北朝鮮のミサイル開発の背景に、日本の軍事大国化と歴史改ざんに対する警戒心
東京の中心部に水爆が投下されると、伊豆あたりまで影響が及ぶ。23区は完全に消える。北朝鮮のミサイルと核開発で、偶発により、人類がほろびかねない危機が到来している。
しかし、マスコミにより「木を見て森を見ない」思考が広がっている。いまや国際政治は、単独の事実だけに焦点を絞っていては、正しく理解できない。他の事実との関連の中で考える必要があるだろう。
日本の世論は、北朝鮮のミサイル問題だけを捉えて、一方的にこの国を悪者に仕立て上げているが、筆者は責任の半分は日米にあると考えている。特に日本の責任は重大だ。
結論を先に言えば、現在の状況は、日本政府が1990年代の初頭から進めてきた軍事大国化の行き着いた結果と言っても過言ではない。軍事大国化は、PKOに始まり、自衛隊の活動範囲を徐々に拡大して、いまや日米共同作戦が可能な段階にまで達している。さらにこの体制を維持・強化するために、特定秘密保護法や共謀罪までが施行され、いよいよ憲法9条をドブに捨てかなねない段階に達している。
北朝鮮が警戒を強めるのは当然だ。複眼的に見れば、歴史教科書の改ざん問題も北朝鮮を刺激する要素として存在する。
北朝鮮のミサイル危機は米国と連動した日本の軍事大国化の結果にほかならない。この点を認識ぜずに、北朝鮮だけを非難するのは的はずれである。「木を見て森を見ない」論理で、もちろん問題の解決にはならない。
ちなみに安倍政権が拉致問題をまったく進展させることができないのも、同じ理由による。軍による暴力という歴史問題は、当事者にとっては、想像以上にセンシティブなのだ。その軍隊が再び海外へ出始めたのである。北朝鮮が脅威を抱くのは当然だろう。しかも、両国に外交関係は存在しないのだから、その脅威は尋常ではない。
◇多国籍企業と海外派兵の関係
なぜ、1990年代から日本は軍事大国へ走り始めたのだろうか。答えは簡単で、企業が多国籍化して、企業活動の拠点が海外へ移ったからである。進出先で「民主化運動」などの政変が起きた場合、軍隊を投入して、多国籍企業を防衛する体制の構築を、日本の財界が望んでいるからである。
その意味では、構造改革=新自由主義の導入と、軍事大国化は密接な関係があるのだ。
PKOが国際貢献という論理は、一面では当たっているが、本質的な部分ではない。それは表向きの理由であって、派兵の実績を積み上げることが主目的だったと考えた方がいい。事実、その後、日本は軍事大国の階段をどんどん駆け上がっていく。
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特に軍事大国化の大きなステップになったのは、小渕内閣の時代である。1999年、第145通常国会で、周辺事態法、盗聴法、国旗・国家法、改正住民基本台帳法が矢継ぎ早に成立したのである。この時、影の総理と言われた人物が野中広務幹事長である。この国会を作家の辺見庸氏は、「1999年問題」と表現した。
2000年の通常国会から衆参両院に憲法調査会を設置するといいますから、改憲は具体的作業過程に入りつつあるということです。それに、僕の記憶では、首相が平気で有事法制について公言できるっていう雰囲気も、かつてなかった。今度の第145通常国会というのはすごい国会です。(『私たちはどのような時代に生きているのか』)
現在は、「首相が平気で有事法制について公言できる」雰囲気を超えて、首相が平気で改憲を公言できる段階にまで達している。しかも、森友・加計の事件で首相に重大な疑惑がかかつているというのに、その解明も行われていない。閣僚は平気で嘘をつく。
筆者は、日本にファシズムが忍び寄っているという印象を受けている。
北朝鮮のミサイル問題を逆手に取って、日本でおおがかりな世論誘導が進行している。