広島県府中市における読売新聞のABC部数、複数年にわたり地域全体をロック、販売会社が残紙の搬入先に
新聞社のグループ企業のひとつである販売会社が残紙の温床になっているという話は、昔からあった。わたしも、「販売会社が残紙の搬入先になっている」という話をよく耳にしてきた。
残紙の中身が「押し紙」か「積み紙」かにかかわりなく、新聞社と販売会社の商取引は、グループ内の物流になり、グループ企業全体としては残紙の被害を受けない構図がある。その結果、販売会社を対象にして、ABC部数を大幅に水増しする販売政策が横行する。グループとしては損害を被っていないから、内部告発者もなかなか現れない。
改めていうまでもなく、ABC部数を水増しする目的は、紙面広告の媒体価値を高めて、広告収入を増やすことである。また、それにより折込広告の定数も増やすことができる。
次に紹介する表は、広島県府中市における読売新聞のABC部数の変遷である。期間は2011年10月から2020年10月である。
表中の緑が示す期間は5977部にロック(固定)され、オレンジが示す期間は5697部にロックされている。しかも、ロックの期間は、複数年に渡っている。
しかし、福山市に住む読売新聞の読者数が複数年にわたって1人の増減もないことはありえない。つまり読売の購読を止めた読者の部数が、残紙になっている可能性が高い。
福山市を担当していたのは、読売グループに属する読売企画開発(販売会社)が経営する販売店だった。同社の経営が始まった年度は、現段階では確認していないが、つい最近まで経営母体だった。
※読売企画開発は、現在は業務を終了している。
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13日付けのメディア黒書で、朝日新聞倉敷販売(株)で新聞購読契約を大量に偽造してABC部数を水増ししていた手口を紹介したが、府中市の読売の例でも明らかなように、新聞社の販売会社には、グレーゾーンが存在するのである。
新聞の実配部数とABC部数が乖離していることで、被害を受けるのは広告主である。PR戦略を誤ることになりかねない。
ちなみに残紙や折込広告の水増しなど、新聞社経営の汚点は、公権力の側から見れば、メディアコントロールの口実になる。新聞がジャーナリズム性を発揮して危険な存在になった時は、残紙問題に介入して、新聞社経営に打撃を与えることができるからだ。
残紙問題に介入されると新聞社は、販売収入を大幅に失いかねない。場合によっては、30%、あるいは40%の水準で減らすことにもなりかねない。
このようなビジネスモデルの下で新聞ジャーナリズムは、「適度な批判」はしても、それ以上は踏み込めない。