1. DHC吉田会長によるスラップの認定を求める裁判が始まる、澤藤統一郎弁護士が提訴

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2017年12月19日 (火曜日)

DHC吉田会長によるスラップの認定を求める裁判が始まる、澤藤統一郎弁護士が提訴

「スラップ」とは、広義の恫喝裁判である。厳密な定義は、さしあたりスラップ情報センターが公にしている次の定義が参考になりそうだ。

『Strategic Lawsuit Against Public Participation』の略語。頭文字を取って『スラップ』と言います。公の場で発言したり、訴訟を起こしたり、あるいは政府・自治体の対応を求めて行動を起こした権力を持たない比較弱者に対して、企業や政府など比較優者が恫喝、発言封じ、場合によってはいじめることだけを目的に起こす加罰的あるいは報復的な訴訟。

日本の司法界には、スラップの概念はないが、それに比較的類似したものとして訴権の濫用がある。が、訴権の濫用は、過去に3ケースしか認められたことがない。日本では、憲法が保障する提訴権の方を優先するからだ。

12月15日、東京地裁でスラップの認定を求めるある訴訟が始まった。訴えを起こしたのは、澤藤統一郎弁護士である。訴えられたのは、大手化粧品メーカ・DHCと、同社の吉田嘉明会長である。

◇渡辺喜美衆議院議員と8億円

この裁判の発端は2014年春までさかのぼる。読者の記憶の片隅に残っているであろうあの滑稽な事件である。渡辺喜美衆議院議員(当時、みんなの党代表)が、DHCの吉田会長から8億円を借りていながら、その一部を返済しなかったために、吉田会長が週刊新潮にたれ込み、両者の癒着ぶりがメディアで公になった事件である。8億円の貸し付けの背景には、吉田会長が規制緩和策の推進を切望していた事情があったと推測される。

この事件について、紙メディアやネットメディアがさまざまな論評を行った。個人のブログでも、論評が展開された。その大半は、吉田会長に対する批判だった。

これに対して吉田氏は、ほどんど同時に10件の名誉毀損裁判を提起したのである。澤藤弁護士も訴えられた。10人のうちの1人だった。他に実業家の宋文洲氏らが法廷に立たされた。

しかし、澤藤弁護士のケースにはある特徴があった。提訴時には、請求額が2000万円だったものが、その後、段階的に6000万円まで増額されたことである。原因は、提訴後も澤藤弁護士がひるまずに自分のブログで吉田批判を展開したことである。吉田会長は、言論に対して、金銭請求の増額で対抗したのである。

判決(東京地裁)は、2015年9月2日に下された。吉田氏側の敗訴だった。高裁でも、最高裁でも吉田氏の訴えは棄却された。他の9件の裁判でも、ほとんどが吉田氏の敗訴である。

澤藤弁護士は判決の確定を受けて、吉田氏の起こした裁判はスラップに該当するとして、600万円の損害賠償請求を内容証明郵便という形式で行った。吉田氏は請求を拒否。そして2017年9月に、自分に600万円の賠償責任がないことの確認を求める裁判を起こしたのである。法律用語でいえば、「債務不存在確認請求事件」である。

そこで澤藤弁護士は、「反訴」という形式で、吉田氏の側に650万円の支払いを求める裁判を起こしたのだ。スラップを認定させるための裁判である。既に述べたように提訴する権利が優先される日本では、勝訴のハードルの高い裁判である。しかし、12月15日の口頭弁論の後で開かれた集会で、藤森弁護士は、勝訴の自信を示した。

反訴状(光前幸一弁護士作成)と、澤藤弁護士の意見陳述は、澤藤弁護士のブログに全文が掲載されているので、同ブログへリンクを張っておこう。

「DHCスラップ訴訟」を許さない・第114弾

◇喜田村弁護士の主張を永久保存

スラップを止める方法は、これから考案する必要があるだろう。スラップ訴訟を起こした側が、メーカーの場合、不買運動もひとつの方法ではないか。

ちなみに筆者も、スラップの認定を求める裁判を超したことがある。2008年から2009年にかけて、読売新聞社が筆者に3件の裁判を起こし、総額で約8000万円を請求してきたのに対して、これら3件の提訴が「一連一体」の言論弾圧に該当するとする観点から、読売に5500万円の支払いも求める裁判を起こした。筆者の敗訴だったが、裁判の検証は現在も続けている。

2017年の12月は、読売の江崎徹志法務室長と、喜田村洋一自由人権協会代表理事による著作権裁判の提訴9周年にあたる。近々にこれに関する記事を掲載する。喜田村弁護士の書面も公開予定だ。筆者が勝訴した裁判で、喜田村弁護士が何を主張し、何を企んだのか、すべて記録として永久保存している。