1. 新聞人の要求は消費税率5%への軽減、「押し紙」にも消費税が、新聞に対する軽減税率問題を考える③

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2016年01月15日 (金曜日)

新聞人の要求は消費税率5%への軽減、「押し紙」にも消費税が、新聞に対する軽減税率問題を考える③

新聞に対する軽減税率の適用を求めて、新聞関係者が政治家に対して税率5%を要求してきたことをご存じだろうか。8%の据え置きではなく、5%へ引き戻しである。それが彼らが意味する「軽減」である。

このような方針・戦略を取っていることは、業界内では周知となっているが、新聞関係者のロビー活動そのものが故意に報じられなかったわけだから、一般の人々はその中身を知りようがなかった。

◇日販協の談話

この件に関してわたしは、昨年末、MyNewsJapanにタイトルが『新聞業界は軽減税率「5%への引き下げ」求め政界工作していた!公明党は支持母体が23億円も軽減、国民負担は総額360億円に』という記事を書いた。その後、新しい資料(業界紙の記事)を入手したので、補足しておこう。

軽減税率の適用を勝ち取ったのを受けて、新聞協会の白石興二郎会長(読売)と、日販協(日本新聞販売協会)の河邑康緒会長が発表した談話が業界紙『新聞情報』(2015年12月23日)に掲載された。

このうち日販協の河邑会長は次のように述べている。

  当初から求めてきた「5%確保」には至りませんでしたが、対象品目に新聞が加えられたのは、なによりも読者・国民のみなさま、これを代表しての国会議員各位の、英知にみちたご理解と、厚いご支援のたまものであり、わけても「100万人署名」運動の名のもとに協力を交わされた発行本社をふくむ新聞関係者、日販協各組織のみなさまのご尽力の成果であり、そのすべての方々へ、心から感謝の思いを捧げたいと存じます。

■新聞情報の記事

◇300兆円の内部留保

新聞販売店の経営が極端に悪化している状況からすれば、わたしは新聞に対する軽減税率は、やむを得ないと考えている。しかし、その前にやるべきことがある。

まず、10%増税以前に消費税そのものを廃止することだ。300兆円を超えている大企業の内部留保をはき出させることが先である。新自由主義=構造改革の導入で、大企業は空前の利益をあげている。それにもかかわらず、法人税率は下降線を描き、消費税率は上昇線を描いている。

これは企業の負担を軽減して、そのつけを国民が負担する政策の具体像である。その背景に多額の政治献金が動いていることは論を待たない。

法人税を下げなければ企業が海外へ移転して、日本の産業が空洞化するという懸念もあるが、もともとグローバリゼーションの中で企業を多国籍化するのが、新自由主義=構造改革の方向性であり、いわば海外進出を促進するための政策が自公政治の柱となっているのだ。たとえば安倍首相がかつてない規模で外遊を繰り返しているのは、その実例である。決してレジャーに出かけているのではない。企業に対する支援である。

企業の海外進出を促進するために発展途上国でインフラ整備を行うのも、安保関連法案を成立させて海外派兵の体制を整備するのも、学校教育の中で英語を重視するのも、すべて企業の海外進出を支援する目的がある。

そのうえに法人税を下げるわけだから、消費税をアップする政策そのものがでたらめといえよう。

◇「押し紙」に消費税

また、新聞社サイドについて言えば、軽減税率を要求するのなら、「押し紙」の存在を認めて、この制度をきっぱりと廃止することである。「押し紙」に消費税がかかるから、負担が大きくなるのだ。

従って「押し紙」を廃止するだけで、新聞販売店の経営は好転するだろう。そして何よりも肝心のジャーナリズムの質も上がるだろう。

冒頭の動画は、「押し紙」回収の現場を撮影したもので、インターネット上にある。撮影者は不明だが、「押し紙」問題を認識している市民が撮影したのではないかと思う。

政治家と新聞関係者は、この動画を見て新聞に対する軽減税率問題をどう考えるだろうか。個々の政治家にEメールで動画を提供する必要があるかも知れない。再考のために。