産経の検索結果

2022年10月01日 (土曜日)

兵庫県を対象とした新聞部数のロック調査、朝日、読売、毎日、日経、産経、独禁法違反の疑い

 次に紹介する記事は、2月26日にメディア黒書に掲載したものである。兵庫県を舞台に、朝日、読売、毎日、日経、産経を対象に、新聞部数のロック状態を調査したものである。調査結果から、新聞社が販売店に対してノルマを課している可能性が推測できる。これは独禁法に抵触する。

同じ記事を再掲載するのは、公正取引委員会や裁判所に「押し紙」問題を解決しようという意思が毛頭ないことが明白になったからだ。これらの公権力機関が、なぜか新聞社に「便宜」を図っている可能性が高い。

 その背景に新聞社が世論誘導の役割を担う権力構造に組み込まれている事情があるようだ。(現在進行している憂うべき状況については、順を追って報告する。)

【再掲載】

このところわたしが提唱している「押し紙」問題検証の方法論として、ABC部数の新しい解析方法がある。兵庫県全域をモデル地区として、ABC部数の変化を時系列に、しかも、新聞社(朝日、読売、毎日、産経、日経、神戸)ごとに確認してみると、ABC部数が地域単位でロックされている自治体が多数あることが判明した。地区単位で部数増減の管理が行われている疑惑が浮上した。

独禁法の新聞特殊指定に違反している疑惑がある。公正取引委員会は、少なくとも調査すべきだろう。

たとえば神戸市灘区における読売新聞のABC部数は、次のようになっている。

2017年4月 : 11,368
2017年10月: 11,368
2018年4月 : 11,368
2018年10月: 11,368
2019年4月 : 11,368

2年半にわたってABC部数は変化していない。新聞の購読者が特定の広域自治体で、2年半に渡って一部の変化もしないことなど、実際にはありえない。これは新聞社が販売店に搬入する新聞の「注文部数」を決めていることが原因である可能性(ノルマ部数、押し紙)がある。あるいは、販売店が自主的に購入する新聞部数を定数化している可能性(積み紙)もある。どちらの側に非があるにしても、これは広告主にとっては見過ごせない問題である。

本稿は、デジタル鹿砦社通信に連載した兵庫県全域をモデルケースとした新しい方法論の下で行ったABC検証の結果の報告である。以下、読者は以下に掲載した調査結果を確認する前に、次の【注意】を一読願いたい。表を理解する上で不可欠だ。

【注意】以下の表は、ABC部数を掲載している『新聞発行社レポート』の数字を、そのままエクセルに入力したものではない。数字を表示する順序を変えたのがこれらの表の大きな特徴だ。

『新聞発行社レポート』は、年に2回、4月と10月に区市郡別のABC部数を、新聞社別に公表する。しかし、これでは時系列の部数変化をひとつの表で確認することができない。確認するためには、『新聞発行社レポート』の号をまたいでデータを時系列に並べ変える必要がある。それにより特定の自治体における、新聞各社のABC部数がロックされているか否か、ロックされているとすれば、その具体的な部数や期間はどうなっているのかを確認できる。同一の新聞社におけるABC部数の変化を、地方自治体をベースにして長期に渡って追跡したのが以下の表の特徴だ。

■読売

■朝日

■毎日

■産経

■日経

■神戸

 

 

【出典-デジタル鹿砦社通信】

新聞衰退論を考える ── 公称部数の表示方向を変えるだけでビジネスモデルの裏面が見えてくる ABC部数検証・兵庫県〈1〉

新聞衰退論を考える ── 新聞社が新聞の「注文部数」を決めている可能性、新聞社のビジネスモデルの闇、ABC部数検証・兵庫県〈2〉 

新聞衰退論を考える ── 新聞人の知的能力に疑問、新聞社のビジネスモデルの闇、ABC部数検証・兵庫県〈3〉

2022年05月10日 (火曜日)

産経新聞、はじめて100万部を下回る、3月度のABC部数

2020年3月度のABC部数が明らかになった。それによると産経新聞の販売店を対象としたABC部数が、はじめて100万部を下回った。同社の販売店部数は、99万7197部となった。コンビニ部数などを含む総部数は、約103万である。この1年で約18万部を減らしている。減部数の割合も高い。

朝日新聞は約432万部、読売新聞は約687万部となった。

詳細は次の通りである。

朝日新聞:4,315,001(-440,805)
毎日新聞:1,950,836(-58,720)
読売新聞:6,873,837(-281,146)
日経新聞:1,731,974(-148,367)
産経新聞:1,038,717 (-177,871)

なお、ABC部数には残紙が含まれており、実配部数との間に乖離がある。新聞業界は「押し紙」問題を半世紀にわたり未解決のまま隠してきた。

「押し紙」は、新聞社経営の最大の汚点で、公権力がこの点に着目すれば、メディアコントロールの道具として悪用することができる。新聞ジャーナリズムの最大の客観的障害となっている。

2022年01月08日 (土曜日)

「残紙」世界一の都市、大阪府堺市、読売・朝日・毎日・産経のABC部数にみる異常、複数年に渡って1部の増減もなし、新聞の注文方法に独禁法違反の疑惑

ABC部数は、日本ABC協会が定期的に公表する出版物の公称部数である。広告営業や折込定数(販売店に搬入する折込広告の部数)を決める際に使われる。従ってABC部数は、読者数を反映したものでなければ意味がない。

たとえば〇〇新聞社のABC部数が50万部で、実際の読者数が30万部では、両者の間に20万部の差異があり、広告主を欺く温床になる。紙面広告の媒体価値をごまかしたり、折込定数の設定を攪乱する原因になる。

このところABC部数と読者数に著しい乖離がある疑惑が浮上している。その推測の根拠となるのが、ABC部数が複数年に渡って1部の増減もない自治体の存在である。つまりABC部数がロックされた状態になっているのだ。常識的に考えて、広域にわたる地区で、新聞の読者数が何年にも渡ってまったく同じという状態はありえない。まして現代は新聞離れの時代である。

筆者の調査では、東京都、大阪府、広島県、香川県、長崎県などでこの現象が確認できた。調査はまだ始まったばかりなので、今後、調査が進むとさらにロック現象が観察される自治体が増える可能性が高い。

◆◆

半年ごとに公表されるABCレポートは、区市郡別にそれぞれの新聞社の部数を表示している。しかし、時系列で各新聞社のABC部数がどう増減したかを知ることはできない。それを知るためには、ABCレポートのバックナンバーから数字を拾う必要がある。

そこで筆者は各ABCレポートの区市郡別の部数を、時系列でエクセルに入力していった。その結果、多くの区市郡でABC部数がロックされていることに気づいたのである。

ロックの背景は、新聞社が販売店に対して一定のノルマ部数を課しているか、販売店が何らかの理由で自主的に一定部数を購入しているかのどちらかの事情がある。筆者は、前者の可能性が高いと見ている。

たとえ後者であっても、新聞販売店の経営に真に必要な部数を超えた部数を注文する行為は、独禁法の新聞特殊指定で禁止されている。新聞を供給している新聞社がロック現象の異常に気づかないはずがない。公取委は取り締まる必要がある。

ちなみに日本ABC協会は、不正部数疑惑について、次のように述べている。

「ABCの新聞部数は、発行社が規定に則り、それぞれのルートを通じて販売した部数報告を公開するものです。この部数については、2年に1度新聞発行社を訪問し、間違いがないかを確認しています。さらに、その補足としてサンプルで選んだ販売店の調査も行っています。」

次に示すのが大阪府堺市における読売、朝日、毎日、産経のABC部数変遷である。

【読売】

 

【朝日】

【毎日】

【産経】

 

■参考記事:
読売新聞社と大阪府の包括連携協定、残紙問題が提示する読売グループの実態、読売に「道徳」を語る資格があるのか?

2021年07月12日 (月曜日)

産経新聞の第三者委員会が調査結果を公表、販売店の47%が景品表示法違反、景品類の上限額を上回る

新聞各紙が産経新聞による景品表示法違反の記事を掲載している。この事件は、、2019年に大阪府の消費者センターが産経新聞社に対して、新聞拡販の際に使用する景品類の額が、景品表示法が定める上限額を超えているとして、措置命令を発動したことに端を発している。

措置命令を受けたあと産経新聞は、弁護士など第三者による調査委員会を設置して、実態調査に着手した。その結果、「20年4月の大阪本社販売局内の会議で、当時の販売局長が『あまり大きく言えないが(商品提供を)積み重ねていかないと』と発言」(日経新聞)していたことが判明した。実際、「販売店172店のうち、約47%の店舗で提供商品の平均額が制限額を超えていた」(日経新聞)という。

新聞拡販の際に使用できる景品の価格には制限が設けられている。販売価格の8%である。購読契約が1ヶ月であれば、ひと月の購読価格の8%、2カ月であれば、2カ月の購読価格の8%である。ただし、6カ月分の購読価格の8%が限度額になっている。それを超えることはできない。

ほとんどの購読契約は1年から3年ぐらいの期間だから、最高限度額である6カ月分の購読料の8%に相当する景品が許容範囲になる。おおむね2000円程度である。

新聞業界では、これを「6・8ルール」と言う。ただし、これは新聞業界の自主ルールというだけではなく、独禁法・景品表示法などでも決められている。

◆◆
しかし、「6・8ルール」を守っている販売店はほとんどないのが実態だ。特に、1990年代と2000年代には、「6・8ルール」を無視した新聞拡販が横行していた。その背景に、新聞発行本社の部数第一主義があった。

が、既に述べたように、限度を超えた景品の提供は、独禁法や景品表示法で禁止されている。新聞業界の自主ルールでも禁止している。

2019年に大阪府の消費者センターから措置命令を受けた販売店は、産経新聞の松原南専売所と花園専売所の2店である。これらの措置命令の引き金となったのは、花園専売所を原告とするある裁判だ。

◆◆
『サンケイスポーツ』を購読していたAさんが、ある時期から購読料を未納にした。そのひとつの原因は、Aさんが仕事中に交通事故で重体になり、新聞購読の中止手続きをしないまま、郷里へ戻ったことである。しかし、花園専売所は新聞の投函を続け、購読契約期間中の購読料の支払いを求めた。そして徴収できる可能性がないことが分かると、裁判を起こしたのだ。

この裁判で、Aさんの代理人を務めたのが、「押し紙」問題で有名な江上武幸弁護士である。江上弁護士は、Aさんが新聞購読契約を結んだ際に提供された景品の限度額が、「6・8ルール」に抵触している点を追及して、契約の無効を主張した。第1審議では、花園専売所が勝ったが、第2審で花園専売所が江上弁護士の追及に答弁できなくなった。

しかし、産経側は、景品表示法違反の判例ができることを警戒したのか、訴訟を取り下げた。そして請求も放棄した。

ところがこの裁判の内容を大阪府の消費者センターが把握していたらしく、裁判が終了
した後に措置命令を発動したのだ。

 

2021年05月26日 (水曜日)

産経新聞「押し紙」裁判が和解、大阪地裁、産経が和解金300万円の支払い、独禁法違反は認めず、

産経新聞の販売店を経営していた男性が、廃業後の2019年に大阪地裁で起こした「押し紙」裁判が、今年の1月に和解解決していたことが分かった。和解内容は、産経新聞大阪本社が、元経営者に300万円の和解金を支払うことなどである。

しかし、元経営者が主張していた産経新聞社に対する独禁法違反については、認定しなかった。(詳細は文末の和解調書)

この裁判は、元経営者が産経新聞に対して約2600万円の支払いを請求したものである。ただし、請求項目の中に、「押し紙」による損害のほかに、不正なカード料(※欄外注)の返済金が含まれていた。和解調書の中で、裁判所は後者については、一部の請求を正当と判断した。

カード料:「カード」とは新聞の購読契約書を意味する。しかし、購読契約が成立しても、ただちに販売店が新聞配達をスタートするとは限らない。3カ月後にスタートしたり、1年後にスタートする契約内容になっている場合もある。

 契約の締結から、配達開始までのブランクがあり、その間に店主交代があった場合、新任の店主は、前任店主からカードを買い取る仕組みになっている。ところがその「カード」が偽造であったり、内容に不備があるものがたびたびある。こうしたカードを、総称してテンプラ・カードと呼んでいる。

元経営者は、「押し紙」による損害と、テンプラ・カードによる損害の賠償を求めていたのである。

■和解調書

2021年04月17日 (土曜日)

【シリーズ産経の残紙1】「反共メディア」の裏面、産経新聞の内部資料を入手、大阪府の広域における「押し紙」の実態を暴露、残紙率は28%

(この記事は、2018年10月26日に掲載した記事の再掲載記事である。)

これだけ大量の残紙があるにもかかわらず、公権力はなぜメスを入れないのか?

産経新聞の「押し紙」を示す新しい内部資料を入手した。「平成28年7月度 カード計画表」と題する資料で、その中に大阪府の寝屋川市、門真市、箕面市、四条畷市など(北摂第3地区)を地盤とする21店における「定数」(搬入部数)と、「実配数」が明記されている。

店名は匿名にした。「定数」(搬入部数)の総計は、4万8899部。これに対して「実配数」は、3万5435部である。差異の1万3464部が残紙である。予備紙として社会通念上認められている若干の部数を除いて、残りは「押し紙」ということになる。残紙率にすると28%である。

理由が不明だが、新聞は搬入されているが、配達していない店もある。赤のマーカーで示した店だ。今後、産経に理由を問い合わせることにする。

この内部資料が外部にもれたのは、販売店を訪問した産経の担当員が店にこの資料を置き忘れたことである。

次に示すのが資料の実物である。

 

2021年03月04日 (木曜日)

最高裁事務総局に対して3件の情報公開請求、産経新聞「押し紙」事件の野村武範裁判長の職務に関する疑問、東京高裁在任が40日の謎

わたしは1月19日、最高裁事務総局(中村慎事務総長)に対して3件の情報公開請求を行った。その背景を説明する前に、まず実際の請求内容を紹介しておこう。

1、野村武範判事が東京高裁に在職中(令和2年4月1日から令和2年5月10日)に、担当した事件の原告、被告、事件の名称、事件番号が特定できる全文書

2、野村武範判事が令和2年5月11日に東京地裁に着任した後に担当した事件の原告、被告、事件の名称、事件番号が特定できる全文書

3、野村武範判事の人事異動に関連する全文書

■裏付け資料

◆◆
上記「1」と「2」の記述からも判明するが、野村裁判官は東京地裁に2020年の4月1日から5月10日の40日間在職した後、東京地裁へ異動している。これだけ短期間で異動していること自体が尋常ではないうえに、東京地裁へ着任した後、産経新聞社を被告とする「押し紙」裁判の裁判長になり、敗訴が濃厚になっていた産経新聞社を完全勝訴させる判決を下した。

この判決をめぐって、「報告事件」ではないかとの疑惑が広がっている。疑惑の根拠は、前任の裁判長が、産経新聞社に対して2回にわたり和解金の支払いを提案していた事実である。当然、判決になれば、産経新聞社が敗訴する流れだった。ところが裁判が結審する直前になって裁判長の交代があり、裁判の流れが急変したのである。

当然、司法ジャーナリズムが検証しなければならない問題である。しかし、司法記者は何もしない。役割を放棄している。そこでわたしが情報公開に踏み切ったのである。

◆◆
情報公開請求に対して、2月24日付けで最高裁事務総局は、わたし宛てに3通の文書を送付した。文面はいずれも、請求資料の開示までに、「本日から2カ月程度かかる見込みです」というものである。

開示請求の「3」については、確かに時間を要する案件かも知れない。しかし、野村裁判官が東京高裁に在職した40日のあいだに、具体的にどのような職務を遂行したのかを開示するのに、2か月の時間を要するだろうか。裁判官になった後の全職務を公開しろと言っているわけではない。

民間企業であれば、半日もあればできる作業である。

◆◆
判決文をどう評価するのか、あるいは判決の結果を「報告事件」に指定された結果と判断するのか否かは、読み手によって異なる。そこでなぜわたしが野村裁判官の下した判決がおかしいと感じたかを示しておこう。次の2件の記事を参考にしてほしい。

(2020年12月14日付け)野村武範裁判長が執筆した判決文にみる論理の破綻、「押し紙」は認定するが賠償は認めない、産経新聞「押し紙」裁判の解説、判決全文を公開

(2020年1月18日付け)産経「押し紙」裁判にみる野村武範裁判長の不自然な履歴と人事異動、東京高裁にわずか40日
新聞社がらみの裁判では、不可解な判決が下されることがよくある。その結果、新聞社に関連して事件に関して言えば、半世紀にわたって問題になっている「押し紙」にも、いまだにメスが入っていない。これ自体が不自然極まりないことである。

裁判官として人を裁く特権はただならぬものがある。それを軽視した裁判官はジャーナリズムの検証を受ける必要があるのだ。

 ※報告事件:
最高裁事務総局の指示によって、裁判の担当書記官が進捗状況を最高裁に報告する事件。報告により最高裁事務総局が、裁判官の人事異動を行うなどして、判決の方向性をコントロールする。日本の司法の恥部である。生田暉雄弁護士(大阪高裁元判事)らが、問題視している。

【参考記事】裁判官の不可解な人事異動-木村元昭・田中哲朗の両氏、対読売の真村裁判・平山裁判・黒薮裁判で

【参考記事】田中哲郎裁判官の軌跡を検証する、電磁波裁判と読売裁判を担当して九州各地を転々、最高裁事務総局に責任はないのか?

2021年02月26日 (金曜日)

2021年1月度のABC部数、政府よりの右派2紙・読売と産経は前月差でABC部数増加、

2021年1月度のABC部数が明らかになった。それによると朝日は、前年同月差でマイナス43万部、読売新聞はマイナス58万部、毎日新聞はマイナス28万部と大幅な部数減となった。

しかし、前月差でみると右派で政府よりの2紙、読売と産経は、12月から1月にかけてABC部数を増やしている。新聞離れの時代にもかかわらず好調だ。新聞販売店向けの部数の場合、読売は約1万部、産経は約1500部ほどABC部数を増やしている。

1月部数の詳細は次の通りである。

朝日:4,818,332(−431,432)
毎日:2,025,962(−277,821)
読売:7,310,734(−576.252)
日経:1,946,825(−281,066)
産経:1,223,328(−125,236)

◆読売、「押し紙をしたことは1回もございません」

なお、このところ「押し紙」問題が大問題になっているが、読売は自社の販売店(YC)には1部の「押し紙」も存在しないと公言してきた。

参考までに、宮本友丘専務(当時)が、「押し紙」裁判(読売VS黒薮・新潮社)の法廷で行った証言(2010年11月16日、東京地裁)を紹介しておこう。代理人である喜田村洋一・自由人権協会代表理事の質問に答えるかたちで、次のように証言した。

※自由人権協会:日本を代表する人権擁護団体のひとつ

喜田村弁護士:この裁判では、読売新聞の押し紙が全国的に見ると30パーセントから40パーセントあるんだという週刊新潮の記事が問題になっております。この点は陳述書でも書いていただいていることですけれども、大切なことですのでもう1度お尋ねいたしますけれども、読売新聞社にとって不要な新聞を販売店に強要するという意味での押し紙政策があるのかどうか、この点について裁判所にご説明ください。

宮本:読売新聞の販売局、あと読売新聞社として押し紙をしたことは1回もございません。

喜田村弁護士:それは、昔からそういう状況が続いているというふうにお聞きしてよろしいですか。

宮本:はい。

喜田村弁護士:新聞の注文の仕方について改めて確認をさせていただきますけれども、販売店が自分のお店に何部配達してほしいのか、搬入してほしいのかということを読売新聞社に注文するわけですね。

宮本:はい。

産経「押し紙」裁判にみる野村武範裁判長の不自然な履歴と人事異動、東京高裁にわずか40日

昨年12月に判決が下された産経「押し紙」裁判(東京地裁)で、原告の販売店を敗訴させた野村武範裁判長の履歴が不自然だ。次のようになっている。

R 2. 5.11 東京地裁判事・東京簡裁判事
R 2. 4. 1 東京高裁判事・東京簡裁判事
H29. 4. 1 名古屋地裁判事・名古屋簡裁判事

■出典

名古屋地裁から東京高裁へ異動したのは、2020年4月1日。そのわずか40日後に、野村判事は東京地裁は異動して、産経「押し紙」裁判の裁判長に就任した。

野村判事は、東京高裁での40日の間に具体的にどのような仕事をして、何を理由に最高事務総局により異動させられたのか、今後の解明が必要だ。不自然な人事異動の事実を前に、「報告事件」の疑惑が浮上している。

少なくとも司法ジャーナリズムの観点からすれば、検証が必要だ。判決の結果を垂れ流すだけが、司法ジャーナリズムではないだろう。

ちなみに新聞社が被告となった事件では、過去にも不自然な事例がある。携帯電話の基地局撤去をめぐる事件でも、類似したケースがある。前者は国家によるメディアコントロールの問題と、後者も国家による電波政策の問題とかかわりを持っている。

◆◆
「報告事件」というのは、最高裁事務総局が判決の方向性を決める事件のことである。その具体的な手口は、裁判官の人事異動である。たとえばある事件で被告企業A社が敗訴する公算が強くなったにもかかわらず、最高裁事務総局がA社を勝訴させたい意向を持っている場合、事件の担当裁判官を交代させることで、判決の方向性を変えると言われている。国策がからんだ裁判に多いようだ。

事件を担当する書記官が、最高裁事務総局に審理の内容を「報告」することから、「報告事件」と呼ばれている。大阪高裁の元判事・生田輝男弁護士らが「報告事件」を問題にしてきた。このような最高裁事務総局による「操作」が事実であれば、司法界の一大汚点である。裁判そのものがペテンということになる。司法ジャーナリズムは、この点を検証しなければならない。

◆◆
産経「押し紙」裁判は、東京地裁が舞台になった。事件の担当裁判長は、複数回にわたって産経に対し、解決金を支払って和解するように提言した。そのための期日も設けた。これは判決になった場合は、産経が敗訴する可能性を示唆している。原告を敗訴させる方針であれば、わざわざ和解を提案しなくても、判決で請求を棄却させればそれですむことだからだ。

ところがコロナウィルスの感染拡大で、東京地裁が半ば閉鎖されている時期に、この事件の裁判長が交代になった。新裁判長は、野村武範判事だった。野村判事は裁判が再開されると、早々に裁判を結審して原告を完全敗訴させた。

◆◆
以下、再検証のための基礎資料を紹介しておこう。

■判決文(全文)

 

【参考記事】野村武範裁判長が執筆した判決文にみる論理の破綻、「押し紙」は認定するが賠償は認めない、産経新聞「押し紙」裁判の解説、判決全文を公開

2021年01月15日 (金曜日)

産経「押し紙」裁判の判決を批判、週刊金曜日、産経が裁判所への上申書でメディア黒書を批判

本日発売の『週刊金曜日』が「『押し紙』を認めて責任認めず?」(金曜アンテナ)と題する記事を掲載している。黒薮の執筆である。この記事は、昨年12月1日に判決が言い渡された産経新聞「押し紙」裁判で、販売店を敗訴させた判決(野村武範裁判長)を批判した内容だ。

記事の中で、筆者は裁判の結審に先立って、産経の奥村毅弁護士と小泉裕樹弁護士が、期日の早期再設定(コロナウィルス感染拡大の影響で、一旦、取り消されていた)を求める上申書を裁判所へ提出し、その中で「メディア黒書」と筆者を批判していたことを報告している。紙面のスペースに制限あり、批判箇所の全体を引用できなかったので紹介しておこう。

以下、批判部分の記述である。

しかし、今般、本件訴訟につき悪質な記事がインターネットで配信されていることが発覚しました。

 配信しているのは、フリージャーナリストと称する黒薮哲哉氏で、「メディア黒書」と題するサイトの本年7月22日付けの記事(http://www.kokusyo.jp/oshigami/15389/)に本件訴訟に関する記事が掲載されております。記事には、本件訴訟で提出された資料がそのまま掲載されているうえ、訴訟経過についても原告有利に事実が歪曲されています、原告が訴訟を有利に進めるために黒薮氏と連携し、記事を配信させていることが明らかです。

 被告としても、当面は静観する予定でおりましたが、悪質な報道が繰り返され、エキサイトした場合は放置できないと考えております。

 裁判所におかれましては、以上の事情を斟酌いただいたうえ、できるだけ早期に期日を指定していただきますよう、上申いたします。

「原告が訴訟を有利に進めるために黒薮氏と連携し、記事を配信させている」と述べている。しかし、このような事実はなく、原告を取材し広義の「押し紙」問題を公にするように促したのは、筆者の側である。「押し紙」のような犯罪的行為は、容赦なく告発するように説得したのである。

もちろん産経側から取材は受けていない。

また、「悪質な報道が繰り返さ」たと述べているが、「悪質な報道」が何を意味しているのか具体的に示されていない。

昔、「裁判となればわが方のもの」と豪語した新聞人がいたが、恥ずかしい発言である。新聞人であれば、「調査報道となればわがほうのもの」でなくてはならない。自社のメディアで「押し紙」報道を批判すればいいだけの単純な話ではないか。

 

産経新聞の内部資料を入手、大阪府の広域における「押し紙」の実態を暴露、残紙率は28%

2020年12月14日 (月曜日)

野村武範裁判長が執筆した判決文にみる論理の破綻、「押し紙」は認定するが賠償は認めない、産経新聞「押し紙」裁判の解説、判決全文を公開

筆者は、産経新聞「押し紙」裁判の判決(東京地裁、野村武範裁判長)を入手した。本稿では、判決内容を紹介しよう。また、判決文の全文を公開する。

既報したように、この裁判で東京地裁の野村裁判長は、「押し紙」による損害賠償を求めた原告(元販売店主)の請求を棄却した。筆者がこの判決を読んだ限りでは、野村裁判長が原告を敗訴させることを最初から決めていたことを伺わせる内容になっている。判決文の論理に極端な破綻がみうけられるからだ。

この倫理の破綻を捉えるためには、あらかじめ文書類における達意とは何かを理解しておかなければならない。それは単純な原理だ。

◆◆
改めていうまでもなく、判決文で最も重要なのは、誤解なく意味を伝達することである。判決全体を構成するセンテンスのひとつひとつに文法上の誤りや論理の論理の破綻がないことは言うまでもなく、同時に判決全体を通じて論理の破綻がないことも要求される。

この点を前提として判決を解説してみよう。この判決は、ある一時期においては産経による「押し紙」行為があったが、それによって生じた損害を賠償する必要はないという矛盾した論理構成になっている。

①文脈にみる論理の破綻

「押し紙」行為は独禁法違反なので、加害者は被害者に対する賠償責任を負わなければならない。ところがこの判決文ではそうはなっていない。たとえば、次の一文である。読者は、どこに論理の破綻(ごまかし)があるかに注意をはらいながら読んでほしい。

平成28年1月から5月までの期間に関しては、被告(産経)による減紙要求の拒絶がいわゆる押し紙に当たり得るとしても、原告が実際に被った負担は極めて限定的であり、原被告間で営業所の引継ぎに関する協議をする中で原告が顧客名簿の開示に応じないなどの対応をしていたとの交渉経緯があったことに照らすと、この間の本件各契約を無効とするまでの違法性があるとはいえない。

まず、この箇所で野村裁判長は、産経新聞が「押し紙」により元店主に損害を与えた事実を認定している。ところが、それを免責する理由として、「原被告間で営業所の引継ぎに関する協議をする中で、原告が顧客名簿の開示に応じないなどの対応をしていたとの交渉経緯があったこと」と述べて、賠償責任を帳消にしているのだ。

しかし、産経新聞が「押し紙」による損害を与えた事実(独禁法違反)と、それを免責する理由との間には何の整合性もない。整合性のない2つの事実を、野村裁判長は無理矢理に結びつけているのである。その結果、論理が破綻して、冷静に読めば、訳が分からない記述になっているのだ。

判決文を精読しない読者は、この箇所に注意を払うことなく、なんとなく納得してしまう危険性がある。ひとつひとつの言葉を正確に読み解いてみると、論理が破綻していることが判明する。

②判決文全体の論理の破綻
野村裁判長は、原告の元店主が訴えていた「押し紙」の被害を3期に分類して検証している。

・第1期 開業時(平成24年の開業時)
・第2期 開業から(~平成25年10月)
・第3期 廃業前(平成28年1月~7月)

野村裁判長は、全時期を通じて、原告の販売店に残紙があったことは認めている。残紙の量は、次の通りである。

■原告販売店における残紙の推移

しかし、第1期と第2期については、原告の元店主が、残紙を断ったことを示す証拠がないことを理由に、産経の賠償責任を免責した。伝統的な「押し紙」の判例に沿った判断を下したのである。

これに対して第3期については、明確に「押し紙」行為を認定している。たとえば次の記述である。

 原告の代理人弁護士は、平成28年1月15日付け書面において、被告の代理人弁護士に対し、被告が取引開始当初の960部から600部程度までの減紙に応じた際及び155部の減紙の申入れに応じた際には、このような開示(註:読者名簿の開示など)や説明は求められていないことから、前期イ(註:読者名簿の開示など)のような条件を付することなく減紙要求に応じることを求めた。しかし、被告(註:産経新聞)は減紙に応じなかった。(乙7号)

野村裁判長は、「押し紙」行為そのものは認定したのである。ところが既に述べたように、「原被告間で営業所の引継ぎに関する協議をする中で、原告が顧客名簿の開示に応じないなどの対応をしていたとの交渉経緯があったこと」を理由に、産経新聞の賠償責任を免責したのである。繰り返しになるが、「押し紙」行為の成立と、読者名簿の非開示など、元店主が説明に応じなかったことは論理上では何の関係もない。

このように判決文は、一方では「押し紙」を認定して、その一方では、いろいろと理由を設けて賠償を認めない方向性を定めるという矛盾した論理構成になっているのである。

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なお、以下は筆者の見解になるが、この裁判においては、「押し紙」の定義が間違っている。新聞社が販売店に対して買い取りを強制した部数が「押し紙」という前提になっているが、これは正確ではない。

「実配部数(実際に配達する部数)+予備紙」を超える部数は、理由のいかんを問わずすべて「押し紙」というのが、独禁法の新聞特殊指定に忠実な定義なのである。

元々、新聞業界には、搬入部数の2%を予備紙として認め、それを超える残紙は「押し紙」とする業界内のルールがあった。ところが新聞業界は、この「2%ルール」を廃止した。その結果、残紙はすべて予備紙という詭弁がまかり通ってきたのである。たとえ残紙があっても、それはすべて予備紙であって、「押し紙」ではないということになっていたのである。この解釈が、産経の「押し紙」裁判でも採用されている。

しかし、佐賀新聞の押し紙」裁判の判決(2020年)で佐賀地裁は、販売店経営に必要としない残紙は、予備紙とは言えないとする判断を下した。この判例の観点からすれば、産経「押し紙」裁判で確認された残紙は、すべて「押し紙」なのである。

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以上の点を確認した上で、野村裁判長が認定した第1期と第2期の残紙は、本当に予備紙だったのかを再検討してみる必要がある。

言うまでなく、予備紙とは、配達する新聞が破損した場合に備えて、販売店があらかじめ購入しておく予備部数である。しかし、原告の店主の店舗からは、古紙回収業者により大量の残紙が回収されていたわけだから、予備紙としての実態はなかったことになる。と、すればこれらの残紙は、「実配部数(実際に配達する部数)+予備紙」を超えた残紙、つまり「押し紙」なのである。

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なお、野村裁判長は、「折り込み詐欺」について、折込広告の取引に産経新聞は関与していないから、公序良俗には違反しないと判断している。筆者は、残紙による損害を折込広告で相殺するビジネスモデルそのものが公序良俗に違反すると考える。そのビジネスモデルを構築したのは、新聞社にほかならない。

このような取引の仕組みが公序良俗に違反するかどうかを「イエス」か、「ノウ」で問われれば、99%の人が、「イエス」と答えるだろう。

社会通念とはそのようなものなのである。

■判決文(全文)

 

 

2020年12月01日 (火曜日)

【臨時ニュース】東京地裁が元店主の請求を棄却、産経新聞「押し紙」裁判

【臨時ニュース】産経新聞「押し紙」で東京地裁は、12月1日、原告の請求を棄却する判決を下した。詳細については、後日報告する。

筆者個人の感想を言えば大きな敗因のひとつは、訴訟をジャーナリズムの土俵に乗せ切れなかったことである。メディア企業を被告とする権力構造の崩壊につながりかねない裁判では、報道により世論を動かさなくては勝ち目がないことがはっきりした。今回、それを痛感した。

原告の主張に一貫した論理と正義があるかどうか以前の問題として、筆者が楽観視していたために報道が消極的になった。今後、「押し紙」報道を強化していきたい。

2020年11月30日 (月曜日)

明日、12月1日に産経新聞「押し紙」裁判の判決、2つの注目点

東京地裁は、明日(12月1日)に、産経新聞を被告とする「押し紙」裁判の判決を言い渡す。判決の日時、場所は次の通りである。

日時:12月1日 13:10分

場所:東京地裁806号法廷

メディア黒書は、判決結果を夕方に速報する。

この裁判には次の2つの注目的がある。

【1】中央紙に対して初めて「押し紙」を認定する判決が下されるかどうか。

※)販売店の地位保全裁判の中では、すでに2007年に福岡高裁が、読売新聞の「押し紙」を認定した例がある。

【2】販売店が敗訴した場合、判決に政治的配慮がなされた可能性がないかどうか。

この裁判所では、裁判所が産経に対して繰り返し和解を提案した。解決金の額も提示していた。これは裁判所が産経を敗訴させる判決を下す方針を持っていることを意味する。裁判所が、産経ではなく、原告を敗訴させる方針であれば、産経に対して和解金の支払いを提案するはずがないからだ。

ところがこの裁判では、結審の直前になって、最高裁事務総局が3人の裁判官のうち2人を交代させた。結審の直前に、あるいは結審の後に裁判官が交代させられた場合、新しい裁判官が判決の方向性をがらりと変えることがままある。

外圧に屈して裁判所が政治判断を行う場合に、最高裁事務総局はこのような人事異動を行う。滋賀医科大が癌患者らをモルモットにしようとした事件の判決が、その典型である可能性が高い。この裁判の判決には、審理のプロセスと判決内容に、整合性のない箇所が数多く見受けられる。

裁判というものは、一見すると公平にみえるが、それは建前であって、裁判所は基本的には国策に反しない方向性の判断を下す。これは資本主義の国の裁判所であろうが、社会主義の国の裁判所であろうが変わりがない。

裁判所も、メディアと同様に権力構造の一部に組み込まれているのである。