1. 「押し紙」の実態

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遠慮・忖度一切なし!《本音の対談》黒薮哲哉×田所敏夫〈06〉日本のタブー「押し紙」問題の本質を探る

◆日本の新聞がデタラメだと感じた瞬間

黒薮 思い出すことがあります。日本の新聞がおかしいと最初に思ったのは、20代の終わりです。わたしは20代の大半を海外で暮らしたのですが、日本に帰って東京でアパートに入った、その日に驚くべき体験をしました。ドアを開けると、拡販員がいきなり洗剤を押し付けて「新聞を取ってくれ」と言ってきたのです。こうした新聞拡販を知らなかったので、「これで新聞記者の人は平気なのかな」と思いました。これが日本の新聞はどこかおかしいと感じた最初です。

田所 そこから黒薮さんはライフワークの「押し紙」の取材にとりかかられたのですか。

黒薮 東京で普通の会社に就職したんです。そこに2年くらい居ましたがバブル崩壊で会社が潰れたので、それからメキシコで、メキシコ日産の通訳をした後、日本に戻り新聞業界の業界紙に入りました。「押し紙」に関わりだしたのはそれからです。

田所 新聞業界の業界紙だから、ど真ん中にいらっしゃった。内部事情が分かりますね。

黒薮 業界団体の中で不正経理事件があって、それを調べようとしたら業界紙の社長さんらがみんなで、「これは取材してはいけない」と決めてしまいました。そこで「それはおかしいのではないか」と言っていたら、クビになったんです。

田所 解雇ですか。【続きはデジタル鹿砦社通信】

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2023年03月22日 (水曜日)

新聞の没落現象に歯止めかからず、2023年1月度のABC部数、年間で朝日新聞が62万部減、読売新聞が47万部減

2023年1月度のABC部数が明らかになった。それによると朝日新聞は約380万部、読売新聞は約651万部、毎日新聞は約182万部だった。この1年間の減部数は、朝日新聞が約62万部、読売新聞が約47万部、毎日新聞が14万部だった。産経新聞と日経新聞も大幅に部数を減らしている。部数回復の兆しはまったく見られない。

このペースで新聞離れが進めば、朝日新聞は2024年度中に300万部の大台を割り込む可能性がある。また、読売新聞は年内にも600万部の大台を割り込む可能性がある。

1月度のABC部数は次の通りである。

朝日新聞:3,795,158(-624,194)
毎日新聞:1,818,225(-141,883)
読売新聞:6,527,381(-469,666)
日経新聞:1,621,092(-174,415)
産経新聞: 989,199(-54,105)

なお、ABC部数には「押し紙」(広義の残紙)が含まれているので、新聞販売店が実際に配達している新聞部数は、ABC部数よりもはるかに少ない場合が多い。「押し紙」率は、新聞社によっても地域によっても異なるが、過去に起きた「押し紙」裁判のデータなどから察すると、搬入部数の20%から40%ぐらいになると推測される。相対的に地方紙よりも中央紙の方が「押し紙」が多い傾向にある。ただ、新聞販売店からの情報によると、今後、「押し紙」政策を廃止する方針を打ち出した新聞社もあるようだ。

新聞離れは、夕刊の廃止という形でも現れている。たとえば中央紙でも毎日新聞は、4月から愛知、岐阜、三重で夕刊を廃止する。今後、夕刊廃止の流れは他地域や他社でも起きるだろう。夕刊廃止はすでに秒読みの段階に入っている。
【続きはデジタル鹿砦社通信】

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元販売店長が内部告発、「押し紙」と表裏関係、折込広告の水増し問題、古紙回収業者の伝票が示す凄まじい実態 

事実を裏付ける資料は、報道に不可欠な要素のひとつである。新聞や雑誌などの紙媒体はスペースに制限があるので、資料を全面公開するには物理的な限界があるが、インターネット・メディアには限界がない。この当たり前の原理を最も有効に生かしたメディアは、恐らくジュリアン・アサンジが設立したウィキリークスではないか。生の資料を公開することで、記事の記述の裏付けを提示している。

先日、筆者は読売新聞販売店の元店長から、膨大な量の内部資料を入手した。その中で注目した資料のひとつに、古紙回収業者が販売店に発行した伝票がある。そこには業者が回収した残紙量と折込広告の量が明記されている。

残紙の実態は、「押し紙」裁判などを通じて、かなり明らかになってきたが、水増しされ、廃棄される折込広告の数量が伝票上で明らかになったのは、筆者の取材歴の中では今回が初めてである。抜き打ち的に伝票を写真付きで紹介しよう。

◆過剰になった折込広告を裏付ける伝票

まず伝票で使われている用語について事前に説明しておこう。「残新聞」とは残紙(広義の「押し紙」)のことである。「色上」とは、折込広告の事である。年月日の表記は、元号で表記されている。従って本稿でも例外的に元号を使用する。ただし(括弧)内に正規の年月日を示した。

元店長によると、古紙回収業者は月に2回から3回、残紙と折込広告を回収していたという。

■平成27(2015年)年8月26日
残新聞:6480kg
色上(折込広告):1210Kg

■平成28年(2016年)11月21日
残新聞:7320kg
色上:1250Kg

■平成30年(2018年)7月5日
残新聞:7010kg
色上:810Kg

 

■続きはデジタル鹿砦社通信

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2023年02月28日 (火曜日)

残紙の回収量が約6・5トン、折込広告の回収量が1・2トン、廃業した読売新聞販売店の伝票を入手

茨城県古河市にあった読売新聞販売店の元店長から、「押し紙」(広義の残紙)と折込広告の回収状況を示す伝票を入手した。それによるとたとえば、「平成24年(2012年)8月26日」付けの伝票には次の数値が記されている。

残紙の回収量:6480kg
色上(折込広告):1210Kg

残紙の回収量が約6・5トンで、過剰になった折込広告の回収量が1・2トンである。

この店は新聞の卸代金が支払えなくなり2020年に廃業した。

折込広告の回収数量が明らかになったのは、筆者が知る限りでは今回が初めてである。折込広告が廃棄されていた事実が伝票で確認できたことにより、広義の「押し紙」は、新聞業界の外部へも被害を及ぼしていることが明らかになった。今後、ジャーナリズムは折込広告の廃棄問題をクローズアップする必要がある。

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2023年02月10日 (金曜日)

毎日新聞網干大津勝原店の事件、担当員の個人口座に新たに485万円の「裏金」振込が判明、総額で900万円に、背景に深刻な「押し紙」問題 

この記事は、毎日新聞・網干大津勝原店の元販売店主が販売局員の個人口座に金を入金した事件の続報である。1月25日付けのデジタル鹿砦社通信で筆者は、『毎日新聞販売店、元店主が内部告発、「担当員の個人口座へ入金を命じられた」、総額420万円、エスカレートする優越的地位の濫用』と題する記事(以下「第1稿」と記す)を掲載した。

タイトルが示すように元販売店主が、「押し紙」を含む新聞の卸代金を販売局員の個人口座に入金するように命じられたとする内容である。元販売店主による内部告発だ。

これに対して毎日新聞東京本社の社長室は、筆者がコメントを求めたのに対して、「調査中であり、社内で適切に対応していきます」と回答した。

その後、筆者は不透明な入金を裏付ける別のデータを入手した。と、いうよりも筆者が、第1稿を公表した際に見落としていたデータがあったのだ。本稿では、新たに分かった店主による入金の年月日と入金額を補足しておこう。

金銭の振り込みを命じた毎日新聞社の人物は、第1稿で言及したのと同じ山田幸雄(仮名)担当員である。既に述べたように筆者は、1月5日に現在は毎日新聞・東京本社に在籍している山田担当に対して電話で、次の3点を確認した。

①電話の相手が、毎日新聞社販売局に所属している山田幸雄氏であること。

②山田氏が大阪本社に在籍した時代に、網干大津勝原店を担当した時期があること。

③網干大津勝浦店の元店主(内部告発者)に面識があること。

◆支払いの年月日と金額

新たに分かった金の振り込み年月日と金額は次の通りである。

※資料との整合性を優先して、日付けは例外的に元号で表記する。読者の混乱を避けるために西洋歴も()に記した【続きはデジタル鹿砦社通信】

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2023年01月26日 (木曜日)

「押し紙」問題が急増、販売店は請求書や発証部数を示す資料の保存を

このところメディア黒書への「押し紙」に関する情報提供が急増している。確信的なことは言えないが筆者は、借金がゼロの店主のほうがむしろ少数になっているのではないかとの印象を受けている。しかも、借金の額が数千万円に及ぶケースも少なくない。被害額が尋常ではない。それ自体が社会問題なのである。

しかし、販売店の声はなかなか表に浮上しない。内部告発を自粛する空気があるように感じる。逆説的にいえば、それだけ新聞発行本社が何十年にもわたり優越的な地位を濫用してきた証ではないか。

なにしろ販売店は、新聞の供給を止められるとその日から立ちいかなくなるわけだから、新聞社に対する警戒心が極端に強い。これはやむを得ない事情だ。

しかし、今後、「押し紙」裁判が増える可能性が高い。そこで裁判のために保存しておくべき資料について、筆者の見解を述べておく。次の資料を、少なくとも3年前にさかのぼって保存しておくことを勧める。理想的には10年分の資料を保存することを推奨する。

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2023年01月25日 (水曜日)

毎日新聞・販売店元店主が内部告発、「担当員の個人口座へ入金を命じられた」、総額420万円、エスカレートする優越的地位の濫用

毎日新聞・網干大津勝原店(姫路市)の元店主から、筆者が入手した預金通帳や「取扱票」を調べたところ、元店主から毎日新聞社の担当員の個人口座に繰り返し金銭が振り込まれていることが判明した。金銭どのような性質のものなのかは現時点では不明だが、この販売店は昨年の12月に、「押し紙」が原因で廃業に追い込まれており、金額の中に「押し紙」により発生した金額が含まれていた可能性もある。

元店主は、次のように話している。

「山田幸雄(仮名)担当から個人口座への金銭の振り込みを命じられました。『押し紙』代金の支払いに窮しており、指定された個人口座に新聞代金を振り込めば、特別な取り計らいをすると言われました」

筆者は、毎日新聞・東京本社の山田担当に電話で事実関係を確認した。まず、本人が毎日新聞社販売局に所属している山田幸雄氏であることを確認した。次に山田氏が大阪本社に在籍した時代に、網干大津勝原店を担当した時期があることを確認した。さらに元店主と面識があることを確認した。

しかし、山田氏は元店主による告発内容については、「記憶にない」と話している。

■続きはデジタル鹿砦社通信

 

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2022年12月26日 (月曜日)

毎日新聞社長室へ公開質問状、「押し紙」問題についての見解、販売店の改廃事件で刑事事件にするという脅し

企業には広報部とか、広報室と呼ばれる部門がある。筆者のようなルポライターが、記事を公表するにあたって、取材対象にした企業から事実関係や見解などを聞き出す時にコンタクトを取る窓口である。新聞社の場合は、ある程度の記者経験を積んだ者が広報の任務に就いているようだ。

今月に入って、兵庫県姫路市で毎日新聞・販売店の改廃にともなう事件が起きた。店主が、新聞の仕入れ代金などで累積した約3916万円の未払い金の支払いを履行できずに、廃業に追い込まれたのである。公式には双方の合意による取引の終了である。

請求は、さやか法律事務所(大阪市)の里井義昇弁護士が販売店主に内容証明で催告書を送付するかたちで行われた。里井弁護士は、催告書の中で、店主が積み立てた信認金(約80万円)を未払い金から相殺することや、12月分の読者からの新聞購読料は毎日新聞社のものであるから、店主が集金してはいけない旨も通知していた。

集金した場合は、「株式会社毎日新聞社としましても、民事上のみならず、それにとどまらない刑事上のものを含めた法的対応を講ずることを検討せざるを得ませんので、たとえ購読者の方より申し出がありましても、一切収受等することなく、後任の販売店主への支払いをと伝えられるようご留意ください」と述べている。

かりに請求金額に「押し紙」による代金が含まれていれば、実に厚かましい話である。

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2022年12月23日 (金曜日)

武富士から新聞社へ、「押し紙」代金の取り立て、問われる新聞人の人権意識

新聞販売店の強制改廃が後を絶たない。新聞社は、販売店の廃業に際して、店主に対し新聞の卸代金の未払い金を請求する。しかし、それには「押し紙」が含まれているので、請求額は尋常ではない。3000万円とか4000万円のレベルになることもある。ある店主に尋ねてみた。

「廃業後にどうやって未払い金を返済するのですか?」

「他の販売店で従業員として雇用してもらい、月に5万円とか7万円を新聞社に入金している人がかなりいます」

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2022年12月20日 (火曜日)

「押し紙」を廃止した新聞社、新潟日報のケース

中央紙が「押し紙」政策に徹していることは周知の事実になっている。ブロック紙や地方紙もやはり「押し紙」を柱としたビジネスモデルを導入している社が多いが、少数の例外もある。たとえば熊本日日新聞である。同社は、販売店に搬入する予備紙は、搬入部数の1・5%に固定している。その結果、残紙が店舗にあふれる状況はない。

熊本日日新聞の他に、わたしが調査した限りでは、新潟日報も「押し紙」政策を廃止した時期が確認できる。現在も正常な新聞販売政策を実践しているかどうかは不明だが、少なくとも過去に「押し紙」政策を廃止した時期がある

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2022年12月16日 (金曜日)

毎日新聞・網干大津勝原店の改廃、同店の内部資料を入手、里井義昇弁護士が「3915万円を支払え」と催告

網干大津勝原店(兵庫県姫路市)の内部資料を入手した。その中に2022年4月9日付けの「通知兼催告書」と題する内容証明郵便がある。執筆者は、毎日新聞社の里井義昇弁護士である。

「通知兼催告書」の中で里井弁護士は、店主が未払いにしている代金として、約3915万円を明記した上で、「直ちに株式会社毎日新聞社の指定する下記代理人預かり口座に振り込まれるよう催促いたします」記している。

この約3915万円の請求に、かりに「押し紙」代金が含まれているとすれば、請求書を送り付ける行為そのものに問題があるのではないか。里井弁護士は、長年にわたって毎日新聞社の代理人を務めているわけだから、「押し紙」問題を認識していないはずがない。しかも、店主に支払い能力がないことも知っている可能性が高い。

『弁護士職務基本規定』の第1条は、弁護士の使命について、次のように述べている。

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2022年12月16日 (金曜日)

毎日新聞が新聞の供給をストップ、網干大津勝原販売店の改廃事件、「押し紙」は新聞記者が報じるべき問題

毎日新聞社は、15日、網干大津勝原販売店(兵庫県姫路市)に対する新聞の供給をストップした。店主からの連絡によると、新聞配達員らは新聞の到着を待っていたが、新聞は供給されなかった。同店で扱っている産経新聞は通常通りに供給された。

毎日新聞社は、新たに設けた販売店から新聞を配達したが、店主によると、十分に新聞購読者の住所を把握できていなかったために、新聞が届かないケースが発生して、自店へ苦情の電話が殺到したという。

既報したように、この事件について筆者は、毎日新聞東京本社に事情を説明するように書面で質問状を送付していた。回答は社長室から14日の夜に、メールに添付したPDF書面で到着した。次に引用するのが、回答の全文である。

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2022年12月14日 (水曜日)

毎日新聞の網干大津勝原販売店の店主からメディア黒書へ相談、15日に新聞の供給が止まる可能性も?社会部へも情報提供

毎日新聞の網干大津勝原販売店の店主から、残紙の負担で新聞の卸代金の入金が困難になり、強制改廃されるリスクが高まっているとの相談を受けた。15日にも、毎日新聞が新聞の供給をストップする可能性がある。

この件に関して毎日新聞側の主張が聴取できていないので、断定的なことは言えないが、店主の報告が事実だとすれば、販売網を整備する政策の一端である可能性が高い。今後、新聞社の系統を問わず他の販売店にも起こり得る問題である。

念のために大阪本社の販売局に事情を問い合わせたが、担当者と話すことはできなかった。要件を伝えるためにFAX番号を尋ねたところ、同社の社会部のFAXが提示された。

毎日新聞東京本社の広報担当者に次の問い合わせメールを送付した。大阪本社の社会部にも、「CC」のかたちで同じ問い合わせを送った。残紙問題は、本来、新聞記者が報じるべき重大な問題なので、どう対処するかがみものだ。

わたしからの問い合わせは次の通りである。回答が到着次第に、メディア黒書で公表する。

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