1. 広がる訴権の濫用、三宅雪子氏による刑事告訴には十分な根拠があったのか?

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2018年08月13日 (月曜日)

広がる訴権の濫用、三宅雪子氏による刑事告訴には十分な根拠があったのか?

裁判や告訴などの法的手段の提起をほのめかして相手を「恫喝」する行為が増えている。こうした行為を広義には、スラップと呼んでいるが、厳密には、訴権の濫用である。

ちなみに、スラップ(Strategic Lawsuit Against Public Participation)とは「公的参加に対する戦略的な訴訟」のことである。公害など公共性のある問題に取り組んでいる個人やグループなどに対して、対抗措置として提起される訴訟のことだ。

それゆえに私的な問題を理由に「嫌がらせ裁判」を起こす行為(訴権の濫用)とは区別しなければならない。

最近、急増しているのが、その「嫌がらせ裁判」である。しかも、弁護士に依頼するのではなく、本人訴訟で起こすケースが増えている。筆者は、この問題を数年前から取材しているが、提訴の根拠が希薄なものが非常に多い。権利を回復するために裁判を起こしているというよりも、裁判そのものをゲーム感覚で楽しんでいるのも特徴だ。自分が弁護士にでもなったような気分に浸っているのである。

しかも、名誉毀損裁判の場合、原告が圧倒的に有利な法理になっているので、簡易裁判所で提訴すると、ほんの数回の審理で判決が下り、原告が10万円、20万円といった「こずかい」を手にしたりする。カジノよりも、こちらの方が勝率が高い。

もちろん多忙な人は、こうした訴訟を起こす余裕などない。この種の裁判の原告になっているのは、たいてい法律家を自称する老人や、仕事がないフリーランスの人である。

筆者も、国際派の歌手で作家の八木啓代氏から、本人訴訟を起こされたことがある。結果として仕事を妨害された。

歌手・八木啓代氏が起こした裁判、黒薮・志岐が勝訴、訴権の濫用を視野に損害賠償請求の反訴へ

◇刑事事件のハードルは高い

日本は訴権が重視される国なので、恫喝裁判に対して訴権の濫用で反訴しても、裁判所が提訴自体を違法と判断することはほとんどない。筆者が調べたところでは、訴権の濫用が認められたケースは過去に3件しかない。幸福の科学事件、武富士事件、ソーラーパネル設置事件の3件だ。

これらのケースで、訴権の濫用が認められたのは、提訴の根拠が不十分だったからである。あるいは勝訴できる見込みがまったくないのに、提訴に及んでいたからである。

三宅雪子氏が5人の元支援者を刑事告訴した事件がネット上で話題になっているが、筆者は、この事件は重大な問題を孕んでいると考えている。5人(匿名の人を含めると7人)の起訴を求めるだけの十分な根拠があったのかどうかという点である。

刑事事件の受理・起訴のハードルは極めて高い。常に冤罪の恐れがあるからだ。当然、弁護士も告訴には慎重だ。冤罪事件を起こせば、懲戒請求を受けて、自分が失職するリスクもあるからだろう。

三宅雪子氏は訴権の濫用が広がる時代の空気の中で、今回の刑事告訴に及んだようだ。この事件で、落合洋司弁護士が、本当に三宅氏の代理人を務めているのか、筆者は強い疑いを持っている。