高市早苗総務大臣と森裕子議員の政治献金を悪用したマネーロンダリング、与野党政治家の劣化が顕著に
6月18日に閉会した第193国会。加計学園の件に象徴されるように政治家や官僚が関与した事件をめぐる攻防が繰り広げられた。同時に、権力を持つ人々を裁く高いハードルが浮き彫りになった。
赤旗・朝日・東京を筆頭に、日刊ゲンダイ、週刊金曜日、週刊文春、週刊新潮、それに最後にはNHKまで、安倍首相らが共謀したこの事件の疑惑を追及したが、国会の閉会により、渦中の人々は場外に逃れたかたちになった。
が、国民の審判を受けなければならなかったのは、加計学園事件に関与した面々だけではない。実は、高市早苗、森裕子の両議員も、別の事件で責任を問われる立場だったのだ。この両名に対する刑事告発が、それぞれ奈良地検と新潟地検で受理されている事実を、読者はご存じだろうか。
詐欺容疑である。具体的には政治献金を利用したマネーロンダリングである。
メディア黒書で既報したように、3月22日の参議院総務委員会では、民進党の那谷屋正義(なたにや まさよし)議員が、この問題で高市議員を追及した。が、その後も、高市議員は総務大臣の座に居座っている。
【YouTube】民進党・那谷屋議員が高市早苗総務大臣の「還付金詐欺」疑惑を追及
◇還付金制度とマネーロンダリング
国会議員が代表を務める地元の政党支部などへ、有権者が政治献金を行った場合、税務署で所定の手続きをすれば、寄附した金額の30%が還付金として戻ってくる。たとえば1000万円を寄付すれば、その30%にあたる300万円が戻る。この制度は政治献金の支出を奨励して、有権者の政治参加を促進することを目的としているらしい。
従って、有権者がこの制度で政治献金を行い、そのうちの30%の還付金を手元に戻してもらうことには何の問題もない。
ところが高市議員と森議員は、自分の政党支部へ自分で献金を行い、還付金を受けていたのだ。寄付した金は全額が自分の政党支部の資金になる上に、寄付額の30%をさらに還付金として受け取っていたのだ。
たとえば1000万円を「寄付」すれば、1300万円に膨れあがる。差異の300万円は、税金が財源だ。書類の作成だけで金がふくらむ。これがマネーロンダリングである。労働の対価として得た資金ではない。
しかし、租税特別措置法の41条18・1は、還付金制度の例外事項として、「その寄附をした者に特別の利益が及ぶと認められるものを除く」と定められている。つまり議員がこれをやれば違法行為になる可能性があるのだ。合法とする説もあるが、それは法の解釈の問題である。
そこで筆者らは、昨年から今年にかけて高市議員と森議員を刑事告発した。その結果、地検はそれを詐欺容疑で受理したのである。
【参考記事】高市早苗総務大臣によるマネーロンダリングの手口を解説する、大臣辞任が妥当
【参考記事】森裕子議員が過去12年間で9100万円を自身の政党支部へ寄付、還付金を受けていれば2730万円の詐欺の可能性
刑事告発はしていないが、森議員や高市議員の他にも、同じ手口のマネーロンダリングを行っている議員は複数いる。つまりこの問題は、政界の水面下ではかなり横行しているのである。加計学園事件と同様に、政治家の腐敗を象徴する事件なのだ。
◇政治家の劣化
那谷屋議員が国会で、高市議員の責任を追及した後、事態はどうなったのだろうか?既に述べたように、高市議員は総務大臣に居座り続けている。それを他の議員も黙認している。
森議員のケースは、国会質問では取りあげられなかった。そして何事もなかったかのように、森議員は加計学園の事件で官僚を鋭く追及した。筆者はこの光景を見たとき、複雑な心境にかられた。不正追及の手法がみごとだったからだ。
しかし、みずからはマネーロンダリングに手を染めていた重い事実がある。2013年には、一市民に対してスラップまがいの名誉毀損裁判を起こし、500万円を請求した。結果は、完全敗訴だった。
自民党だけではなく、実は、野党議員の質も極端に低下しているのである。