大阪府の消費生活センターが産経新聞に続き毎日新聞にも措置命令を下す、予想される朝日新聞と読売新聞の読者争奪戦
大阪府の消費生活センターは、12月10日、毎日新聞の販売店を経営する中野宅視氏に対して、吉村洋文知事の名前で景品表示法に基づく措置命令を下した。景品表示法とは、新聞の拡販活動の際に販売店が購読契約者に提供する景品類に制限を課す法律である。景品価値を金銭に換算したときに6ヶ月分の新聞購読料の8%が最高限度額となる。したがって毎日新聞の場合は1937円が上限で、それを超えると景品表示法に違反したことになる。
中野氏は、大阪府内で3店の毎日新聞販売店を経営している。消費生活センターが措置命令を下したことで、今後、1937円を超える景品を使った新聞拡販活動ができなくなった。
措置命令は次のように違反の事実を認定している。
本件販売店は、一般消費者との毎日新聞の購読契約の締結に際し、クレジットカード会社が発行するギフトカードや、スーパーマーケットが発行するお買物券などの商品券(額面3千円から1万円)を提供していたほか、スポーツ紙の無料提供や毎日新聞の購読料の割引、毎日新聞の購読料を無料とする月の設定などを行っていた。
◆3月には産経新聞販売店に対して措置命令
実は今年3月にも大阪府の消費生活センターが新聞販売店に対して措置命令を下した。対象としたのは産経新聞の3店である。これについての参考記事も紹介しておこう。
■ 終末期迎えた産経新聞 新聞拡販の景品にテレビ月50台、ニセの購読契約書で350万円の不正…「公序良俗」に背く手口のオンパレード
■ 江上武幸弁護士が、産経新聞による景品表示表違反事件の顛末を『消費者法ニュース』でレポート、産経新聞が訴訟を取り下げた深刻な理由
◆何が日本の新聞社を巨大化させたのか?
改めていうまでもなく、日本の新聞社が世界に類を見ないほど巨大化した背景には高価景品を使った新聞拡販活動があった。 新聞拡販活動と「押し紙」政策が車の両輪として噛み合い、新聞を売り物にしたジャーナリズム企業を急成長させたのだ。
残念ながら欧米の新聞社のようにジャーナリズムの質を高める努力をすることでメディアとしての影響力とステータスを得たのではない。企業の柱は新聞販売であってジャーナリズムは枝葉末節に過ぎない。これが紛れもない事実である。
産経新聞の販売店に続いて毎日新聞の販売店にも消費生活センターのメスが入った事実は、従来の新聞のビジネスモデルに公権力が疑義を唱え始めたことを意味する。新聞がいよいよ崩壊する前兆と考えるべきだろう。少なくとも近々に大きな変化が起きるだろう。
ちなみに読者の中には、なぜ消費生活センターも公正取引委員会もこれまで景品表示表違反を摘発しなかったのかという疑問も残る。高価な景品を使った新聞拡販は、産経新聞と毎日新聞だけではなかったはずだ。ビール券や洗剤の大量提供と引き替えに新聞の購読契約を取り付けるのが、新聞業界の慣行となってきたことは周知の事実である。
景品表示表違反を黙認してきた。
今回、産経新聞と毎日新聞が処置命令を受けたことで、朝日新聞と読売新聞は逆に拡販活動に拍車がかかるのではないか。産経新聞と毎日新聞が新聞社の「任務」を終えたあとに予想される朝日新聞と読売新聞による読者争奪戦に消費生活センターが「審判」として介入するかどうかにも注目すべきだろう。