産経新聞の新聞奨学生が東京都労働委員会に救済申立、危険な新聞奨学生の実態
新聞労連の傘下にある新聞通信合同ユニオンは、産経新聞社、産経新聞・開発株式会社、それに産経新聞・金杉橋専売所の3者に対して、不当労働行為があったとして、11月1日に東京都労働委員会に救済の申し立てを行った。
同ユニオンによると、新聞奨学生のAさんは、2015年11月ごろ、産経開発内にある「新聞奨学会東京事務局」から学費を借り、翌16年の3月15日と16日に、奨学生研修会に参加した。その際に、Aさんは金杉橋専売所の所長と契約を交わしたが、実際に働きはじめると、パンフレットや労働契約書の内容と実際の業務が大きく乖離していた。
たとえば労働契約書では、朝刊の配達時間が午前2時30分から5時30分の3時間になっているが、実際の労働時間は、午前2時から7時半の5時間半だった。
また、ひと月の労働時間は、労働契約書では114時間だったが、実際には1ヶ月平均で166時間だった。さらに勤務先は労働契約書では、麻生専売所だったが、実際に配属されたのは金杉専売所だった。
◇読売・上村過労死事件から4半世紀
新聞奨学生の労働実態は、昔から問題視されてきて、1990年12月4日には、重労働を続けていた読売新聞の新聞奨学生・上村修一さんが、小脳出血で倒れ、搬送先の病院で死亡している。上村過労死事件と呼ばれたこの事件は、裁判になり、新聞奨学生の問題を提起するきっかけとなった。
新聞奨学生の「酷使」の背景には、新聞販売店の経営悪化がある。中央紙の中には、新聞販売店に対する補助金をカットして、支出を抑制し、帳簿上は黒字にしている社もあるが、そのしわ寄せは販売店に及び、新聞販売網が崩壊する危機に陥っている。崩壊は秒読み段階に入っている。
こうした状況の下で、従業員の中で、奨学金により販売店に縛り付けられている新聞奨学生への仕事の負担が増える傾向がある。とりわけ問題なのは、外国人の新聞奨学生に対する待遇である。今は、ベトナム人が増えているが、昔は韓国人や中国人が多かった。10年近く前、外国人の月給は5万円程度だった。
外国人奨学生はブローカーに斡旋され、来日して、東京新宿の大久保にあった「たこ部屋」に一時的に詰め込まれ、それから販売店へ住み込むのだ。人身売買とあまりかわらなった。
【参考記事】
■「新聞奨学生ブラック労働内部告発」記事の削除を要求――配達人集まらず、末期症状露呈した“ブラック育英会”