喜田村洋一弁護士に対する懲戒請求 日弁連が黒薮の異議申立を棄却 ずさんで舌足らずな決定書の文面
日弁連は、3月19日、わたしが申し立てていた喜田村洋一・自由人権協会代表理事に対する弁護士懲戒請求(第二東京弁護士会が下した棄却決定に対する異議申立)を棄却した。喜田村側からの反論は提出されていなかった。
※なお、この事件の経緯を知らない方は、下記、紫文字で記した【事件の経緯】を最初に読むことをお勧めします。前出記事に加筆した内容です。
日弁連の決定書には、形式的には棄却理由が綴られているが、具体的な理由は何も記録されていない。「理由」と称する記述は次の通りである。驚くべきずさんな書面だ。
異議申出人の対象弁護士に対する本件懲戒請求の理由及び対象弁護士の答弁の要旨は、いずれも第二東京弁護士会綱紀委員会第2部会の議決書に記載のとおりであり、同弁護士会は同議決書記載の認定と判断に基づき、対象弁護士を懲戒しないこととした。
本件異議の申出の理由は、要するに、前記認定と判断は誤りであり、同弁護士会の決定には不服であるというにある。
当部会が、異議申出人から新たに提出された資料も含め審査した結果、同議決書の認定と判断に誤りはなく、同弁護士会の決定は相当である。
よって、本件異議の申出は理由がないので棄却することを相当とし、主文のとおり議決する。
平成26年3月19日
日本弁護士連合会綱紀委員会第1部会
部会長 松田耕治
松田弁護士が「理由」と称しているものが、理由説明の体をなしていないことはいうまでもない。理由書は、結論に至る経緯を具体的に説明するものである。ところが松田氏が言及する理由とは、「異議申出人から新たに提出された資料も含め審査した結果、同議決書の認定と判断に誤りはなく、同弁護士会の決定は相当である」と判断したことである。
が、これは理由ではなくて、結論を述べているにすぎない。理由とは、結論に至るプロセスの説明である。
大学や専門学校の入試に小論文という科目があるが、この決定書は、誰が採点しても小論文のレベルにすら達していない。このようなものを決定書と称して、弁護士が送付してきた事自体が驚きに値する。不誠実で他人を卑下しているとしかいいようがない。
わたしが第二東京弁護士会の議決を不服として、日弁連に再検証を求めたのは、次の2点である。
問題となった文書(催告書)に書かれた内容そのものが、支離滅裂、デタラメだった事実である。喜田村弁護士がそれを知りながら、裁判所に提出した事実である。それを裏付ける新たな資料を、わたしは日弁連に提出している。
■新証拠PDF(喜田村弁護士執筆の記事。同氏が考える著作物の定義と催告書の中で採用されている著作物の定義が異なる)
著作権裁判をめぐる事件であるにもかかわらず、著作権裁判所で下された判決(黒薮勝訴)を無視して、著作権裁判の勝訴を前提にその後、わたしが起こした損害賠償裁判(読売勝訴)の判決の方を根拠にして、第二東京弁護士会がわたしの申立を退けた事実である。繰り返しになるが、わたしは著作権裁判の勝訴(最高裁で判決が確定済み)を前提として、今回の懲戒請求を申し立てたのである。それにもかかわらず、第二東京弁護士会は著作権裁判の判例を故意に無視し、副次的な意味しかもたない損害賠償裁判の判決を根拠に、喜田村弁護士を「救済」したのである。
わたしは、?と?に基づいての再検証を求めるために、日弁連に異議を申し立てたのである。と、すれば、?と?について、日弁連の見解を明確にするのが、松田氏の任務であるはずだ。なぜ、著作権裁判の判決を無視しているのかという疑問と、催告書の内容がデタラメだった事実をどう評価するのかを問うたのである。それについての判断を示し、その理由を説明するのが、日弁連の役割だったはずだ。
このような書面を配達証明で受け取ると、そもそも最初から異議申立を真面目に検証する気などなかったのではないかと、疑わざるをえない。弁護士会という一種の「村社会」の中で、仲間を仲間が処分することのむずかしさを痛感する。
懲戒請求制度も、弁護士の正義をPRするための儀式に過ぎないと受け取らざるを得ないのである。結局、弁護士会の体質も、利権集団的な傾向が強いのかも知れない。事実、同会は、政治連盟を通じて、政治献金を支出している。
■参考記事:政界進出狙う宇都宮健児氏、日弁連も政界へ献金 献金先の政治家同士で国会質疑の茶番劇も
改めて言うまでもなく、棄却決定に抗して日弁連に綱紀審査を申し立てることになる。
以下、事件の経緯を説明した後、『弁護士職務基本規程』に照らし合わせて、今回の懲戒請求を再検証してみたい。わたしが従来から主張してきたのは、
75条 弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。
と、いう条項だったが、細かに検討してみると、ほかにも今回の事件に該当するのではないかと思われる条項が多数ある。
さらに日弁連による弁護士の処分例を紹介しよう。第3者からみると、適正な処分を受けている弁護士もいるようだ。
最後の「資料編」として、書面などをリンクした。
【事件の経緯】
複雑なようで、実は単純なこの裁判。どのような経緯で何が争われたかを秩序だて、整理するためには、著作者人格権とは何かを理解することが大前提になる。逆説的に言えば、著作者人格権とは何かを理解すれば、この裁判で何が争点になり、何を理由に裁判所は江崎氏を敗訴させ、何を根拠に喜田村弁護士が懲戒請求にかけられたかが輪郭を現す。??
?◇だれが作者なのかという問題
おそらく読者の大半は、著作権という言葉を聞いたことがあるだろう。文芸作品などを創作した人が有する作品に関する権利である。その著作権は、大きく著作者財産権と著作者人格権に分類されている。
このうち著作者財産権は、作品から発生する財産の権利を規定するものである。たとえば作者が印税を受け取る権利である。この権利は第3者にも譲渡することができる。 これに対して、著作者人格権は、作者だけが有する特権を規定したものである。たとえば未発表の文芸作品を公にするか否かを作者が自分で決める権利である。第3者が勝手に公表することは、著作者人格権により禁じられている。
著作者人格権は、著作者財産権のように他人に譲渡することはできない。「一身専属」の権利である。 この「一身専属」は、江崎氏がわたしに対して提起した著作権裁判(2008年に提訴)を考える上で、重要な意味を持っている。江崎氏の提訴は、この著作者人格権に基づいたものだった。
江崎氏は、わたしが行ったある行為に対して、自分だけが持つ特権?著作者人格権を根拠として、裁判を起こしたのである。 ? ある行為とは、江崎法務室長がわたし宛にメールで送付してきた催告書を、新聞販売黒書(現、MEDIA KOKUSYO)に掲載したことである。江崎氏は、自分が著作者人格権を有する催告書を、わたしが無断で新聞販売黒書に掲載したとして、提訴に及んだのである。
代理人は、今回の懲戒請求の対象になった喜田村洋一・自由人権協会代表理事だった。
? ところが裁判の中で、問題の催告書には「作者」が別にいたらしいことが判明したのだ。著作者人格権を理由として起こした裁判そのものの正当性が問われることになったのである。
東京地裁は、催告書を執筆したのは喜田村弁護士か彼の事務所スタッフであった高い可能性を認定した。地裁、高裁、最高裁も、この司法判断を認定した。そして判決は確定したのである。 つまり、江崎氏はもともと著作者人格権を有していないのに、著作者人格権を根拠にして、わたしを法廷に立たせたのだ。
それが判明して、門前払いのかたちで敗訴したのである。 ? これに伴いわたしは、喜田村洋一弁護士の責任も、弁護士懲戒請求というかたちで問うことにしたのである。
◇新聞販売黒書に掲載した2つの書面??
著作権裁判の発端は、読売と福岡県広川町のYC広川の間で起こった改廃をめぐるトラブルだった。当時、「押し紙」問題を取材していたわたしは、この係争を追っていた。 幸いに係争は2007年の暮ごろに解決のめどがたち、読売はそれまで中止していたYC広川に対する定期訪問を再開することを決めた。
しかし、読売に対する不信感を募らせていたYC広川の真村店主は、読売の申し入れを受け入れるまえに、念のために顧問弁護士から、読売の真意を確かめてもらうことにした。 ? そこで江上武幸弁護士が書面で読売に真意を問い合わせた。
これに対して、読売は江崎法務室長の名前で次の回答書を送付した。
前略 読売新聞西部本社法務室長の江崎徹志です。2007年(平成19年)12月17日付け内容証明郵便の件で、訪店について回答いたします。当社販売局として、通常の訪店です。
わたしは、新聞販売黒書の記事に、事実の裏付けとしてこの回答書を掲載した。すると即刻に江崎氏(当時は面識がなかった)からメールに添付した次の催告書が送られてきたのである。
冠略 貴殿が主宰するサイト「新聞販売黒書」に2007年12月21日付けでアップされた「読売がYC広川の訪店を再開」と題する記事には、真村氏の代理人である江上武幸弁護士に対する私の回答書の本文が全文掲載されています。
しかし、上記の回答書は特定の個人に宛てたものであり、未公表の著作物ですので、これを公表する権利は、著作者である私が専有しています(著作権法18条1項)。 貴殿が、この回答書を上記サイトにアップしてその内容を公表したことは、私が上記回答書について有する公表権を侵害する行為であり、民事上も刑事上も違法な行為です。
そして、このような違法行為に対して、著作権者である私は、差止請求権を有しています(同法112条1項)ので、貴殿に対し、本書面到達日3日以内に上記記事から私の回答を削除するように催告します。 貴殿がこの催告に従わない場合は、相応の法的手段を探ることとなりますので、この旨を付言します。
わたしは、今度はこの催告書を新聞販売黒書で公開した。これに対して、江崎氏は、催告書は自分の著作物であるから、著作者人格権に基づいて、削除するように求めてきたのである。が、作者は別にいたのだ。
◇知財高裁の判決
著作権裁判では、通常、争点の文書が著作物か否かが争われる。著作物とは、著作権法によると、次の定義にあてはまるものを言う。
思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
改めて言うまでもなく、争点の文書が著作物に該当しなければ、著作権法は適用されない。 ? わたしの裁判でも例外にもれず、争点の催告書が著作物か否かが争われた。ただ、催告書の著作物性を争った裁判は、日本の裁判史上で初めてではないかと思う。ちなみに、新聞販売黒書に掲載した回答書の方は、争点にならなかった。
裁判は意外なかたちで決着する。裁判所は、「江崎名義」の催告書の著作物性を判断する以前に、江崎氏が催告書の作成者ではないと判断したのである。つまりもともと著作者人格権を根拠とした「提訴権」がないにもかかわらず、催告書の名義を「江崎」に偽って提訴に及んでいたと判断したのである。
なぜ、裁判所はこのような判断をしたのだろか。詳細を述べると優に50ページを超えるので、詳しくは次に紹介する知財高裁の判決を読んでほしい。
■知財高裁判決
ただ、ひとつだけ理由を紹介しておこう。喜田村弁護士が書いた「江崎名義」の催告書の書式や文体を検証したところ、同氏がたまたま「喜田村名義」で他社に送っていた催告書と瓜二つであることが判明したのだ。同一人物が執筆したと判断するのが、自然だった。
◇弁護士懲戒請求
弁護士職務基本規程の第75条は、次のように言う。
弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。
喜田村弁護士は、問題になった「江崎名義」の催告書を執筆していながら、江崎氏の著作者人格権を前提とした裁判書面を作成し、それを裁判所に提出し、法廷で自論を展開したのである。
当然、弁護士職務基本規程の第75条に抵触し、懲戒請求の対象になる。わたしが懲戒請求に踏み切ったゆえんである。
◇弁護士倫理の問題
なお、裁判の争点にはならかなったが、喜田村弁護士に対する懲戒請求申立ての中で、わたしが争点にしているもうひとつの問題がある。ほかならぬ催告書に書かれた内容そのものがデタラメである事実である。
著作権裁判では、とかく催告書の形式ばかりに視点が向きがちだが、喜田村弁護士が書かれたとされる催告書の内容によく注意すると、内容がデタラメであることが分かる。怪文書とも、恫喝文書とも読める。
端的に言えば催告書は、回答書が江崎氏の著作物なので、削除しろ、削除しなければ、刑事告訴も辞さないとほのめかしているのだ。それがウソであることを示す証拠は、新証拠として日弁連に提出した。
回答書は、本当に著作権法でいう著作物なのだろうか?再度、回答書と著作権法の定義を引用してみよう。
【回答書】前略? 読売新聞西部本社法務室長の江崎徹志です。 2007年(平成19年)12月17日付け内容証明郵便の件で、訪店について回答いたします。当社販売局として、通常の訪店です。
【著作物の定義】 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
誰が判断しても、著作物ではない。しかも、催告書を書いたのは、著作権法の権威である喜田村弁護士である。回答書が著作物ではないことを知りながら、著作物だと書いた強い疑いがあるのだ。しかも、催告書を削除しなければ、刑事事件にすることをほのめかしているのだ。
恫喝ではないだろうか?
◇弁護士職務基本規程 ? 『弁護士職務基本規程』の次の条項に照らして、この事件を検証してみよう。
1条:弁護士は、その使命が基本的人権の擁護と社会正義の実現にあることを自覚し、その使命の達成に務める。
この事件が「基本的人権の擁護と社会正義」に著しく反することは言うまでもない。
4条:弁護士は、司法の独立を擁護し、司法制度の健全な発展に寄与するように務める。
江崎氏に提訴の資格がないのを知りながら、提訴に及んだということは、裁判所を騙したということにならないだろうか?
10条:弁護士は、不当な目的のため、又は品位を損なう方法により、事件の依頼者を誘導し、又は事件を誘発してはならない。
喜田村弁護士がみずから催告書を執筆して、「江崎名義」の提訴を代行したとすれば、「事件を誘発」したことになる。
14条:弁護士は、詐欺的取引、暴力その他違法若しくは不正な行為を助長し、又はこれらの行為を利用してはならない。
江崎氏に提訴の資格がないことを知りながら、提訴を代行した事実は、「不正な行為を助長」したことにならないだろうか?
31条 弁護士は、依頼の目的又は事件処理の方法が明らかに不当な事件を受任してはならない。
江崎氏に提訴の資格がないことを知りながら、提訴すること自体、「事件処理の方法が明らかに不当な事件」に該当しないだろうか?
74条 弁護士は、裁判の公正及び適正手続きの実現に務める。
江崎氏に提訴の資格がないこをと知りながら、提訴を代行した事実は、明らかに「適正手続きの実現に務める」義務に反している。
75条 弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。
喜田村弁護士が催告書を執筆して、「江崎名義」に偽り、それを前提に準備書面や証拠を提出した行為は、75条に抵触する。
◇処分の例
【退会命令の例】
登録番号:18147
所属弁護士会:東京
法律事務所名:榎本精一法律事務所
懲戒種別:退会命令
懲戒年度:2000年2月
処分理由の要旨:土地の競売をさせないために偽装登記をした。他事件あり
登録番号:11294
所属弁護士会:第二東京
懲戒種別:退会命令
懲戒年度:2000年5月
処分理由の要旨:多重債務債務処理で斡旋屋から紹介を受け事務員に処理させる、業務停止期間中に法律業務
【業務停止の例】
登録番号:8383
所属弁護士会:東京
法律事務所名:わかば法律事務所
懲戒種別:業務停止1年6月
懲戒年度:2000年2月 処分理由の要旨:多重債務債務処理で斡旋屋から紹介を受け事務員に処理させる
登録番号:13565
所属弁護士会:札幌
懲戒種別:業務停止1月
懲戒年度:2000年8月
処分理由の要旨:損害賠償事件受任裁判無断欠席、特別送達等郵便が事務所に到着しない
登録番号:11522
所属弁護士会:東京
懲戒種別:業務停止10月
懲戒年度:2000年9月
処分理由の要旨:依頼者の意思確認なしで訴訟提起
【戒告の例】
登録番号:15239
所属弁護士会:名古屋
法律事務所名:渡邉法律事務所
懲戒種別:戒告
懲戒年度:2000年6月
処分理由の要旨:合同事務所で同じ事件を扱う、利益相反行為
登録番号:17245
所属弁護士会:東京
法律事務所名:山脇法律事務所
懲戒種別:戒告
懲戒年度:2000年7月
処分理由の要旨:交通事故損害賠償請求で書類等不備及び速やかな対処せず
登録番号:20431
所属弁護士会:富山 法律事務所名
懲戒種別:戒告
懲戒年度:2000年10月
処分理由の要旨:国選弁護人が被害者宅へ弁償に行くと刑が軽くしたいのかなどと言われキレタお前から金貰ってないと
【資料編】
■読売が黒薮に対して起こした著作権裁判の提訴行為が弁護士としてあるまじき行為だった高い可能性を認定した知財高裁判決。(7ページ[イ]参照)
■黒薮による異議申立書
■日弁連の決定書