めているが、わたしの著作権裁判は、それとよくにた構図の「民事事件版」である。裁判所もそれを見抜いて、江崎氏らを敗訴させたのである。

この問題の責任追及は、2010年に勝訴が確定した時点から始まった。その具体的なかたちのひとつが、弁護士懲戒請求である。しかし、第二東京弁護士会はこれを棄却した。日弁連に異議を申し立てたが、ここでも棄却された。そこで今回、綱紀審査を求めたのである。

事件の経緯は、次の通りである。

■事件の経緯

■読売が黒薮に対して起こした著作権裁判の提訴行為が弁護士としてあるまじき行為だった高い可能性を認定した知財高裁判決。(7ページ[イ]参照)

以下、綱紀審査会に提出する「理由書」の草案を紹介しよう。

◇理由書の全文

綱紀審査を申し出た理由は、次の6点に集約できる。

(1)決定書に理由が記されていない

日弁連が懲戒請求者に送付した平成26年3月24日付け「決定書」(以下、本件決定書)には、本件異議申立を棄却した理由が記されていない。確かに同書面には、「理由」と称する原稿用紙1枚にも満たない短い記述があるが、厳密に言えばこれは理由を述べたものではなくて、単に審査の結論を述べているにすぎない。

 異議申出人の対象弁護士に対する本件懲戒請求の理由及び対象弁護士の答弁の要旨は、いずれも第二東京弁護士会綱紀委員会第2部会の議決書に記載のとおりであり、同弁護士会は同議決書記載の認定と判断に基づき、対象弁護士を懲戒しないこととした。   ?  本件異議の申出の理由は、要するに、前記認定と判断は誤りであり、同弁護士会の決定には不服であるというにある。

当部会が、異議申出人から新たに提出された資料も含め審査した結果、同議決書の認定と判断に誤りはなく、同弁護士会の決定は相当である。   ?  

よって、本件異議の申出は理由がないので棄却することを相当とし、主文のとおり議決する。

松田弁護士が「理由」と称しているものが、理由書に不可欠な最低限の体すらなしていないことは、明らかだ。理由の記述とは、結論に至るプロセスを具体的、かつ秩序だてて記述する文章形態である。ところが本件決定書は、「異議申出人から新たに提出された資料も含め審査した結果、同議決書の認定と判断に誤りはなく、同弁護士会の決定は相当である」と判断したという結論だけを述べている。もちろん異議申立書の中で、懲戒請求者が指摘した疑問点には一切言及していない。

このような対処方法がまかり通るのであれば、「談合」で結論だけを先に決めて、それを裏付ける具体的な審理を隠蔽する行為が許されることになる。それが日本の司法界を劣化させることは論を待たない。

繰り返しになるが、上記引用の記述は理由ではなくて、結論を述べているにすぎない。理由とは、「結論に至るプロセスを具体的、かつ秩序だててに記述する文章形態」である。 ?  このようなものを決定書と称して送付してきた事自体が驚きに値する。不誠実で懲戒請求者を著しく愚弄しているうえ、最初から懲戒対象弁護士を「救済」する意図を有しているとしかいいようがない。懲戒請求制度が形骸化している証ではないだろうか。

ちなみに懲戒請求者は50名を超える法律の専門家やジャーナリストに、本件懲戒請求の原因となった本件著作権裁判の知財高裁判決を検証してもらったが、共通した評価は、懲戒請求弁護士が虚偽の事実を前提に提訴に及んだ事実は、処分に値するというのもだった。日弁連の見解とは、大きく異なっている。

(2)新証拠の審理が行われていない

日弁連に対して異議申立をした際に、新たに提出した証拠(甲1号証)をめぐる見解が審理された形跡がない。少なくとも本件決定書には、甲1号証に関連した審理のプロセスがまったく記されていない。突飛に結論だけを提示されてもとまどう。なぜ、甲1号証を基に本件催告書の内容がウソであることを懲戒対象弁護士が認識していた疑惑を審理しないのか、理由が示されていない。

甲1号証は懲戒対象弁護士が『佐野眞一が殺したジャーナリズム』(宝島社)に寄稿した「法律家がみた『佐野眞一盗用問題』の深刻さ」と題する記事である。その中に懲戒対象弁護士が考える著作物の定義が示されている。

?したがって、著作権法との関係で盗作や盗用を考えるにあたっては、対象となる作品や文章が著作物にあたるかどうかが一番重要である。??  ??

その観点で、何が著作物かを上の要件に即して考えると、まず、著作物は「表現」でなければならないから、「思想、感情若しくはアイデア、事実若しくは事件など」で、表現でないものは、著作物になりえない。 ? たとえば、「○月○日、△△で、AがBに?と言った(AがBを手で殴りけがをさせた)」というような事実ないし事件そのものは、表現ではないから、著作権法の対象ではない。同様に、「ある事件についての見方」とか、「ある事件を報じるにあたっての方法」といったアイデアに属するものも、表現ではないから、著作権法の保護は受けられない。

また、創作性がなければならないから、ごく短い文章で、誰が書いても同じになるようなものであれば、これも著作物ではない(もっとも、短いからダメということではないのであり、たとえば俳句などは17音しかないが、それでも著作物に該当しうる)。?

一方、著作権法は著作物を次のように定義している。

1、著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

つまり懲戒弁護士が考える著作物と著作権法が定義する著作物の基本的に定義は同じである。  ところが本件著作権裁判で、対象弁護士が作成した可能性が認定された本件催告書には、次に引用する文書(以下、本件回答書)が著作権法でいう著作物に該当するので、削除に応じない場合は、刑事告訴も辞さない旨が記されているのだ。

前略? 読売新聞西部本社法務室長の江崎徹志です。? 2007年(平成19年)12月17日付け内容証明郵便の件で、訪店について回答いたします。? 当社販売局として、通常の訪店です。

本件催告書の内容は支離滅裂な恫喝文書ということになる。著作物ではないものを、著作物だと断言し、削除に応じない場合は、法的な手段を取ると述べているのだ。このような手口は、法律の専門家としての権威を悪用した恫喝にほかならない。

対象弁護士は、本件催告書は読売新聞西部本社の江崎徹志法務室長が作成したものだと主張してきたが、対象弁護士が作成した高い可能性を認定する本件著作権裁判の判決は、最高裁でも確定している。

たとえ懲戒対象弁護士が主張するように、本件催告書の作成者が江崎氏であったとしても、本件催告書の内容を懲戒対処弁護士が確信した上で、江崎氏がみずからの氏名を付して、懲戒請求者に送付したわけだから、あるまじき行為を幇助したことになる。

(3) 排斥期間についての誤り

日弁連に対する異議申立書の中でも言及したが、第二東京弁護士会が下し、日弁連が追認した本件懲戒請求の棄却決定の最大の誤りは、本件弁護士懲戒請求は、本件著作権裁判の判決が2010年2月に最高裁で決定したことを前提として、提起したにもかかわらず、本件著作権裁判の評価は故意に避けて、判決確定を受けて、懲戒請求者が読売新聞社と江崎法務室長に対して起こした本件損害賠償裁判の判決を根拠に、懲戒請求者の請求を棄却していることである。

懲戒請求者は、懲戒対象弁護士らが、提訴権がないにもかかわらず虚偽の事実を前提に提訴に及び、それを前提として、みずからの主張を展開したことを問題視して、本件懲戒請求を申し立てたのである。

虚偽の事実や証拠を前提に審理を進めた場合、袴田事件にみられるような重大な人権侵害事件が発生する恐れが多分にある。それを回避するために、日弁連の『弁護士職務基本規定』には、第75条で、「弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない」と念を押している。

本件損害賠償裁判で、懲戒請求者が損害賠償責任を問う対象としたのは、読売新聞社と江崎氏であって、懲戒対象弁護士ではない。もちろん懲戒対象弁護士の言動も審理の対象になったが、新たに作成した準備書面(1)で詳しく言及するように、肝腎の本件損害賠償裁判の福岡高裁判決には、懲戒対象弁護士に関する事実認定には明白な誤りがある。

結論を先に言えば、本件損害賠償裁判の福岡高裁判決は、「本件著作権裁判の内容や経過からすると」「本件催告書の作成者を一義的に決めることは困難であった」と記述しているが、「本件著作権裁判の内容や経過からすると」、催告書の作成者が懲戒対象弁護士であった高い可能性を認定しているのである。つまり本件損害賠償裁判の福岡高裁判決の記述に事実誤認があり、それを前提に本件決定書は、対象弁護士を救済したのである。

ところが本件決定書は、本件損害賠償裁判の事実誤認の判決を根拠に、懲戒請求を棄却しているのだ。懲戒請求者が本件懲戒請求の根拠としている本件著作権裁判の判決を、恣意的に無視しているのである。

本件著作権裁判の判決確定を根拠とした本件懲戒請求申立にもかかわらず、本件損害賠償裁判の判決を根拠に、懲戒請求を棄却すること自体、論理の整合性が完全に欠落している。本件損害賠償裁判の判決は、本件懲戒請求にとって最も重要な部分に、事実の誤認があるのだ。この誤認は、読売新聞社を「救済」するために故意に行われた可能性もある。このあたりの事情については、『新聞の危機と偽装部数』(甲2号証)を参考にされたい。

本件懲戒請求の原因である本件著作権裁判の判決を無視して、副次的な意味しかもたない本件損害賠償裁判の判決にそった審理が許容されるのであれば、懲戒請求者が本件損害賠償裁判を起こさなければ、本件懲戒請求で審理される対象が本件著作権裁判だけに限定され、審理の結果が異なる可能性が生じることになる。しかし、読売新聞社に対して損害賠償を求める事と、懲戒対象弁護士の言動を審理することは、別問題である。

(4)袴田事件の病理に類似

本件懲戒請求の排斥期間については、日弁連に対する異議申立書で主張した通りである。本件懲戒請求は、本件著作権裁判の判決が、2010年2月に最高裁で確定したことを受けて提起したものである。従ってこの日付が、排斥期間の起点である。

第2東京弁護士会の議決書は、江崎氏が本件催告書を作成・送付した日付を排斥期間の起点にしているが、本件懲戒請求で対象となっているのは、江崎氏の行為ではなくて、懲戒対象弁護士の行為であるから論理が根本から破綻している。

懲戒対象弁護士が本件催告書を送付したのであれば、その日を排斥期間の起点として検討する余地はあるが、懲戒対象弁護士自身が本件催告書を作成して送付したのは江崎氏であると主張しているのであるから、検討の余地すらない。

それに懲戒請求者が最大の問題としているのは、本件催告書の送付行為そのものではなくて、本件催告書にまつわる種々の「虚偽」を前提として、懲戒対象弁護士が本件著作権裁判の期間中に、みずからの主張を法廷で展開したことである。だれが本件催告書を送付したにせよ、それは枝葉末節にすぎない。問題の本質は、虚偽の事実をでっちあげて強引に裁判を起こし、裁判所に書面を提出し、自己の主張を展開したことにほかならない。

繰り返しになるが、このような行為は、袴田事件の病理と根本的に同じである。

なお、繰り返しになるが排斥期間と懲戒請求事由については、別途、準備書面(1)で補足する。

(5)懲戒対象弁護士からの反論書の不在  

懲戒対象弁護士は、懲戒請求者による日弁連への異議申立てに対して、まったく反論していない。それにもかかわらず日弁連は、懲戒対象弁護士の主張を認めたうえ、具体的な理由を提示していない。

(6)過去の処分事例との整合性について  

日弁連で下された過去の処分例に照らし合わせて、懲戒対象弁護士に対して戒告すら行わないのは疑問がある。過去の処分例として、たとえば「株式会社の顧問弁護士でありながら株の割り当て等に関して有効な法的措置が取れなかった」(登録番号17154)があるが、この程度の事で戒告処分を受ける一方、虚偽の事実を前提に裁判を起こし、自説を展開しておきながら、何の処分も受けないのは、著しく公平さにかける。