特定秘密保護法に対する違憲訴訟、全国ですでに5件に、十分な審理を尽くさずに結審するケースも
昨年の12月に施行された特定秘密保護法の違憲無効確認と施行差止などを求める訴訟が、全国ですでに5件起きていることが分かった。舞台は、東京地裁、横浜地裁、静岡地裁、それに広島地裁である。
本サイトでも既報したように、特定秘密保護法は、もともと日本が軍事大国化する中で、米軍と自衛隊の共同作戦の際に生じる秘密事項を保持するための法的根拠を得る目的で浮上してきた。しかし、いざフタをあけてみると、秘密指定の権限をもつ行政機関が次に示す19省庁にも広がっていた。
(1)国家安全保障会議 (2)内閣官房 (3)内閣府 (4)国家公安委員会 (5)金融庁 (6)総務省(7)消防庁 (8)法務省 (9)公安審査委員会 (10)公安調査庁 (11)外務省 (12)財務省 (13)厚生労働省 (14)経済産業省 (15)資源エネルギー庁 (16)海上保安庁 (17)原子力規制委員会 (18)防衛省 (19)警察庁
◇口頭弁論を開かずに判決
最初に違憲訴訟が起こされたのは、静岡地裁だった。特定秘密保護法が国会で成立した2013年12月から2ヶ月後、2014年2月に藤森克美弁護士が1人で起こした訴訟である。
この訴訟では罪刑法定主義と弁護権の侵害が争点になっている。しかし、村野裕二判長が、早々と第2回口頭弁論で近々の結審をほのめかしたために、原告の藤森弁護士は、裁判官忌避を申し立てた。
※罪刑法定主義
どのような行為が犯罪とされ,いかなる刑罰が科せられるか,犯罪と刑罰の具体的内容が事前の立法によって規定されていなければならないという刑法上の原則。(出典:ブリタニカ国際大百科事典)
静岡地裁に続いて、東京地裁でも、2014年3月に違憲訴訟が提起された。原告は、フリーランスのジャーナリスト、カメラマン、映画監督、編集者など43名。この訴訟で原告は、同法が取材活動の自由を侵害する危険性を問題視している。
横浜地裁では、2014年7に市民運動に参加している人々が違憲訴訟を起こした。13人の原告は、この法律が市民運動を抑圧することなどを危惧している。
広島地裁でも、2014年12月、個人訴訟が提起された。原告の会社員は訴状で「秘密の妥当性などをチエックする独立した監視機関の設置が明示されておらず、官僚による情報操作が可能」と指摘している。
なお、『東京新聞』によると、既に棄却された個人による違憲訴訟が1件(横浜地裁)ある。この裁判では、口頭弁論を開かずに判決が下された。
特定秘密保護法を危険視する声が各方面から上がっているだけに、今後、違憲訴訟が増える可能性もある。