1. 報じられない新聞に対する軽減税率は「当確」、背景に新聞業界と政界の政治献金を通じた癒着

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2015年12月14日 (月曜日)

報じられない新聞に対する軽減税率は「当確」、背景に新聞業界と政界の政治献金を通じた癒着

自民党と公明党が生鮮食品と加工食品に対する軽減税率の適応で合意したとメディアが報じている。一連の報道に接していると、軽減税率の適用が検討されてきたのは食料品だけで、他には対象品目がないかのような印象を受ける。

しかし、実は新聞と書籍も検討対象になってきた。その表向きの理由は、新聞関係者らによるこれまでの言動からすると、新聞と書籍は文化と知的水準の維持にかかわる問題であるからという主張である。

ところが主要メディアは、新聞・書籍への軽減税率適用について、自民党と公明党の間でどのような話し合いが行われたのかは、ほとんど報じていない。報じたのは主にウエブサイトである。

ウエブサイト・LITERAによると「昨日(12月10日)、TBSと日本テレビがようやく“新聞も軽減税率の範囲内になる”と報じたが、新聞は一切報じなかった」という。毎日新聞も「政府関係者が10日夜、『新聞、書籍への適用を考えている』と東京都内で記者団に語った」という。

このうち新聞に関しては、早々と軽減税率の適用が決まっていたとする見方が有力だ。食品よりもはるかにはやく決着していたと見て間違いない。

◇国会議員150人に政治献金

新聞業界は、数年前からこの問題に取り組んできた。新聞がジャーナリズムである点もかえりみずに繰り返し政界工作を行ってきた。

その中心的役割を担ってきたのが、日本新聞協会と日販協(日本新聞販売協会)である。特に新聞販売店の同業組合である日販協は、政治献金まで支出して政治家との接近を図っている。

たとえば、2014年度の政治資金収支報告書によると、日販協の政治団体である日販協政治連盟は、述べ人数で約150人の自民党を中心とする議員に対して政治献金を行った。次の記事を参照にしてほしい。

新聞業界から政界に927万円の政治献金、背景に新聞に対する軽減税率の問題、ジャーナリズムよりも特権の獲得を優先する日本の新聞人

◇2014年の衆院選では139人を推薦

また、2014年度の衆院選では、日販協が自民党を中心に139人の候補者を推薦していた事実も明らかになっている。次の記事には、日販協から推薦を受け当選した議員リストも掲 載している。

■昨年の衆院選で新聞関係者が自民を中心に139人の候補者を推薦していた、新聞に対する軽減税率適用と引き替え

さらに日販協は、地方議会を巻き込んだ大掛かりな政界工作を進めてきた。地方議会に「新聞への消費税の軽減税率適用を求める意見書」を採択させ、それを安倍首相宛てに送付させてきたのだ。

地方議員との交渉のために準備した意見書の例文には、はっきりと「内閣総理大臣 安倍晋三様」と記載されている。2014年3月の時点で、意見書を採択した地方議会は全国で289議会にのぼった。

■新聞業界が新聞に対する軽減税率求め大規模な政界工作、289の地方議会から安倍首相宛の意見書

◇新聞社経営の汚点とメディア・コントロール

こうした政界工作がジャーナリズムの独立性を崩壊させてしまうことは言うまでもない。軽減税率という新聞の未来を左右する特権を与えるか否かの決定権は政治家の手中にあるわけだから、新聞が政府に批判的な報道を展開すれば、政府は特権を与えない方向へ動くことはいうまでもない。

安倍内閣は、新聞社の経営上の弱点を握ることで、新聞ジャーナリズムを自在にコントロールできる体制を構築している。特定秘密保護法や安保関連法案の審議と並行して、同じ時期に軽減税率の問題を持ち出してきたのも、メディア・コントロールの手法を知り尽くしているからにほかならない。

ちなみに新聞業界の経営上の弱点とは、なにも軽減税率問題だけではない。それ以前に「押し紙」という大問題がある。この「押し紙」問題に公正取引委員会や警察権力がメスを入れる構えをみせれば、新聞はたちまち完全に政府広報と化するだろう。さらに新聞の再版制度という既得権を逆手に取れば、政府はこれもまたメディア・コントロールの道具にできる。

新聞社は紙面内容を批判されても、何の痛痒も感じない。見解の相違と言い訳すればそれで一応は通用するからだ。しかし、経営上の弱点に付け込まれると身動きできなくなってしまう。その点、安倍内閣は新聞社の実態をよく把握している。