1. 袴田事件と類似した事件の構図、喜田村弁護士に対する懲戒請求、準備書面(1)を公開 

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2014年04月23日 (水曜日)

袴田事件と類似した事件の構図、喜田村弁護士に対する懲戒請求、準備書面(1)を公開 

次に示すのは、喜田村洋一弁護士(自由人権協会代表理事)に対する弁護士懲戒請求で、日弁連の綱紀審査委に提出する予定の準備書面(1)の全文である。

■準備書面(1)の全文

懲戒請求者:黒薮哲哉

対象弁護士:喜田村洋一

はじめに  

準備書面(1)では、「1、排斥期間の起点について」と、「2、弁護士職務基本規定に照らし合わせた懲戒対象弁護士の言動」の2点について、説明する。

この事件は、捏造した証拠を前提に検察が有罪を主張した袴田事件の構図と類似している。しかし、袴田事件が刑事裁判であるのに対して、本件懲戒請求の主要な原因になっている本件著作権裁判は、民事裁判の場で争われた。

本件著作権裁判の訴因は本件催告書である。本件催告書は、「江崎徹志」の名が付されているが対象弁護士により作成された高い可能性が本件著作権裁判の判決で確定した。つまり対象弁護士が作者であるにもかかわらず、江崎名義で懲戒請求者に本件催告書を送り付け、これがウエブサイトで公表されると、本件著作権裁判を起こし、もともと江崎氏が持ち得ない著作者人格権を主張したのである。当然、それを前提として懲戒対象弁護士は書面を提出し、法廷で自らの主張を展開したのである。

しかし、裁判所はこうしたあるまじき行為を見破り、江崎・喜田村の両名を敗訴させたのである。

懲戒請求者は、懲戒対象弁護士が、虚偽の事実を設定して裁判を提起し、江崎氏に著作者人格権がないことを知りながら、裁判所に書面を提出し、自己の主張を展開したことを問題視している。袴田事件の類似性とは、こうした事件の性質を意味している。

1、排斥期間の起点について

第二東京弁護士会が作成し、日弁連が追認した本件決定書には、棄却理由として排斥期間の終了を理由とした次の記述がある。

「(1)本件催告書が作成された時期は、平成19年12月21日であるところ、本件懲戒請求書を第二東京弁護士会が受け付けたのが平成23年1月31日であるので、懲戒請求事由1の事実は既に3年間の排斥期間を過ぎており、懲戒手続きを開始することができない。

(2)そもそも、本件催告書を作成、送付したのは、対象弁護士ではなく、江崎であって、当該行為は対象弁護士に関する懲戒事由になり得ない。」

A 事実関係の誤りについて

(1)(2)の理由は的外れである。まず、事実関係の誤りから指摘する。 決定書は、「そもそも、本件催告書を作成、送付したのは、対象弁護士ではなく、江崎」であると述べているが、本件催告書の作成者、送付者につて知財高裁判決(平成21年[ネ]第10030号)は次のように認定している。

「上記認定事実によれば、本件催告書には読売新聞西部本社の法務室長の肩書きを付して原告[黒薮注:江崎のこと]の名前が表示されているものの、その実質的な作成者は(本件催告書が著作物と認められる場合は、著作者)は原告とは認められず、原告代理人[黒薮注:懲戒対象弁護士](又は同代理人事務所の者)である可能性が極めて高いものと認められる。」

「すなわち、?原告の著作権法や法的紛争の解決に関する知識経験の程度、?読売新聞西部本社と販売経営者との法的紛争の重要性に関する同社の認識の程度等、?原告及び原告代理人のいずれからも、本件催告書作成過程を示す客観的なデータは提出されていないこと等に照らすならば、本件催告書は、原告から相談を受けた、原告代理人事務所において、本件催告書を作成し、そのデータをメールに添付する方法により、原告に送信し、これを受信した原告が、被告に対して送信したものと認定することによって、辻褄が合うといえる 」

とはいえ、確かに第二東京弁護士会が棄却の根拠として全面的に採用している本件損害賠償裁判(平成24年[ネ]第794号)の判決は、「本件著作権裁判の内容や経過からすると、同人が、自分名義で出した文書は自分の著作物であると考えていることがうかがわれ、本件催告書の作成者を一義的に決めることは困難であったという事情にも照らせば、同人が故意に虚偽を並べて本件著作権仮処分を申し立てたと認めることは困難である」と、述べて必ずしも懲戒対象弁護士が本件催告書の作成者であるとは認定できないという判断を示している。

しかし、この記述は、出典である本件著作権裁判の判決を正しく解読せずに記されている。本件損害賠償裁判の判決は、「本件著作権裁判の内容や経過からすると・・・」と出典を明記したうえで、「本件催告書の作成者を一義的に決めることは困難」と述べているが、既に述べたように本件著作権裁判は、本件催告書の作成者を「原告代理人[黒薮注:懲戒対象弁護士](又は同代理人事務所の者)である可能性が極めて高いものと認められる」と、認定しているのである。

それが懲戒対象弁護士らが、敗訴した大きな要因だった。  本件損害賠償裁判の福岡高裁判決を書いた木村元昭裁判長は、本件著作権裁判の判決を精査・検証せずに、読売新聞社を勝訴させるために、恣意的に事実を捻じ曲げ判決を書いた可能性が高い。

B 問題にしているのは裁判期間中の懲戒対象弁護士の行為

第二東京弁護士会の本件決定書は本件催告書の作成日(それは同時に送付日でもある)にあたる平成19年12月21日を排斥期間の起点として、第二東京弁護士会が本件懲戒請求を受け付けた平成23年1月31日の時点では、すでに排斥期間の3年を過ぎているとして、本件懲戒請求を棄却している。この判断は2重に誤りをおかしている。

B-1

本件懲戒請求の対象となっているのは、改めて言うまでもなく、喜田村洋一弁護士であって、江崎氏ではない。と、すれば本件懲戒請求の対象者ではない江崎氏の行為を排斥期間の起点にすることは論理が破綻している。

かりに懲戒対象弁護士が本件催告書の作成者・送付者であることを、本件決定書が認定していれば、本件催告書の作成日・送付日を排斥期間の起点として検討する余地はあるが、本件決定書は江崎氏を本件催告書の作成者・送付者として認定しているのである。繰り返しになるが、そうであれば本件懲戒請求の対象外の人物の行為を排斥期間の起点とするのは誤りだ。

B-2

しかし、懲戒請求者が重大問題として審理を求めているのは、本件催告書の作成行為・送付行為そのものではない。本件催告書の作成過程から提訴に至る経緯が虚偽に満ちている上に、本件催告書に書かれた内容がまったくのデタラメであることを懲戒対象弁護士が知っていながら、ウソを前提として本件著作権裁判の進行中、裁判所に書面を提出し、みずからの主張を展開したことを問題視しているのである。

このような行為が懲罰の対象にならないとすれば、虚偽の事実を捏造して、袴田巌氏の半生を牢獄に閉じ込めた検察も罰せられないことになる。日弁連が袴田氏を支援してきたことを踏まえれば、捏造や虚偽を前提とした法廷での主張に対しては、厳しく罰するのが道理である。

B-3 ?

たとえ江崎氏による催告書の作成日・送付日を、排斥期間の起点とするとしても、そもそも懲戒対象弁護士らによるあるまじき行為が発覚したのは、2009年1月に、東京地裁で実施された江崎氏に対する本人尋問の場であり、それが最終的に最高裁で司法認定されたのは、2010年2月であるから、本件著作権裁判の判決確定を前提に提起した本件懲戒請求で、対象外の江崎氏が本件催告書を作成・送付した平成19年12月21日を排斥期間の起点にすることは、論理が破綻している。

繰り返しになるが懲戒請求者は、本件催告書の送付行為そのものを問題にしているのではなくて、本件催告書が孕む重大な諸問題を懲戒対象弁護士が認識していながら、あえてそれを隠し、虚偽を前提に書面を提出したり、法廷で自論を展開したことを問題にしているのである。

たとえ江崎氏が本件催告所の作成者であり、送付者であるとしても、少なくとも本件催告書の内容がデタラメであることを、江崎氏の代理人であり、著作権問題の権威である懲戒対象弁護士は、知る立場にあったわけだから、責任は免れない。

2、「弁護士職務基本規定」に照らした懲戒対象弁護士の行為

日弁連の弁護士倫理委員会が執筆・編集している『弁護士職務基本規定』は前文で次のように述べている。

 「弁護士は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする。  その使命達成のために、弁護士には職務の自由と独立が要請され、高度の自治が保障されている。

 弁護士は、その使命を自覚し、自らの行動を規律する社会的責任を負う。  よって、ここに弁護士の職務に関する倫理と行為規範を明らかにするため、弁護士職務基本規定を制定する。」

前文に謳われている理念に照らし合わせた場合、弁護士が虚偽の事実を前提に提訴にいたる行為を主導したり、幇助した場合、懲戒の対象になることは言うまでもない。懲戒対象弁護士は、次の条項に違反している。

「 1条:弁護士は、その使命が基本的人権の擁護と社会正義の実現にあることを自覚し、その使命の達成に務める。 」

「4条:弁護士は、司法の独立を擁護し、司法制度の健全な発展に寄与するように務める。」

?「10条:弁護士は、不当な目的のため、又は品位を損なう方法により、事件の依頼者を誘導し、又は事件を誘発してはならない。」

「14条:弁護士は、詐欺的取引、暴力その他違法若しくは不正な行為を助長し、又はこれらの行為を利用してはならない。」

「31条 弁護士は、依頼の目的又は事件処理の方法が明らかに不当な事件を受任してはならない。」

「74条 弁護士は、裁判の公正及び適正手続きの実現に務める。」

「75条 弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。」

日弁連が袴田事件委員会を設置して、検察の証拠捏造に端を発したこの冤罪事件の元容疑者を支援してきた経緯を踏まえると、虚偽を前提に裁判を起こす行為に対しては、刑事事件であれ、民事事件であれ、厳しく対処すべきである。

日弁連の過去の懲戒事例に照らし合わせても、懲戒対象弁護士が何の処分も受けずに、連日のように法廷に姿を見せている事実を踏まえたとき、司法界に正義はあるのかという疑問を抱かざるを得ない。

弁護士は国費で養成されているのであるから、不正に対しては厳しく対処すべきである。