「残紙」世界一の都市、大阪府堺市、読売・朝日・毎日・産経のABC部数にみる異常、複数年に渡って1部の増減もなし、新聞の注文方法に独禁法違反の疑惑
ABC部数は、日本ABC協会が定期的に公表する出版物の公称部数である。広告営業や折込定数(販売店に搬入する折込広告の部数)を決める際に使われる。従ってABC部数は、読者数を反映したものでなければ意味がない。
たとえば〇〇新聞社のABC部数が50万部で、実際の読者数が30万部では、両者の間に20万部の差異があり、広告主を欺く温床になる。紙面広告の媒体価値をごまかしたり、折込定数の設定を攪乱する原因になる。
このところABC部数と読者数に著しい乖離がある疑惑が浮上している。その推測の根拠となるのが、ABC部数が複数年に渡って1部の増減もない自治体の存在である。つまりABC部数がロックされた状態になっているのだ。常識的に考えて、広域にわたる地区で、新聞の読者数が何年にも渡ってまったく同じという状態はありえない。まして現代は新聞離れの時代である。
筆者の調査では、東京都、大阪府、広島県、香川県、長崎県などでこの現象が確認できた。調査はまだ始まったばかりなので、今後、調査が進むとさらにロック現象が観察される自治体が増える可能性が高い。
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半年ごとに公表されるABCレポートは、区市郡別にそれぞれの新聞社の部数を表示している。しかし、時系列で各新聞社のABC部数がどう増減したかを知ることはできない。それを知るためには、ABCレポートのバックナンバーから数字を拾う必要がある。
そこで筆者は各ABCレポートの区市郡別の部数を、時系列でエクセルに入力していった。その結果、多くの区市郡でABC部数がロックされていることに気づいたのである。
ロックの背景は、新聞社が販売店に対して一定のノルマ部数を課しているか、販売店が何らかの理由で自主的に一定部数を購入しているかのどちらかの事情がある。筆者は、前者の可能性が高いと見ている。
たとえ後者であっても、新聞販売店の経営に真に必要な部数を超えた部数を注文する行為は、独禁法の新聞特殊指定で禁止されている。新聞を供給している新聞社がロック現象の異常に気づかないはずがない。公取委は取り締まる必要がある。
ちなみに日本ABC協会は、不正部数疑惑について、次のように述べている。
「ABCの新聞部数は、発行社が規定に則り、それぞれのルートを通じて販売した部数報告を公開するものです。この部数については、2年に1度新聞発行社を訪問し、間違いがないかを確認しています。さらに、その補足としてサンプルで選んだ販売店の調査も行っています。」
次に示すのが大阪府堺市における読売、朝日、毎日、産経のABC部数変遷である。
【読売】
【朝日】
【毎日】
【産経】
■参考記事:
読売新聞社と大阪府の包括連携協定、残紙問題が提示する読売グループの実態、読売に「道徳」を語る資格があるのか?