小池ゆりこ東京都知事の電磁波問題に関する不見識、LEDと加齢黄斑変性、送電線と小児白血病
今世紀最大の環境問題は、電磁波である。その電磁波による人体影響に関して、東京都の小池知事はまったく認識がないようだ。重大なリスクを知らないままLEDの普及や無電柱化を進めている。恐ろしいとしか言えない。
電磁波の「電」とは電気のことである。その電気が空間に放たれたものが電波である。電気や電波には、影響が及ぶ領域がある。炎に手を近づけていくと、熱を感じる領域があるように、電気や電波にも、影響が及ぶ範囲がある。この領域を「電場」という。
こうした性質をもつ電磁波を被曝した場合に、どのような人体影響が現れるのかを、環境保全の視点や医学的な視点などから検証する作業が、電磁波問題である。現在、その対象になっている主要なものは、スマホ、LED、家電や送電線の電磁波である。さらに原発のガンマ線なども含む。将来的には、電気自動車からの電磁波や自動運転で使われる電磁波も問題になりそうだ。
電磁波の分類はエネルギーの大小によって行われているが、いずれの領域の電磁波も「有害」とする見方が欧米では定説となっている。昔は、エネルギーの低い家電の電磁波などは安全とされていたが、現在では、エネルギーの大小にかかわらず危険という認識が定着している。
しかし、電磁波問題は電話会社や家電メーカ、それに電力会社など実に多種多様な企業の利権が絡んでいるので、現在の「広告依存型」ジャーナリズムの下では、ほとんど報道されない。報道されないので、大半の人々は、電磁波にリスクがあるという認識すらも欠落している。
◇極低周波と小児白血病
電磁波に関する無知は政治家も例外ではない。小池ゆりこ知事は、無電柱化の計画を積極的に推進している。この計画では、送電線を地下に埋めることになるわけだが、地中のかなり深い部分に送電線を埋め込まないかぎり、通行人や道路沿いの建物で生活する人々は、地面から電磁波に被曝することになる。
と、いって電線を地中深く埋めることは、コストの面で不可能だ。となればせいぜい50センチか1メートルの深さになりそうだ。
送電線の電磁波は極(超)低周波である。極低周波は、小児白血病の原因のひとつとされている。1980年ごろから、極低周波と小児白血病の関係が疫学的に関連付けられるようになっている。また、脳腫瘍との関係も指摘されている。
しかし、メディアにはそのような認識はない。認識があっても、大口広告主に配慮して、リスクを指摘できない。それどころか、小池氏の「挑戦」を無批判に垂れ流している。
東京都は10日、「小池知事と語る、東京の無電柱化」と題したイベントを東京・新宿区の都庁で開催。約400人が参加した。小池百合子知事のほか放送プロデューサーのデーブ・スペクター氏、元文化庁長官の近藤誠一氏がコメンテーターとして参加した。(リスク対策.com )
「無電柱化を巡っては去年12月、国や事業者などに無電柱化を促す法律が成立しました。また、知事選の公約の1つに「無電柱化」を掲げた小池知事も今年6月、都内で電柱の新設を禁止する条例を成立させるなど無電柱化の推進に力を入れています。」(TBS)
◇青色LEDで昆虫のさなぎが死んだ
小池知事は、LEDの危険についてもまったくの無知としか言いようがない。東京都は現在、白熱灯からLEDに切り替える運動を進めている。白熱灯を持参すれば、無料でLEDに交換してくれる。(ただし、個数は1人1個)。
LEDは、赤、オレンジ、黄色、緑、青、紫の5色がある。さらにこれらの色を組み合わせることで、ほとんどの色を人工的に合成できる。
省エネで環境にもやさしく、新世代の光のようにPRされているが、その反面人体への深刻な影響も懸念されているのだ。特にスマホやパソコン、それに照明器具などに使われる青色LEDには健康上のリスクが高い。
2014年12月に東北大学大学院農学研究科の堀雅敏准教授らのグループが、青色LEDに殺虫効果があるという研究結果を英国の『Scientific Reports』に発表した。昆虫のさなぎに特定の波長を持つ青色や緑色に近いLEDを放射したところ、さなぎが死ぬことが分かったのだ。細菌とは異なり、さなぎが死ぬわけだから、人体に対する影響にも注視する必要がある。
実際、事務所の照明を青色LEDに切り替えたところ、体調が悪くなったという例も数多く報告されている。
目に対する悪影響も深刻だ。青色LEDが、失明に至る加齢黄斑変性の原因であることは、ほぼ定説になっている。
LEDについても不勉強なメディアが多く、日テレ(読売系)は、10日付けで次のようなニュースを配信している。
東京都は10日から白熱電球とLED電球を無償で交換する取り組みを始め、小池知事とピコ太郎さんがPRした。
東京都が始めたのは白熱電球2個とLED電球1個を無償で交換する取り組みで、LEDの普及と家庭での省エネを促進するのが目的。イベントにはPR動画で小池知事と共演しているタレントのピコ太郎さんが参加し電球の交換方法を実演した。 ■出典
【参考記事】危険が指摘され始めたLED照明(ブルーライト)による人体影響、理学博士・渡邉建氏インタビュー①
◇電磁波とは何か
電磁波についての説明は、2017年2月11日付けのメディア黒書から、以下に引用しておこう。
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そもそも電磁波とは何だろうか。最低限必要な範囲で、電磁波の正体を説明しておこう。
電磁波の「電」とは電気のことである。その電気が空間に放たれたものが電波である。しかし、電気や電波には、その影響が及ぶ領域がある。炎に手を近づけていくと、熱を感じる領域があるように、電気や電波にも、影響が及ぶ範囲がある。この領域を「電場」という。
電波は、われわれの生活に利便性をもたらした。携帯電話やスマホはその典型と言えよう。通信の革命と言っても過言ではない。が、その背景にある負の側面、あるいは「闇」の部分は、マスコミによってすっかり隠されている。
マスコミの大口広告主である電気・通信業界の権益がからんでいるからである。
電波による交信で絶対に欠くことができないものがある。それはアンテナである。電波はアンテナから発せられ、アンテナで受け止められる。それゆえに携帯電話の普及には、携帯基地局の設置が絶対的に必要になるのだが、この基地局が住民と電話会社のトラブルのもとになっているのだ。
次に電磁波の「磁」について考えてみよう。「磁」は何を意味するのだろうか。「磁」とは磁気、あるいは磁場を意味する。磁石が鉄を引き寄せることは周知であるが、その際に働く吸引力が「磁気」で、磁気が及ぶ範囲のことを「磁場」という。
電流が流れると、その周りには「電(場)」と「磁(場)」が発生する。電磁波とは、電気によって生じる「電場」と「磁場」を伴った波のことである。電波の形状と性質をより厳密に描写した言葉ということになる。
ちなみに単純に電磁波=電波と理解しても許容範囲である。枝葉末節にこだわりすぎて、物事を複雑に解釈すると、かえって電磁波問題を理解する妨げになりかねない。
電磁波問題とは、人体が電磁波(電波)を被曝し続けたときに生じる被害を公害の観点から指摘することである。広義に捉えれば、電磁波による人体影響だけではなく、生態系への影響も電磁波問題の範疇に入る。
電磁波問題の検証作業には1年、2年、あるいは5年、20年という長い歳月を要する。短期間の電磁波被曝では影響が現れなくても、長期にわたる被曝により影響が現れる場合もあるからだ。携帯電話の普及が始まったのち、長い歳月を経て、ようやく基地局の危険性が指摘されるようになったのも、安全性の検証には、長期の被曝による人体影響を調べる必要があったからである。
電磁波はエネルギーが低いものでは、家電機器などから漏れる「低周波電磁波」がある。また高いものでは、レントゲンのエックス線や原発のガンマ線など、さまざまな種類がある。従来は、ガンマ線やエックス線などエネルギーが高いものについては、遺伝子に対する毒性があると考えられてきたが、既に述べたように、最近では全ての電磁波に毒性があるという見解が主流になってきた。
このあたりの事情について、電磁波研究の第一人者である荻野晃也氏は、『携帯電話基地局の真実』の中で次のように述べている。
これらの電磁波のうちで、原爆の被爆者・被曝者などの研究から、「電離放射線(黒薮注:電離放射線とは、ガンマ線やX線を指す。詳しくは後述する。)が特に発癌の危険性が高い」と思われてきたのです。ところが、最近の研究の進展で「電磁波全体が危険な可能性」があり、「共通した遺伝的毒性を示す」と考えられるようになってきたのが、現在の「電磁波問題」の本質だといってよいでしょう。
また、北里大学の名誉教授・宮田幹夫氏らがまとめた『生体と電磁波』にも、次のような記述がある。
エックス線もガンマ線も電磁波である。人工の電磁波に比べてエネルギーが非常に大きいため、物質への浸透性が強く、生体へのダメージも非常に大きい。しかし、極低周波から超高周波まで、人工電磁波も生体へのダメージは大きく、身近にある場合は障害を生じる。放射線と電磁波はメカニズムが異なるが、同じように体内にフリーラジカルを生産し、DNAを破損してがんの原因を作る点では、同じような環境汚染源としてみることができる。
広島と長崎に投下された原爆の影響で、癌や白血病が増えたこともあって、かねてからガンマ線と癌の関係は定説となってきたが、実はマイクロ波など他の種類の電磁波でも、遺伝子に対する見解が変化してきたのである。
◇電磁波の分類
既に述べたように電磁波には、ガンマ線、X線、マイクロ波など様々な種類があるが、これらは何を基準に分類されているのだろうか。結論を先に言えば、それは電波の波打ちの頻度である。1秒間に打つ波の頻度、つまり周波数の違いにより、電磁波は分類され、ヘルツという単位で分類される。
波打ちの頻度が多ければ多いほど、周波数が高いことになる。少なければ少ないほど周波数が低いことになる。
たとえば電力会社が供給する電気の周波数は、東日本で50ヘルツ(一秒に50回)、西日本では60ヘルツ(一秒に60回)である。一方、携帯電話(第3世代)の周波数は、2000MHz(メガヘルツ)である。これは一秒間に20億回の波打ちが発生することを意味している。この領域の電磁波は、マイクロ波という呼び方で分類されている。
さらにガンマ線の周波数は、「10の19乗」から「23乗ヘルツ」にもなる。
従来から、ガンマ線やX線など極めて周波数の高い電磁波は、電離放射線と呼ばれている。「エネルギーが高く、分子や原子を構成する電子を『バラバラに離してしまう(「電離」といいます)』」(荻野晃也著、『携帯電話基地局の真実』)電離作用を伴うからだ。それが遺伝子を傷つけたりする。
これに対して、赤外線、マイクロ波、低周波電磁波など、ガンマ線やX線に比べるとはるかにエネルギーが低い電磁波は、電離作用を伴わないので非電離放射線と呼ばれる。
現在、電離放射線に遺伝子に対する毒性があることを否定する研究者はいない。それはすでに定説となっている。
これに対してマイクロ波など非電離放射線の毒性については論争がある。既に述べたように、すべての種類の電磁波が人体に悪影響を及ぼすという考えが有力になってきたものの、現在の時点では論争に決着が着いているわけではない。
従って「予防原則」に基づいて、危険性を想定した対策を取っておかなければ、後に、取り返しがつかない悲劇を生む可能性がある。
次に示すのが電磁波の分類図である。
携帯電話に使われているのは、マイクロ波と呼ばれる領域の電磁波である。たとえば広く普及している第3世代携帯電話の周波数は、2000メガヘルツである。これは1秒間に20億回の周波が観測されることを意味する。電子レンジは、約25億回。とてつもない波の動きが熱エネルギーを発生させる。
こうした高周波の電磁波を携帯電話の受話器から直接に、あるいは携帯基地局の周辺で長期に渡って浴び続けたとき、人体影響が生じるリスクがないのかを考えるのが、俗にいう携帯電話の電磁波問題である。従って、パナウエーブ(白装束集団)の考えとはまったく性格が異なる科学である。
当然、長期にわたる科学的な観測が不可欠になる。たとえば10歳でスマホを使い始めた子供が、30歳になったとき、あるいは40歳に、さらには老齢に達したとき、電磁波被曝による負の影響を受けていないか、というような長期の問題なのだ。
◇安全基準
長期にわたる被曝を前提としているのか、電磁波問題に敏感な欧米では、地方自治体が独自に電磁波強度の基準を設定している。そのうちのいくつかを、日本の総務省が定めている基準値と比較してみよう。対象は1800メガヘルツの基地局である。
日本:1000μW/cm2
イタリア:10μW/cm2
スイス:6.6μW/cm2
EU:0.1μW/cm2(提言値)
ザルツブルグ市:0.0001μW/cm2(室内目標値)
この数値を見ただけで、総務省がいかに電話会社のビジネスに貢献しているかが明らかになる。数値の大きな差異から異常な実態と言っても過言ではない。ちなみにザルツブルグ市の値でも、通信は可能だ。
◇携帯電話基地局の周辺で奇形
携帯電話の基地局が設置された後、直近の場所に次々と奇形植物が出現したという報告が複数ある。
そのうち筆者が直接取材した長野県木曽町で撮影した写真(奇形のヒマワリ=地元住民が撮影。奇形のナスビ=黒薮が撮影)ものを紹介しよう。
電柱の上に基地局を設置した後、設置場所の畑や近くの民家の庭で奇形植物が表れた。同じ現象が毎年続き、基地局が撤去された後、出現しなくなったので、原因が基地局のマイクロ波だった可能性が高い。
【参考資料】
■講演要旨(馬奈木昭雄弁護士)『人体実験を許すな。~携帯電磁波の危険性~』
■『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 』(黒薮哲哉、花伝社)