1. 産経新聞の第三者委員会が調査結果を公表、販売店の47%が景品表示法違反、景品類の上限額を上回る

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2021年07月12日 (月曜日)

産経新聞の第三者委員会が調査結果を公表、販売店の47%が景品表示法違反、景品類の上限額を上回る

新聞各紙が産経新聞による景品表示法違反の記事を掲載している。この事件は、、2019年に大阪府の消費者センターが産経新聞社に対して、新聞拡販の際に使用する景品類の額が、景品表示法が定める上限額を超えているとして、措置命令を発動したことに端を発している。

措置命令を受けたあと産経新聞は、弁護士など第三者による調査委員会を設置して、実態調査に着手した。その結果、「20年4月の大阪本社販売局内の会議で、当時の販売局長が『あまり大きく言えないが(商品提供を)積み重ねていかないと』と発言」(日経新聞)していたことが判明した。実際、「販売店172店のうち、約47%の店舗で提供商品の平均額が制限額を超えていた」(日経新聞)という。

新聞拡販の際に使用できる景品の価格には制限が設けられている。販売価格の8%である。購読契約が1ヶ月であれば、ひと月の購読価格の8%、2カ月であれば、2カ月の購読価格の8%である。ただし、6カ月分の購読価格の8%が限度額になっている。それを超えることはできない。

ほとんどの購読契約は1年から3年ぐらいの期間だから、最高限度額である6カ月分の購読料の8%に相当する景品が許容範囲になる。おおむね2000円程度である。

新聞業界では、これを「6・8ルール」と言う。ただし、これは新聞業界の自主ルールというだけではなく、独禁法・景品表示法などでも決められている。

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しかし、「6・8ルール」を守っている販売店はほとんどないのが実態だ。特に、1990年代と2000年代には、「6・8ルール」を無視した新聞拡販が横行していた。その背景に、新聞発行本社の部数第一主義があった。

が、既に述べたように、限度を超えた景品の提供は、独禁法や景品表示法で禁止されている。新聞業界の自主ルールでも禁止している。

2019年に大阪府の消費者センターから措置命令を受けた販売店は、産経新聞の松原南専売所と花園専売所の2店である。これらの措置命令の引き金となったのは、花園専売所を原告とするある裁判だ。

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『サンケイスポーツ』を購読していたAさんが、ある時期から購読料を未納にした。そのひとつの原因は、Aさんが仕事中に交通事故で重体になり、新聞購読の中止手続きをしないまま、郷里へ戻ったことである。しかし、花園専売所は新聞の投函を続け、購読契約期間中の購読料の支払いを求めた。そして徴収できる可能性がないことが分かると、裁判を起こしたのだ。

この裁判で、Aさんの代理人を務めたのが、「押し紙」問題で有名な江上武幸弁護士である。江上弁護士は、Aさんが新聞購読契約を結んだ際に提供された景品の限度額が、「6・8ルール」に抵触している点を追及して、契約の無効を主張した。第1審議では、花園専売所が勝ったが、第2審で花園専売所が江上弁護士の追及に答弁できなくなった。

しかし、産経側は、景品表示法違反の判例ができることを警戒したのか、訴訟を取り下げた。そして請求も放棄した。

ところがこの裁判の内容を大阪府の消費者センターが把握していたらしく、裁判が終了
した後に措置命令を発動したのだ。