1. フリーランス記者3名が日弁連に申し入れ、スラップ問題を研究するためのチームの設置を要望

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2016年07月17日 (日曜日)

フリーランス記者3名が日弁連に申し入れ、スラップ問題を研究するためのチームの設置を要望

フリーランスで報道活動を行っている寺澤有、林克明、それに筆者(黒薮)の3名は、7月5日、日本弁護士連合会に対して、スラップ対策の研究チームを設置するように、日弁連に申し入れた。(動画は、その後、司法記者クラブで行った記者会見)

スラップとは、「公共性のある問題をテーマとしたジャーナリズム活動や住民運動を抑え込むために、言論抑圧を一次的な目的として、企業や政府など優越的な地位にいる者が、フリージャーナリストや住民運動家などを相手に提起する高額訴訟」のことである。

申し入れの内容は次の通りである。

1、スラップとは、公共性のある問題をテーマとしたジャーナリズム活動や住民運動を押さえ込むために、言論抑圧を一次的な目的として、企業や政府など優越的な地位にいる者が、フリージャーナリストや住民運動家などを相手に提起する高額訴訟を意味します。日本では、消費者金融の武富士がフリーランスライターらに対して億単位の賠償を求めた訴訟などがスラップの典型例としてあります。
 もっとも日本の司法界には、「スラップ」の概念は希薄で、わたしたちが武富士裁判をスラップと解釈しているのは、スラップ防止法が存在する米国などの例を参考にしたものに過ぎませんが、いずれにしても、このところ多発している訴権の濫用が、ジャーナリズムによる権力者批判を萎縮させていることは紛れもない事実です。

2、スラップの大半は名誉毀損を理由とした高額訴訟の形を取っています。ところが日本の名誉毀損裁判の法理は、原告に圧倒的に有利にできているために、訴えられた側が敗訴する可能性が極めて高く、敗訴した場合、スラップの目的が達成されてしまう状況があります。わたしたちは、スラップと表裏一体関係にある名誉毀損訴訟の法理を改めない限り、スラップは防止できないのではないかと考えています。貴連合会におかれましては、スラップと名誉毀損を表裏一体関係にある問題として、対策を考えていただくことを要望いたします。

3、スラップにより被告のフリージャーナリストが被る損害は莫大なものがあります。裁判を提起された時点で弁護士を選任して、着手金を支払わなければなりません。着手金は訴状に明記された請求額に準じて決定する基本原則があるので、高額訴訟を提起された時点で、被告は大変な経済的負担を強いられます。訴訟を仕掛けた側は、提訴の段階ですでに目的を達成していることになります。
 被告は裁判に伴う調査活動などに多くの時間を割くことを強いられます。当然、生活の基盤としている本業は計り知れない影響を受けます。

4、本来、公的なテーマは、自由闊達に議論するのが民主主義の原則です。ところがスラップが増えてくると、被告となったフリージャーナリストまでもが企業や政府に対する批判的言論を自粛するようになります。ひいては、言論・表現の自由が形骸的なものに変質しかねません。それは日本社会にとっては、大きな損失にほかなりません。

5、以上の理由により、わたしたちは司法界の一翼を担う貴協会に対して、一刻も早く、スラップ問題を研究するためのチームを設置していただくように要望します。

◇目的は他人の言論封殺

代表的なスラップ訴訟としては、サラ金の武富士がフリージャーナリストや弁護士に対して億単位のお金を要求した事件である。

筆者も、スラップとは認定されなかったものの、読売新聞の代理人弁護士である喜田村洋一・自由人権協会代表理事(人権擁護団体)らにより、奇妙な著作権裁判を提起されたことがある。

参考記事①:喜田村洋一弁護士が作成したとされる催告書に見る訴権の濫用、読売・江崎法務室長による著作権裁判8周年①

 参考記事②:報道・出版活動に大きな支障をきたしていた可能性も、読売・江崎法務室長による著作権裁判8周年②