1. ABC部数検証

ABC部数検証に関連する記事

2022年06月27日 (月曜日)

「押し紙」裁判に変化の兆し、「押し紙」の新定義と新聞社による部数ロックの暴露

新聞のCMに使われる場面のひとつに、新聞を満載したバイクが明け方の街へ繰り出すイメージがある。透明な空気。笑顔。闇がとけると、動き始めた街が浮かび上がってくる。しかし、記者の視点を持って現場に足を運ぶと、新聞販売店に積み上げられた「押し紙」が、日本の権力構造の闇として輪郭を現わしてくる。だれが注意しても、疑問を呈しても、新聞社はそれを黙殺し、「知らむ、ぞんぜぬ」で押し通してきた。時には司法の土俵を使って口封じを断行し、同じ夜と昼を延々と繰り返してきたのである。

が、今この社会問題を照らすための新しい視点が生まれ始めている。その先駆けとなったのは、2020年5月に佐賀地裁が下した判決である。この判決は、佐賀新聞社による「押し紙」を不法行為として断罪しただけではく、独禁法違反を認定したのである。その後、全国各地で元販売店主らが次々と「押し紙」裁判を起こすようになっている。

現在、わたしは3件の「押し紙」裁判を取材している。広島県の元読売新聞の店主が起こした裁判(大阪地裁)、長崎県の読売新聞の元店主が起こした裁判(福岡地裁)、それに長崎県の西日本新聞の元店主が起こした裁判である。取材はしていないが、埼玉県の元読売新聞の店主も裁判(東京地裁)を起こしている。

これらの裁判で浮上している2つの着目点を紹介しよう。それは、「押し紙」の定義の進化と、「定数主義」を柱とした新聞社の販売政策の暴露である。

続きを読む »

2022年06月02日 (木曜日)

夕刊廃止へカウントダウン、歯止めがかからない新聞の凋落、2020年4月度のABC部数

新聞の部数減に歯止めがかからない。新聞業界は急坂を転げ落ちている。

2022年4月度のABC部数が明らかになった。それによると、朝日新聞は、1年間で約45万部を失った。読売新聞は、1年間で約30万部を減らした。産経新聞と日経新聞も減部数が顕著で、それぞれ約18万部、12万部を失った。

中央紙のABC部数は次の通りである。

続きを読む »

2022年05月24日 (火曜日)

ABC部数のグレーゾーン、朝日新聞倉敷販売(株)の事件にみる新聞発行部数のデタラメ 

産経新聞社が新聞販売店に搬入する産経新聞の部数が、今年3月に100万部を下回った。1990年代には、約200万部を誇っていたから、当時と比較すると半減したことになる。かつて「読売1000万部」、朝日「800万部」、毎日「400万部」、産経「200万部」などと言われたが、各紙とも大幅に部数を減らしている。新聞の凋落傾向に歯止めはかかっていない。

コンビニなどで販売される即売紙を含む新聞の総発行部数は、3月の時点で次のようになっている。()内は、前年同月差である。

朝日新聞:4,315,001(-440,805)
毎日新聞:1,950,836(-58,720)
読売新聞:6,873,837(-281,146)
日経新聞:1,731,974(-148,367)
産経新聞:1,038,717(-177,871)

旧ソ連のプラウダが消えて後、新聞の世界ランキングの1位と2位は、読売新聞と朝日新聞が占めてきた。しかし、現在の世界ラングを見ると、USAツデーやニューヨークタイムスがトップ争いを演じている。これはひとつにはコロナウィルスの感染拡大を背景に、電子版が台頭したことに加え、国際語としての英語の優位性が、それに拍車をかけた結果にほかならない。英語の電子媒体は、すでに地球規模の市場を獲得している。

その結果、「紙」と「部数」の呪縛を排除できない新聞社は没落の一途を辿っている。公表部数そのものが全くのデタラメではないかという評価が広がっている。

◆新聞セールス団が新聞購読料を負担

【続きはデジタル鹿砦社通信】

続きを読む »

YC大門駅前の「押し紙」裁判、請求額を約1億2486万円に増額、根拠は店主が電送していた「販売店経営内容調査表」

YC大門駅前(広島県福山市)の元店主・濱中勇志さんが読売新聞大阪本社を相手に起こした「押し紙」裁判の口頭弁論が、5月18日、ウェブ会議のかたちで行われ、原告弁護団(江上武幸弁護士ら)が、従来の4120万円の請求額を1億2486万円に引きあげる申し立てを行った。同弁護団の「請求の拡張申立書」によると、増額の背景に、当初、請求対象にしていた時期とは別の時期に「押し紙」が存在したことを裏付ける新資料を入手した事情がある。

当初、濱中さんは2020年8月に、4120万円の損害賠償を求める「押し紙」裁判を起こした。この時点での請求の根拠は、2017年1月から2018年6月(廃業時)までの約1年半における「押し紙」の損害額と、それに付随する弁護士費用だった。請求の対象期間を1年半に限定していたのは、それ以前の時期については、「押し紙」の存在を裏付ける有力な証拠が乏しかったからである。

ところがその後、開業当初からの「押し紙」の証拠の存在が明らかになった。そこで濱中さんの弁護団は、開業時の2012年まで遡って、損害額などを再計算した。

その際、提訴当時の請求額も微修正した。

続きを読む »

2022年05月14日 (土曜日)

広島県府中市における読売新聞のABC部数、複数年にわたり地域全体をロック、販売会社が残紙の搬入先に

新聞社のグループ企業のひとつである販売会社が残紙の温床になっているという話は、昔からあった。わたしも、「販売会社が残紙の搬入先になっている」という話をよく耳にしてきた。

残紙の中身が「押し紙」か「積み紙」かにかかわりなく、新聞社と販売会社の商取引は、グループ内の物流になり、グループ企業全体としては残紙の被害を受けない構図がある。その結果、販売会社を対象にして、ABC部数を大幅に水増しする販売政策が横行する。グループとしては損害を被っていないから、内部告発者もなかなか現れない。

改めていうまでもなく、ABC部数を水増しする目的は、紙面広告の媒体価値を高めて、広告収入を増やすことである。また、それにより折込広告の定数も増やすことができる。

次に紹介する表は、広島県府中市における読売新聞のABC部数の変遷である。期間は2011年10月から2020年10月である。

 

続きを読む »

2022年05月13日 (金曜日)

倉敷市における朝日新聞のABC部数、もともとデタラメだった可能性、新聞購読契約書の大量偽造事件②

契約書を偽造して発行部数を水増し、それをABC部数として公表していた事件の続報である。初出は次の記事である。

朝日新聞倉敷販売(株)の偽造契約書事件、新聞セールス団に「押し紙」か?ABC部数のかさ上げの新手口①

裁判はセールス団の敗訴で、損害賠償は認められなかったが、わたしが着目したのは、むしろABC部数を水増しする手口である。朝日新聞倉敷販売(株)に非があるにせよ、セールス団に非があるにせよ、ABC部数が大幅に水増しされていた事実は重大だ。

わたしは内部資料の裏付けを取るために、倉敷販売が担当していた倉敷市における朝日新聞のABC部数の変化を検証した。期間は約10年。2011年10月から2021年10月である。次の表は、その詳細だ。

続きを読む »

2022年05月10日 (火曜日)

産経新聞、はじめて100万部を下回る、3月度のABC部数

2020年3月度のABC部数が明らかになった。それによると産経新聞の販売店を対象としたABC部数が、はじめて100万部を下回った。同社の販売店部数は、99万7197部となった。コンビニ部数などを含む総部数は、約103万である。この1年で約18万部を減らしている。減部数の割合も高い。

朝日新聞は約432万部、読売新聞は約687万部となった。

詳細は次の通りである。

続きを読む »

2022年04月27日 (水曜日)

朝日新聞倉敷販売(株)の偽造契約書事件、新聞セールス団に「押し紙」か?ABC部数のかさ上げの新手口①

朝日新聞の販売会社である朝日新聞倉敷販売(株)〈2021年12月に閉鎖〉で、ABC部数のかさ上げ工作が行われていたことが、裁判資料(平成26年ワ第418号、既に終了)などで分かった。手口は、偽造の新聞購読契約書を大量に作成して、架空読者の新聞購読料を新聞セールス団が支払うというものである。架空読者の購読料を払うことで、「読者が実在するこを」を装い、ABC部数をかさ上げしていたのである。

続きを読む »

2022年04月16日 (土曜日)

2022年度2月度のABC部数、朝日は年間で44万部減、読売は32万部減

2022年2月度のABC部数が明らかになった。それによると朝日は年間で約44万部の減部数、読売は約32万部の減部数となった。さらに産経は約18万部の減部数である。

ABC部数の減少に歯止めはかかっていない。詳細は次の通りである。

続きを読む »

2022年02月26日 (土曜日)

新しい方法論で「押し紙」問題を解析、兵庫県をモデルとしたABC部数の解析、朝日・読売など全6紙、地区単位の部数増減管理が多地区で、独禁法違反の疑惑

このところわたしが提唱している「押し紙」問題検証の方法論として、ABC部数の新しい解析方法がある。兵庫県全域をモデル地区として、ABC部数の変化を時系列に、しかも、新聞社(朝日、読売、毎日、産経、日経、神戸)ごとに確認してみると、ABC部数が地域単位でロックされている自治体が多数あることが判明した。地区単位で部数増減の管理が行われている疑惑が浮上した。

独禁法の新聞特殊指定に違反している疑惑がある。公正取引委員会は、少なくとも調査すべきだろう。

たとえば神戸市灘区における読売新聞のABC部数は、次のようになっている。

2017年4月 : 11,368
2017年10月: 11,368
2018年4月 : 11,368
2018年10月: 11,368
2019年4月 : 11,368

2年半にわたってABC部数は変化していない。新聞の購読者が特定の広域自治体で、2年半に渡って一部の変化もしないことなど、実際にはありえない。これは新聞社が販売店に搬入する新聞の「注文部数」を決めていることが原因である可能性(ノルマ部数、押し紙)がある。あるいは、販売店が自主的に購入する新聞部数を定数化している可能性(積み紙)もある。どちらの側に非があるにしても、これは広告主にとっては見過ごせない問題である。

本稿は、デジタル鹿砦社通信に連載した兵庫県全域をモデルケースとした新しい方法論の下で行ったABC検証の結果の報告である。以下、読者は以下に掲載した調査結果を確認する前に、次の【注意】を一読願いたい。表を理解する上で不可欠だ。

【注意】以下の表は、ABC部数を掲載している『新聞発行社レポート』の数字を、そのままエクセルに入力したものではない。数字を表示する順序を変えたのがこれらの表の大きな特徴だ。

『新聞発行社レポート』は、年に2回、4月と10月に区市郡別のABC部数を、新聞社別に公表する。しかし、これでは時系列の部数変化をひとつの表で確認することができない。確認するためには、『新聞発行社レポート』の号をまたいでデータを時系列に並べ変える必要がある。それにより特定の自治体における、新聞各社のABC部数がロックされているか否か、ロックされているとすれば、その具体的な部数や期間はどうなっているのかを確認できる。同一の新聞社におけるABC部数の変化を、地方自治体をベースにして長期に渡って追跡したのが以下の表の特徴だ。

 

続きを読む »

2022年02月22日 (火曜日)

新聞衰退論を考える ── 新聞人の知的能力に疑問、新聞社のビジネスモデルの闇、ABC部数検証・兵庫県〈3〉

今回の記事は、兵庫県全域を対象として新聞のABC部数の欺瞞(ぎまん)を考えるシリーズの3回目である。ABC部数の中に残紙(広義の「押し紙」、あるいは「積み紙」)が含まれているために、新聞研究者が新聞業界の実態を分析したり、広告主がPR戦略を練る上で、客観的なデーターとしての使用価値がまったくないことなどを紹介してきた。連載の1回目では朝日新聞と読売新聞を、2回目では毎日新聞と産経新聞を対象に、こうした側面を検証した。

今回は、日経新聞と神戸新聞を対象にABC部数を検証する。テーマは、経済紙や地方紙のABC部数にも残紙は含まれているのだろうかという点である。それを確認した上で新聞部数のロック現象の本質を考える。結論を先に言えば、それは新聞社の販売政策なのである。あるいは新聞のビジネスモデル。

日経新聞と神戸新聞のABC部数変化を示す表を紹介する前に、筆者は読者に対して、必ず次の「注意」に目を通すようにお願いしたい。表の見方を正しく理解することがその目的だ。

【注意】この連載で紹介してきた表は、ABC部数を掲載している『新聞発行社レポート』の数字を、そのまま表に移したものではない。『新聞発行社レポート』の表をエクセルにしたものではない。数字を並べる順序を変えたのが大きな特徴だ。これは筆者が考えたABC部数の新しい解析方法にほかならない。

『新聞発行社レポート』は、年に2回、4月と10月に区市郡別のABC部数を、新聞社別に公表する。しかし、これでは時系列の部数変化をひとつの表で確認することができない。時系列の部数増減を確認するためには、『新聞発行社レポート』の号をまたいでデータを時系列に並べ変える必要がある。それにより特定の自治体における、新聞各社のABC部数がロックされているか否か、ロックされているとすれば、その具体的な中身はどうなっているのかを確認できる。同一の新聞社におけるABC部数の変化を長期に渡って追跡したのが表の特徴だ。

◆日経新聞のABC部数変化(2017年~2021年)

【続きはデジタル鹿砦社通信】

続きを読む »

2022年01月08日 (土曜日)

「残紙」世界一の都市、大阪府堺市、読売・朝日・毎日・産経のABC部数にみる異常、複数年に渡って1部の増減もなし、新聞の注文方法に独禁法違反の疑惑

ABC部数は、日本ABC協会が定期的に公表する出版物の公称部数である。広告営業や折込定数(販売店に搬入する折込広告の部数)を決める際に使われる。従ってABC部数は、読者数を反映したものでなければ意味がない。

たとえば〇〇新聞社のABC部数が50万部で、実際の読者数が30万部では、両者の間に20万部の差異があり、広告主を欺く温床になる。紙面広告の媒体価値をごまかしたり、折込定数の設定を攪乱する原因になる。

このところABC部数と読者数に著しい乖離がある疑惑が浮上している。その推測の根拠となるのが、ABC部数が複数年に渡って1部の増減もない自治体の存在である。つまりABC部数がロックされた状態になっているのだ。常識的に考えて、広域にわたる地区で、新聞の読者数が何年にも渡ってまったく同じという状態はありえない。まして現代は新聞離れの時代である。

筆者の調査では、東京都、大阪府、広島県、香川県、長崎県などでこの現象が確認できた。調査はまだ始まったばかりなので、今後、調査が進むとさらにロック現象が観察される自治体が増える可能性が高い。

続きを読む »

東京23区を対象に新聞部数のノルマ制度を調査、際立つ毎日新聞の闇、全国では年間1400億円の「押し紙」資金が暗躍、汚点がメディアコントロールの温床に

東京23区を対象に新聞部数のノルマ制度を調査、際立つ毎日新聞の闇、全国では年間1400億円の「押し紙」資金が暗躍、汚点がメディアコントロールの温床に

新聞部数のノルマ制度を東京23区を対象に調査した。その結果、「押し紙」政策の存在が裏付けられた。

調査は、各新聞社を単位として、各区ごとのABC部数(2016年~2020年の期間)をエクセルに入力し、ABC部数の変化を時系列に調べる内容だ。部数に1部の増減もなくABC部数が固定されている箇所は、新聞社が販売店に対してノルマを課した足跡である可能性が高い。

実例で調査方法を説明しよう。たとえば次に示すのは、東京都荒川区における2016年10月から、2018年4月までの朝日新聞のABC部数である。2年の期間があるにもかかわらず、1部の増減も観察できない。

2016年10月:8549部
2017年4月:8549部
2017年10月:8549部
2018年4月:8549部

グーグルマップによると、2021年10月の時点で荒川区にはASA(朝日新聞販売店)が4店ある。これら4店に対して、朝日新聞社が搬入した部数合計が、2年間に渡って1部の増減もなかったことが上記のデータから裏付けられる。つまり朝日新聞は、新聞購読者の増減とはかかわりなく同じ部数を搬入したのである。荒川区における朝日新聞の購読者数が、2年間、まったく増減しないことなど実際にはあり得ないが。

4店のうち、たとえ1店でも部数の増減があれば、上記のような数字にはならない。販売店サイドが2年間、自主的に同じ部数を注文し続けた可能性もあるが、たとえそうであっても、朝日新聞社サイドがその異常を認識できなかったはずがない。

このような部数のロックは、販売店に対して部数のノルマを課していた高い可能性を示唆している。新聞社が販売店に対して特定の部数を買い取らせる行為は、独禁法の新聞特殊指定で禁止されている。【続きは「デジタル鹿砦社通信」】

続きを読む »