1. 歌手・八木啓代氏が起こした裁判、黒薮・志岐が勝訴、訴権の濫用を視野に損害賠償請求の反訴へ

「森裕子VS志岐武彦」の裁判に関連する記事

2016年05月18日 (水曜日)

歌手・八木啓代氏が起こした裁判、黒薮・志岐が勝訴、訴権の濫用を視野に損害賠償請求の反訴へ

歌手の八木啓代氏が、筆者(黒薮)と元旭化成の役員で市民運動家の志岐武彦氏に対して、名誉を毀損されたとして200万円のお金を要求した裁判の判決が、17日、東京地裁であり、青木晋裁判長は八木氏の訴えを棄却した。

■判決全文

この裁判は、筆者がサクラフィナンシャル・ニュースに執筆した記事、「志岐武彦VS八木啓代の名誉毀損裁判、背景に疑惑の小沢一郎検審をめぐる見解の違い」と題する記事が、八木氏の名誉を毀損しているとして、八木氏が起こしたものである。

■「志岐武彦VS八木啓代の名誉毀損裁判、背景に疑惑の小沢一郎検審をめぐる見解の違い」

誰が読んでもこの記事が八木氏の名誉を毀損していないことは明らかで、数多くの疑問の声があがっていた。たとえば記事中に引用した八木氏の次のツィート。志岐氏を罵倒したものであるが・・・。

「ちなみに、どうせまともな人は信じないので改めて書く必要もないと思いますが、志岐氏が昨日付のブログに書いていることは、すべて妄想です。かなり症状が進んでいるなと思います。早い内に病院教会に行かれる方がよいと思います」

この記事の解説として、筆者は次のように記した。

小沢検審が「架空」であったと推論するだけの十分な根拠が明らかになっているうえに、八木氏の表現に(精神)病院か教会に行けといった侮辱的な表現もあり、裁判所の判断が注目される。

引用記述にある「病院」という言葉の前に「(精神)」と補足したのが、名誉毀損にあたるというレベルの訴えだった。

■訴状の全文PDF

◇「訴権の濫用」とは

読者は「訴権の濫用」という言葉をご存じだろうか。憲法で裁判を起こす権利は認められているが、それは提訴を濫用してもいいことにはならない。過去に「訴権の濫用」が適用されたのは、たとえばサラ金の武富士が 弘中惇一郎弁護士を筆頭にフリージャーナリストらを訴えた武富士裁判がある。

筆者が被告にされた著作権裁判(原告・読売の法務室長・江崎徹志 被告・黒薮哲哉)では、「訴権の濫用」という明確な認定はされなかったが、読売側が争点になった「著作物」の名義を偽り、そもそも提訴権がないのに提訴していたことが、裁判の中で発覚し、読売が敗訴している。

争点の著作物について判断する以前に、門前払いのかたちで、読売が敗訴したのである。

「訴権の濫用」の判断基準には、次の判例がある。

(最高裁判所第三小法廷 昭和63年1月26日)

訴えの提起は、提訴者が当該訴訟において主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、同人がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提起したなど、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合に限り、相手方に対する違法な行為となる。

この判例に則して、筆者の著作権裁判を検証すると完全に一致している。具体的には、

読売(江崎)が自分の著作物だと主張した文書(黒薮に対する催告書)は、名義が「江崎徹志」となっていたにもかかわらず、実際の作成者は、読売の代理人弁護士・喜田村洋一(自由人権協会代表理事)だった高い可能性が判決で認定された。

※著作者人格権は他人に譲渡できない。

「①」の事実を前提にすると、読売はそもそも著作権裁判を提訴する資格がなかった。黒薮に対する催告書の作成者が江崎氏本人ではないからだ。

代理人弁護士の喜田村氏は、当然「②」の事実を知っていた。

つまり読売と喜田村氏は、「当該訴訟において主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、同人がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提起した」ことになる。

筆者は喜田村弁護士に対して懲戒請求を行ったが、日弁連は何の処分も下さなかった。しかし、日弁連は弁護士を守る組織であるから、やむを得ない側面もある。

また、筆者は読売に対して損害賠償の裁判を起こしたが、訴えはなぜか棄却された。この裁判については、今後も検証を続ける必要がある。

参考までに、喜田村氏らが「著作物」の名義人を偽っていた可能性を認定した知財高裁判決の認定部分と、判決の全文を紹介しよう。

■知財高裁判決全文PDF

■知財高裁判決の「名義偽り」の認定部分

◇メディア黒書で、裁判資料の公開へ

今回、八木氏が起こした裁判は、本人訴訟である。かりに弁護士が付いてこのような裁判を起こしたとすれば、弁護士も被告にするが、今回は本人訴訟なので、八木氏に「訴権の濫用」の認識がなかった可能性もある。

しかし、1年を超える裁判により、予定していた取材が中止に追い込まれるなど実質的な被害が発生しているわけだから、賠償を求めるのは当然である。八木氏に対して日当(裁判所への出頭日)は請求できるが、それで損害を相殺できるわけではない。

提訴の次期については、この裁判の検証が終わってからということになりそうだ。まず、メディア黒書で、裁判資料などを公開していく。時候までには、提訴する予定。もちろん八木氏にも、反論の機会は提供する。

◆参考記事

■喜田村洋一弁護士が作成したとされる催告書に見る訴権の濫用、読売・江崎法務室長による著作権裁判8周年①

■報道・出版活動に大きな支障をきたしていた可能性も、読売・江崎法務室長による著作権裁判8周年②