1. 弁護士に対する大量懲戒請求事件を考える、1億円に近い「和解金」が入る構図に

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2018年08月23日 (木曜日)

弁護士に対する大量懲戒請求事件を考える、1億円に近い「和解金」が入る構図に

このところ、「弁護士から裁判提起をほのめかされたことがある」という情報提供が相次いで寄せられている。個々の件について調査中なので、いまの段階では、弁護士名の公表はひかえるが、武道の有段者が素人を恫喝しているような印象がある。

柔道や空手の流派によっては、路上での武術の使用は禁止されているが、法律の専門家には規制がない。

この種の事件でいま問題になっているのは、弁護士が大量の懲戒請求を受けた件である。組織的に行われた「攻撃」である。一説によると懲戒請求の件数は、1人の弁護士につき900件を超えているという。懲戒理由は同じらしい。

これに対して、弁護士側は懲戒請求者全員に対して、損害賠償裁判を起こすことを宣言した。その方針を記者会見を開いて発表した弁護士もいる。ただし、実際に提訴に及ぶ前に和解に応じる旨も明らかにした。

その和解条件のひとつに、不当懲戒を認めて10万円を支払うというものがある。

 

◆莫大な和解金が入る構図

弁護士を軽々しく懲戒請求すること自体には問題がある。当然、正当な理由がなければ懲戒は認められるはずがない。弁護士であれば、そんなことは分かっているはずだ。懲戒請求の対象になるのは、懲戒理由の中身であって、量ではないからだ。署名を提出するのとは意味が異なるのだ。

と、なれば懲戒対象弁護士は、答弁書を1枚作成して、それをコピーして書面を準備し、弁護士会へ提出するだけですむ話だ。

ところが懲戒請求された弁護士らは、懲戒請求者1人につき10万円の支払を提案しているのだ。それに応じなければ、提訴することも宣言している。

懲戒請求者が900人とした場合、全員が和解に応じれば、弁護士は9000万円もの和解金を得ることになる。訴訟をして弁護士が勝訴し、かりに20万円の損害賠償が認められた場合は、その判例を根拠にして、和解に応じなかった懲戒請求を提訴すれば、さらに莫大な額の金銭が入ってくることになる。

おそらく1億円を超えるだろう。

読者はこのような構図をどう考えるだろうか。構図がおかしいと感じないだろうか。

実際、おかしいと感じた人もいて、先に述べた戦術を選んだ弁護士の1人に対して、今年の5月、懲戒請求を申し立てた。この人は大量懲戒請求には加わっていない。無関係である。構図自体に問題があると考えて、懲戒請求したのである。

ところが、これに対して懲戒対象弁護士が選んだのは、やはり名誉毀損裁判だった。

 

◆軽々しい裁判提起

軽々しく裁判を提起したり、提訴をほのめかす風潮が生まれている。それが言論を委縮させていく。日本は、一歩ずつ言論の自由のない国へ近づいている。警察や政府がそれを主導しているのではない。「市民」の側が自分で自分の首を絞めはじめているのである。