元大阪高検公安部長の三井環氏が安倍昭恵氏らを刑事告発、選挙応援は国会公務員法違反、国会では福島みずほ議員がこの問題を追及
元大阪高検公安部長の三井環氏が20日、安倍昭恵氏と同氏の付職員3人に対する刑事告発状を東京地検特捜部に送付した。告発状によると、昭恵氏は2016年夏の参院選で自民党の候補者14人の選挙活動に参加した。その際、首相夫人付の政府職員を同行させていた。これが国家公務員の政治活動を禁じた国家公務員法102条1項に抵触するというのが告発の趣旨である。
昭恵氏は国家公務員ではないが、刑法60条は、「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする」と定めており、この条項が昭恵に該当する。
告発状によると昭恵氏が選挙応援した候補者は、次の通りである。全員が自民党である。
①小野田紀美(岡山)
②朝日健太郎(東京)
③島尻安伊子(沖縄)
④江島清(山口)
⑤山本順三(愛媛)
⑥自見はなこ(福岡)
⑦元栄田一郎(千葉)
⑧伊藤高江(兵庫)
⑨中原八一(新潟)
⑩岩城みつひで(福島)
⑪古庄玄知(大分)
⑫山崎力(青森)
⑬山本さちこ(三重)
⑭高野剛(山梨)
◇福島みずほ議員の国会質問
告発の発端になったのは、4月3日の参議院予算委員会で、社民党の福島みずほ議員が、この問題を指摘したことであった。福島氏が、昭恵氏の国家公務員法違反を指摘したところ、土生栄二内閣審議官は、「公務遂行補助活動のための、活動に関する連絡・調整の必要性から職員が同行している」と答えた。
これに対して、三井氏は、告発状の中で、次のように反論している。
被告発人安倍昭恵が、国家公務員を同行した当時は、かような説明はなく、かかる文書は存在しないと思われる。そもそも国家公務員法には、連絡・調整のため同行するなどという規程は存在しないし、福島みずほ議員の追及や、市民団体が告発するとの情報を察知し、意図的に犯罪行為にならないように、安倍内閣は、後付けで説明したものと思われる。
なお、告発状には昭恵氏に同行した国家公務員が、実際に昭恵氏と一緒に選挙活動をしている写真などが、証拠として提出されている。
◇司法・メディアの後進国
しかし、告発状が受理される可能性は皆無に等しい。日本における三権分立の原理は表向きだけのもので、実態は司法もマスコミも国家の権力構造の一部に組み込まれているからだ。当然、このニュースもほとんど報道されないだろう。NHKと読売はまず報じないだろう。そもそも不偏不党の報道などありえないわけだから、政権サイドのNHK・読売が報じないのは当たり前である。
この点、たとえば欧米や韓国、それに中米のグアテマラなどに比較すると、日本は後進国である。社会変革の点では、既にかつての「発展途上国」にも追い越されているのである。
【参考記事】現職大統領に対して「不逮捕特権」を奪う決定、三権分立の理想を示した中米グアテマラの最高裁判所
【国家公務委員法】
第102条 職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。
【刑法】
(共同正犯)第60条 2人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。