2019年02月14日 (木曜日)
白血病と高圧電線の関係、日本での疫学調査では通常の4.7倍に
白血病が好奇心の的になっている。
改めて言うまでもなく、競泳の池江璃花子(いけえ・りかこ)選手が、練習中に体調不良を訴え、病院で検査を受けた結果、白血病と診断されたからだ。
東京オリンピックで金メダルが期待されているアスリートが深刻な病に侵されたこともあり、報道が過熱しているが、白血病について故意に隠してる重要な事実がある。
電磁波と白血病の深い関係である。
第5世代移動通信システム(5G)の導入を夏にひかえ、有線を含む通信システムと連動している電磁波によるリスク論は極力隠したいというのが電話会社や電気メーカーの本音である。国策も同じ方向を向いている。それに配慮してマスコミは、電磁波の害に関する報道をいっさい控えているのだ。
池江選手の発病は、この問題を考える糸口であるはずなのだが。
◆日本でも疫学調査では4.73倍
実は、白血病(特に小児白血病)と送電線からもれる超低周波電磁波の因果関係は、医学的にはまだ立証されていないものの、疫学調査では明白になっている。読者は、「高圧電線の近くに住む住民に白血病が多い」という話を、一度や二度は耳にしたことがあるのではないだろうか。それはデータとしては裏付けられている。
超低周波電磁波と白血病の関係がはじめて指摘されたのは、1979年である。ナンシー・ワルトハイマー博士が、『米国疫学ジャーナル』で調査結果を発表したのち、それを検証するために、世界各国で疫学調査が行われた。その結果、両者の因果関係が疫学的に立証されたのである。
日本でもWHOの依頼を受けて、国立環境研究所の兜真徳博士が、7億円の予算で、大がかりな疫学調査を実施した。その結果、送電線(4ミリガウス以上)の近くでは、それ以外の場所に比べて白血病が2.7倍(急性リンパ性白血病を含めると4.73倍)も多いことが判明したのだ。
しかし、この調査結果は文部省に酷評され、闇に葬られてしまった。読売新聞が報道しただけである。
海外の疫学調査でも、送電線と白血病の関係を示す疫学調査の結果が次々と報告された。荻野晃也氏の『健康を脅かす電磁波』によると、その数は60件を超えているという。
◆電磁波・放射線のリスク
電磁波の危険性が指摘されはじめたのは、前出のナンシー・ワルトハイマー博士による疫学調査の後である。もっとも電磁波の「毒性」にいち早く気づいて、それを軍事兵器に転用する動きは古くからあり、ソ連は1970年代には、すでにマイクロ波を使った武器の開発に成功している。しかし、大学などの研究者の間で、従来の常識がくつがえり問題意識が生まれてきたのが、この時期なのである。
最初に超低周波電磁波が問題になり、その後、携帯電話の普及に伴って、マイクロ波(高周波)による人体影響が明らかになってきた。
ちなみに電磁波とは、端的に言えば電波のことである。その電波にも様々な種類がある。レントゲンのエックス線や原発のガンマ線は、放射線と呼ばれているが、広義には電磁波の一種である。
日本では、エネルギー(周波数)が比較的弱い送電線や携帯電話の電波は、電磁波と呼ばれ、エックス線やガンマ線は放射線と呼ばれている。が、欧米では両者を区別せずに総括して放射線と呼んでいる。
電磁波・放射線の人体影響についての評価は、ワルトハイマー博士の時代から大きく変化している。従来は、エネルギーが高いエックス線やガンマ線については危険だが、エネルギーが小さい電磁波は安全と考えられていた。それを前提に携帯電話の開発が進んだのである。
ところが現在では、エネルギーの大小を問わず、電磁波・放射線はすべて人体影響を及ぼすというリスク論が定説になっている。人体影響とは、具体的に言えば、「遺伝子毒性」である。遺伝子を破壊して、癌などを発症させるリスクである。
◆レーザーによるタイム測定
競泳のタイム測定のシステムがどうなっているのか不明なので、確かな事は言えないが、電子測定の場合、ある種のレーザー(これも電磁波)を使うのが一般的だ。このレーザーが使われていれば、ゴール地点(ラップタイムを測定する場合は折り返し地点も)で、選手はレーザーを浴びることになる。(念を押すが、筆者は競泳のタイム測定の仕組みを確認していないので、確証はない。)
実は、レーザーによる人体影響は、海外では問題になっている。前出・荻野氏の『携帯電話は安全か?』によると、米国では警官が車のスピード違反の取り締まりにレーザーガンを使うのだが、1990年代にそれが原因で癌になったとする訴訟が相次いだという。
日本でも中日ドラゴンズの大豊泰昭(たいほう やすあき)選手が白血病になったが、考えてみれば、球速を測定するためのレーザーを毎日浴びていたはずだ。
◆桜田義孝大臣の発言
余談になるが、池江選手の白血病をめぐり桜田義孝大臣の発言が国会で問題になっているが、わたしには、どこが問題発言なのか全くわからない。全体を聞けば、まったく違和感がない。話し言葉とは、もともと自由闊達なもので、それを模範型を当てはめて「指導」する風潮が広がると、モノが言えなくなる。
この件も含めて、池江選手をめぐる報道は、どこかピントはずれの感を免れない。