1. 9月15日に控訴審、佐賀新聞「押し紙」裁判、原告が控訴理由書を提出、「『押し紙』そのものが契約違反」

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2020年09月07日 (月曜日)

9月15日に控訴審、佐賀新聞「押し紙」裁判、原告が控訴理由書を提出、「『押し紙』そのものが契約違反」

佐賀新聞の元店主・寺崎昭博さんが佐賀新聞社に対して起こした「押し紙」裁判の控訴審が、9月15日に福岡高裁で開かれる。詳細は次の通りである。

日時:9月15日 13時30分~

場所:福岡高裁、1015法廷
※だれでも傍聴できる。

第1審(佐賀地裁)は、原告・寺崎さんの勝訴だった。佐賀地裁は、佐賀新聞社に対して、「被告の原告に対する新聞の供給行為には、独禁法違反(押し紙)があったと認められる」と認定して、1066万円の支払いを命じた。

【参考記事】佐賀新聞「押し紙」裁判、判決の公開と解説、佐賀新聞社の独禁法違反を認定

 

第1審判決に対して原告と被告の双方が控訴している。

【解説】
1審原告・寺崎さんの弁護団(江上武幸弁護士ら)は、佐賀地裁が佐賀新聞社による独禁法違反を認定したことについては高く評価している。しかし、その認定に整合した法的判断が行われていない箇所については判決を見直すこと、寺崎さんが受けた損害額の計算方法を見直すこと、さらには「押し紙」そのものが契約書違反に該当することなどを主張している。

控訴理由書の全文は、次の通りである。

■1審原告の控訴理由書全文

以下、特に重要な3点をクローズアップしてみよう。

①公序良俗違反

民法90条は、「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする」と述べている。ここで言う「法律行為」とは、法律に則して「権利」や「義務」を行使することである。
この民法90条を根拠として、原告は「押し紙」と、それに連動しているABC部数の偽装工作などが公序良俗違反に該当すると主張している。

ちなみに、「独禁法違反となる行為が、公序良俗に反する場合は(個別の契約など、私法上の効力も)無効」となるというのが過去の判例である。

つまり1審原告は、「押し紙」の独禁法違反認定だけではなく、さらに公序良俗違反に認定するように求めているのである。その理由として、「押し紙」が、「不当・違法に仕入代金」を徴収する手口であること、不正な広告料収入を得るための手段であること、それにこのようなビジネスモデルの中でABC部数の改ざんが公然と行われていることなどをあげている。

また、「押し紙」裁判で和解勝訴した別の佐賀新聞販売店の内部資料を、3年以上前に公正取引委員会に提出して対策を取るように求めているにもかかわらず、今だに何の対策も取っていない事実や、国会で「押し紙」問題が議題になり、公正取引委員会が対策を講じることを確約したにもかかわらず、実際には無視されている事実を前提として、「独禁法の規定する措置に委ねたのでは、その目的が十分に達成られない」ので、民法90条を適用すべきだと主張している。

 

②折込広告収入の計算

折込広告の定数(供給される枚数)は、新聞の供給部数に一致させる基本原則がある。たとえば新聞の搬入部数が2000部の場合は、折込定数も2000部に設定するのが従来の原則だった。従って「押し紙」にセットになっている折込広告は、配達されていないにもかかわらず料金だけは徴収される。それが実態とされてきた。

しかし、実際の折込広告の取り引き実態を確認すると、公共広告は例外として、民間企業の折込広告は、新聞の供給部数よりもはるかに少ない傾向が生まれている。

ところが佐賀地裁の1審判決はこの点を考慮せず、単純に「押し紙」部数を基数として折込広告料金の水増し分を計算し、損害賠償額から控除している。1審原告は、「新聞の供給部数=折込広告の搬入枚数」という従来の構図が事実ではない証拠を具体的なデータで示して、裁判所が損害賠償額から控除した金額を、再計算に基づいて訂正するように求めている。

 

③「押し紙」そのものが契約違反

原告は、新聞販売店契約の付随義務を果たすことは販売店だけではなく、佐賀新聞社にとっても、本来的な責務であると主張している。両者の商契約の2条によると、新聞販売店は労働基準法や新聞公正競争規約などの関係法規を順守しなければならない。販売店が関係法規を順守しなければ、新聞社に不利益を及ぼすからである。
と、すれば当選、新聞社が関係法規を順守しない場合は、販売店に不利益を及ぼすことになる。このような一般常識を前提に原告は、「契約当事者の一方にのみ、関係法規等の順守義務を課すことは不合理である」と主張している。
関係法規の中には、「押し紙」の禁止規定なども含まれている。つまり「押し紙」をはじめとする優越的な政策は、新聞社と販売店の商契約そのものに違反している、と主張している。

 

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