10日発売の『紙の爆弾』が喜田村洋一自由人権協会代表理事の懲戒請求事件を、『SAPIO』が「押し紙」を報道
12月10日発売の『紙の爆弾』と『SAPIO』が、わたしが取材している分野の問題を取り上げている。わたしもコメントしている。
◇『紙の爆弾』
まず、『紙の爆弾』は、高田欽一氏の署名記事「警察の裏・マスコミの裏 知られざる未解決事件」。この中に「読売新聞の顧問弁護士 喜田村洋一に懲戒請求」と題する一節(65ページ)がある。
喜田村弁護士に対する懲戒請求の件は、MEDIA KOKUSYOでもたびたびとりあげてきた。この事件は、MEDIA KOKUSYOに掲載された文書(読売の江崎法務室長が、わたしに送付した催告書)の削除を求めて、江崎氏が裁判を起こしたのが発端である。
提訴の根拠としたのは、送付文書が江崎法務室長の著作物で、わたしには公表権がないのに、ウエブサイトで公表したからというものだった。ところが裁判の中で、文書の作成者が喜田村弁護士である強い可能性が判明。もともと法務室長に提訴する資格がなかったのに、強引に提訴に及んでいたことが分かったのだ。最高裁でもこの点が認定された。
注:著作者人格権は他人に譲渡できない。これに対して著作者財産権は譲渡できる。江崎氏が提訴の根拠としたのは、著作者人格権だった。
最高裁の認定を受けて、わたしは喜田村氏に対する懲戒請求を申し立てた。 その根拠としたのは、弁護士職務基本規定の第75条。
弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。
『紙の爆弾』の記事は、「もし申請が通れば、中坊公平日弁連元会長のように、廃業や引退に追い込まれる可能性もある」と述べている。
参考資料:なぜ、裁判所が喜田村氏らが催告書の作成者を偽っていたと判断したのかは、次の知財高裁判決に詳細に記されている。法律の専門家であれば、書類の名義(江崎名義)を偽って裁判を起こす行為がいかに悪質であるかが理解できるだろう。
◇『SAPIO』
喜田村氏に対する懲戒請求の根底にあるのが、「押し紙」問題である。 『SAPIO』に掲載された鵜飼克郎氏の著名記事「販売部数水増しで広告価値を釣り上げる『押し紙』の決定的現場を見た!」は、雑誌による「押し紙」報道の再開を予感させる。 鵜飼氏の調査の一部を紹介しよう。
そのトラックは猛スピードで北上。走ること10分。今度はB新聞の販売店に到着した。まず、店内からビニール袋に入った新聞を5束運び出し、トラックの荷台に乗せた。その後、運転手は慣れた手つきで店の倉庫の扉を開け、中から新聞の束を台車に乗せて運び出し始めた。台車に1回18束を積み、これを4往復した。
また、この記事は、折込チラシの「中抜き」問題にも言及している。折込チラシの「中抜き」とは、次のような手口である。
たとえば広告主が30万枚のチラシを広告代理店に発注すると仮定する。しかし、「押し紙」があるので、30万枚を各新聞販売店に分配しても、余ってしまう。そこで搬入枚数を、広告主には秘密で、たとえば20万枚に減らす。差異の10万枚については、印刷もしない。しかし、請求は30万枚が対象になる。
このような手口が実際に発生している。次に示すのは、バースーディーというブランドショップが発注したチラシの枚数、「中抜き」枚数、それに損害額を示した一覧表である。これらの数字は、裁判の判決で認定されている。