政党支持率は野党も軒並み減、進む政治不信と議員定数削減問題
時事通信が実施した安倍内閣の支持率が30%を切った。そのことは、メディアの話題になっているが、同時に実施された政党支持率の調査結果にはあまり関心が集まっていないようだ。
興味深いことに政党支持率は、自民党だけではなく、野党も軒並み支持率を落としている。その一方で無党派が大幅に伸びた。
自民党:21.1%(-3.9)
民進党:3.8%(-0.4)
公明党:3.2% (-0.3)
共産党:2.1% (- 0.3)
日本維新:1.1%(-0.2)
支持政党なし:65.3%(+4.5)
森友・加計の両事件を機にして浮上した自民党に対する不信感は、必ずしも野党に対する期待に転嫁していない。むしろ政治不信を増長させ、支持政党を持たない層を増やしたようだ。国民は自民党だけではなく、野党をも「無能」と考える傾向を強めている。
◇議員定数削減論の愚
こうした状況の下で、政治家の見識を疑わせるとんでもない法律が施行された。改正公選法である。これより衆議院の議席が10議席減った。(小選挙区が6議席減、比例区が4議席減)
この法案を熱心に進めてきたのが、自民党と民進党である。議員定数削減の考え方の根底には、国家予算の削減目標がある。あるいは無駄遣いの防止。さらに最初は、新自由主義の目指す「小さな政府」の考えもあったようだ。参議院廃止論も元々は同じルーツである。それに衆参両院の違いが曖昧だから廃止すべきだというある意味ではもっともな口実が加わったのである。
筆者は、議員定数の削減ほどバカげた政策はないと考えている。と、いうのも議員定数が減ると、国民の参政権が縮小するからだ。もちろん議員も多忙になる。真面目な議員ほど仕事に忙殺させることになる。
ちなみに議員定数を減らしたぐらいでは、無駄遣いの防止にはならない。それよりも、たとえばウエブサイト1件の制作に2100万円(相場は300万円)もの予算を支出するなどのデタラメ(文部科学省)をやめることが先だ。
【参考記事】博報堂から自民党へ政治献金、深まる文部科学省と博報堂の闇、本当に必要なのか4件のウエブサイトに制作費・約4000万円
こんな小学生にでも分る簡単な原理も理解していない人々が、国会の多数を占めているのである。これでは政治不信を招いても不思議はない。
◇小選挙区制と小沢一郎
政治家が劣化した原因は、小選挙区制にあるという議論が最近になってようやく起こってきた。自民党の中からすらそんな声が上がっている。昔は派閥の中で、先輩が後輩を指導する習慣があったから、若い議員の不祥事はなかったという意見である。小選挙区制になると、派閥意識が薄れ、劣化が進んだというのだ。
このような考えは、小選挙区制の弊害を指摘しているが、枝葉末節であって本質論ではない。
改めて言うまでも小選挙区制の生みの親は、小沢一郎氏である。それゆえに小沢氏の考えを検証すると、小選挙区制の実態が逆説的に見えてくる。
小沢氏の考えは、小選挙区制の下では、政権交代が起こるので、国民の政治参加、政治への関心を促進できるというものである。
たとえば2013年8月22日に、共同通信社が小沢一郎氏に行ったインタビューで、これらの点が確認できる。
二度も続けて政権交代したことは良かった。二大政党的な形で政権交代したのは、小選挙区制度にしたからだ。その点においては大成功だし、国民も「ああ、こういうものか」という認識が、きちんとできたと思う。その点では、間違いではなかったと思う。
小選挙区制度を日本に導入したことによって、半世紀以上、政権を自民党以外にないと思っていた国民が政権交代させたのだ。『俺たちが選挙に行けば、変わるのだ』と、そういう意識を4年前に持ったということが大きい。そういう意識はずっと頭の中に入ってると思う。棄権するという行為を決していいと思わないが、特に棄権した人たちは、変わり得ると思った政党が出てくれば投票率は上がるだろう。
小沢氏の考えが完全に誤っていたことが、事実によって立証された。小沢氏が理想とした政治体制のもとで、特定秘密保護法、安保関連法案、それに共謀罪などが矢継ぎ早に成立していったのである。そして国民の政治不信を招いたのだ。
この人は、政策の効果を人間の理性と啓蒙だけに期待する型の政治なのだ。思想そのものが間違っているのだ。これでは変革などできるはずがない。
【写真】小選挙区制の生みの親・小沢一郎氏