1. 読売ジャイアンツの野球賭博、新聞協会会長の白石興二郎氏(読売)は辞任を

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2015年10月22日 (木曜日)

読売ジャイアンツの野球賭博、新聞協会会長の白石興二郎氏(読売)は辞任を

次に示すのは、野球賭博が発覚した読売ジャイアンツの首脳陣である。

取締役最高顧問:渡辺恒雄
取締役オーナー:白石興二郎
代表取締役会長:桃井恒和
代表取締役社長:久保博

この4名は新聞人でもある。

改めていうまでもなく、渡辺恒雄氏は新聞業界の重鎮である。白石興二郎氏は、日本新聞協会の現会長である。桃井恒和氏は、読売新聞社の社会部長などの経歴がある。久保博氏もやはり読売新聞社の出身である。

◇特異な日本の新聞業界

プロ野球は代表的な興行のひとつである。その興行を事業とする組織の幹部を新聞人が担っている事実を、読者は奇妙に感じないだろうか? しかも、読売ジャイアンツの経営にかかわる人事は、聞くところによると、出世コースらしい。

わたしが知る限りでは、新聞業と興行が合体した例は、日本を除いてほかにはない。両者は異質なものであるからだ。

それにジャーナリスト(広義の新聞記者)として仕事をしてきた者が、興行の世界へ投げ込まれるのは、非常な屈辱だと思うのだが、これに関しても当事者からの嘆きの声を耳にしたことはまったくない。記者として真実を追及した者であればあるほど、屈辱的な人事に感じられると思うのだが。

ちなみに新聞社の主筆が一国の首相と会食を重ね、新聞記者もそれを黙認しているという話も、海外ではまったく聞いたことがない。

◇内部告発とは無縁の新聞記者

しかし、読売新聞社と読売ジャイアンツの関係は、特異な日本の新聞業界を象徴する現象のひとつにすぎない。わたしが最初に日本の新聞業界に違和感を持ったのは、東京に移住した1990年だった。80年代は大半を海外で過ごしたので、日本の慣習がよく分からないままの移住だった。

住居をきめてすぐに訪ねてきたのが、毎日新聞の新聞勧誘員だった。戸口でいきなり洗剤4箱を差し出してきたので、わたしは驚いて身を引いた。新聞を購読してもらいたいという。断ると洗剤だけでもいいので受け取ってくれという。そこで「ありがとう」と言って洗剤を受け取り奥に入ると、玄関から「契約をしてください」という声が聞こえてきた。

「契約はしない」

「なら、洗剤を返してくれ」

「受け取ってくれと言ったではないか」

こんなやり取りの後、わたしは勧誘員に洗剤を返した。
次にやってきたのは、人相の悪い読売新聞の勧誘員だった。こちらは、自分はヤクザの幹部と懇意にしていると自己紹介してから、

「今、新聞契約をすると、○○組の者に、煩わされなくてすむぞ!」

と、言った。

この勧誘員も追い返したが、この時、わたしは日本の新聞ジャーナリズムの正体とは何かを本気で疑った。新聞購読は、ジャーナリズムの質を読者が評価して、決めるものだという考えがあったからだ。わたしは、日本の新聞記者は、みずからが制作した新聞の販売方法に対して恥ずかしいという感情を抱かないのかと疑った。

その後、わたしは偶然に「押し紙」問題を取材することになるのだが、現在まで一貫して感じているのは、新聞業界の足元にはジャーナリズムの根本にかかわる大変な問題が山積している異常さである。それにもかかわらず、同じ「敷地内」にいる記者がまったく内部告発をしない異常さである。長い目でみれは、これは癌を放置するに等しい選択肢なのだが。

重大な問題の内部告発を控えていれば、みずからが制作している新聞の信頼性そのものに疑いの視線が向けられるからだ。読者の質が高ければ高いほど、新聞の情報に疑いの目を向ける。

◇野球賭博は氷山の一角

今回の野球賭博の発覚は、見方によれば闇の中からたまたま頭をだした不祥事のひとつに過ぎない。新聞業界には、改めなければならない問題が山積している。

今回の賭博問題で、白石興二郎氏は、日本新聞協会の会長を辞任すべきだろう。