新聞販売店(ASA)から悲鳴、「新聞配達員がいない」、海外から250名を超える新聞配達員をリクルート
かつて新聞は、「インテリが作って、ヤクザが配る」と言われた。ところが最近は、「日本人が作って、外国人が配る」と言われるようになった。
筆者の手元に朝日新聞の新聞配達員が急激に減っていることを物語る1枚の「お知らせ」がある。朝日新聞・東京本社管内の販売店に配布されたもので、そこには外国人の「新聞奨学生」が来日するスケジュールなどが記されている。
3月13日(月)モンゴル21人、ネパール1便16人
3月14日(火)ベトナム1便ホーチミン76人・ダナン15人
3月15日(水)ネパール2便16人
3月21日(火)ベトナムハノイ101人、ネパール3便14人
中国・インドネシア・台湾未定(3月中旬)
都内の販売店員に尋ねたところ、新聞配達の人員が極端に減っているのだという。そこで海外から「奨学生」をリクルートするようになったのである。
新聞が「危篤」状態になっていることを物語っている。新聞販売店の自主廃業が増え、新聞販売網は半ば崩壊していると言っても過言ではない。しかし、販売店の「押し紙」小屋は常に満杯だ。
当然、労働環境も劣悪になる。そこで日本で働くことを希望する発展途上国の人々を新聞配達員として使うようになったのである。
◇過去には韓国人ブローカーが介在
新聞奨学生は、奨学金を受けることにより、転職の自由どころか、廃業の自由もほとんど失う。奨学金で新聞販売店に縛り付けられるからだ。これはいわば借金である。そのために重労働で体調を崩しても、なかなか「奨学生」を辞めるわけにはいかない。
こうした状況の下で、1990年代には、読売新聞の奨学生が過労死している。いわゆる上村過労死事件が起きた。都内の店主が言う。
「外国人の奨学生が同じように過酷な労働をさせられるリスクは高いと思います。これから販売店の労働問題が急浮上してくるでしょう」
実は、海外から新聞配達員をリクルートする動きは、かなり以前からあった。
筆者は2009年に、MyNewsJapanに次のような記事を書いている。
■ 時給5百円未満!朝日新聞販売店の奨学生、韓国ブローカー2万円“ピンハネ”で
これは海外での奨学生のリクルートに韓国人ブローカーが介在していた事件である。このような危機的な状況になっても、新聞人は、いまだに「押し紙」は1部も存在しないと主張している。販売店を苦しめている。
ジョン・スタインベックの小説『怒りの葡萄』には、砂嵐と銀行に農地を奪われたオクラホマの農民が、新天地を求めて旅を続け、たどり着いた楽園、カリフォルニアで過酷な労働に遭遇する姿が描かれているが、同じことが日本でも起こりそうだ。