1. ロシア革命から100年、新自由主義の世界で社会主義を再考する

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2017年11月10日 (金曜日)

ロシア革命から100年、新自由主義の世界で社会主義を再考する

ロシア革命から100年が過ぎた。11月7日の革命記念日には、世界各国で記念行事が行われた。本文の上に掲載した写真は、喜びを表現するベネズエラの人々の姿だ。Telsulのツイッターで紹介されたものである。

日本のメディアも、さすがにこの世界史上の大事件をテーマとした記事を掲載している。日本共産党の志位委員長は、時事通信の記事の中で、革命後のソ連共産党の方針を批判しながらも、

「民族自決権の旗を初めて無条件に掲げて実行した。暮らしと経済という点では、社会権という問題を初めて掲げた。社会保障という言葉が初めて出てきたのもここからだ」

と、ロシア革命そのものには、高い評価を与えている。

志位委員長が指摘しているように、社会保障の概念が生まれた背景には、社会主義思想の広がりがあった。資本主義の路線を走る国々が、社会主義のプロパガンダに対抗するために、福祉国家をめざす必要性に迫られて、弱肉強食の資本主義が修正されていったのである。その意味で、ロシア革命が世界史の中で果たした役割は計り知れないものがある。

◇ソ連の崩壊と社会主義

ところがソ連が崩壊した1991年ごろから、社会主義の思想を排除する動きが世界的な規模で広がった。「社会主義の思想は間違いだった」とする見方が、ソ連崩壊という重い事実を背景に、圧倒的な説得力をもって世界を支配しはじめたのである。

日本共産党も、社会主義思想を全面的に打ち出すよりも、資本主義の枠内での民主的な改革という方向性を重視するようになった。特に最近は、立憲民主党などとの共闘などを考慮して、その傾向を強めている。

資本主義の枠内であっても、民主主義を成熟させれば、それだけでも日本は高い経済力をバックに豊かな福祉国家を実現できるわけだから、共産党の方針が間違っているわけではないが、その結果、大半の国民には、共産党とたとえば立憲民主党の違いが理解できなくなった。新自由主義の導入か拒否かをめぐる政策などでは、異なるが、政治学者でもなければこうした詳細までは検証しない。マスコミにいったては、まったく理解していない。

このような状況は、小選挙区制の下では、共産党に極めて不利に働く。事実、10月の衆議院選挙では大敗した。そこから小選挙区制を疑問視する声もあがっている。

◇日本共産党の敗退

衆議院選挙の結果については、さまざまな評論が出ている。その中には、共産党について厳しい評論をしている人もいる。たとえばBJpressに掲載された「いつまで『党勢拡大』?共産党の懲りない選挙総括」と題する評論の筆者である。

今回の選挙についてこの評論家は、

比例代表で850万票という目標は、440万票に終わった。得票率15%以上という目標も、7.91%に終わった。比例で第3党どころか、自民党、立憲民主党、希望の党、公明党に次ぐ、第5党であった。すべてが目標のほぼ半分にしか到達しておらず、どう取り繕っても惨敗というしかない。

と、厳しい事実を指摘している。

共産党は過去に躍進と後退を繰り返してきたという。「共産党の激しい浮沈ぶりを見ていると、この政党は本当に必要とされている政党なのか、疑問を持たざるを得なくなる」という。そして最後にマルキストにとって、決定的ともいえる一打を打ち下ろして、反共ぶりを露呈する。

社会主義革命を掲げた政党の党勢拡大などあり得ないことをそろそろ受け入れるべきである。

この評論家は筆坂秀世氏である。共産党の元国会議員でセクハラで共産党を除名になった人である。

◇新しい政治モデル

しかし、筆坂氏が主張するように、社会主義の思想は本当に無意味になったのだろうか。最近、日本でもマルクスを再評価する動きが生まれているし、たとえば今世紀になってのち、ラテンアメリカでは、新自由主義の限界を克服するために左派の政権を選択する動きが顕著になっている。筆者が取材してきた中米では、ニカラグアとエルサルバドルが左派政権の国である。

中国は高い経済成長をバックに、先月の共産党大会で「新しい社会主義」の方向性を打ち出した。おそらく中国は近い将来に、新しい(と、いってもマルクスの社会科学の理論が間違っていたということではないが)社会主義のモデルを示す可能性が極めて高い。

キューバも経済封鎖さえ解除されれば、極めて豊かな国家になるだろう。経済的な苦境にある現在でさえ、医療や教育など、人間の尊厳を守るための基本政策は充実しているが、さらに発展するはずだ。米国は、その影響が他のラテンアメリカ諸国へ波及することを警戒して、いまだに経済封鎖を解除しないのである。

一方、日本の資本主義は完全に行き詰まっている。子供を育てるために、朝から深夜までアルバイトを掛け持ちしている母子家庭の主婦がいるありさまだ。餓死する人もいる。「姨捨山」が現実になりかねない。その対極で、株で大もうけして笑いが止まらない大企業がある。

ロシア民衆が帝政ロシアを倒してから100年。その後のソ連共産党の愚策やその原因を認識した上で、社会主義について再考する価値は十分にあるのではないだろうか。