特定秘密保護法違憲訴訟、101号法廷の珍事件、判決文4枚(実質的には2枚)の筆力しかない裁判官が「人を裁く特権」を有している異常
4月26日の特定秘密保護法の違憲訴訟で原告のフリーランス側が敗訴したことは既報したが、実は、その判決の際におもしろいことがあった。
大きな注目を集めた事件の判決は別として、大半の裁判の判決言い渡しは、主文だけを読み上げる。裁判長は主文を読み終わると、早々に法廷を後にする。ところが今回は、判決が読み上げられた直後に珍事があった。
裁判長:それでは判決を読み上げます。
主文、1、本件控訴をいずれも棄却する。
2、控訴費用は控訴人らの負担とする。
ここまではごく普通の判決言い渡しである。珍事が起こったのは、裁判長が、
「以下は省略します。」
と、言った次の瞬間だった。原告席に陣取っていた20名ほどの原告の中から、
「省略?」
と、いう声が聞こえた。見るとフォトジャーナリストの豊田直巳さんが、檀上の小林裁判長を見上げている。
小林裁判長の顔に一瞬、はっとしたような狼狽の光が走った。
「あっ、豊田さん?」
すかさず豊田氏が、
「読んでいただけましたか」
と、切り込む。
豊田氏は、戦争の悲劇と特定秘密保護法の危険性を裁判官に分からせるために、自著『戦争を止めたい――フォトジャーナリストの見る世界』を証拠として裁判所に提出していた。提出に際しては、小林裁判長に対してかならず読むように念を押した経緯があった。
小林裁判長は、慌ただしく、
「最初から最後のページまで全部読みました」
と、答えた。
「ありがとうございました」
「・・・・」
「で?」
ざわざわしていた法廷が一瞬しずまり、小林裁判長の言葉を待った。
「まあ、それは判決文を読んでください」
「その点も書いてある?」
小林裁判長は狼狽しながら、
「それでは閉廷します」
と、宣言した。
3人の裁判官は、小林裁判官を先頭に一列になって、足並みよく壇の奥にある長方形の「穴」の中に消えていった。傍聴席から、
「理由ぐらい説明しろよ」
と、野次が飛んだ。
◇裁判官が判決文4枚の筆力ではこまるのだ
既報したように、判決文はたった4ページの異例の短文だった。原告側は、特定秘密保護法によりフリーランスが受けた損害を法廷で具体的に提示したが、それに対する検証はなにも行われなかった。文書として判決文に記録しなかったのだから、検証しなかったことになる。
裁判所の見解は、被害の具体的な事例がまだないので違法かどうかも判断できないというものだが、この法律の運用下では、たとえ逮捕されてもその原因が秘密にされるわけだから、裁判所が特定秘密保護法の具体的な被害を認定すること自体がありえないのだ。
こうした甚だしい矛盾を小林裁判官は認識できていないのではないか?
繰り返しになるが、判決文が4枚(実質的には2枚)しか書けない筆力では、有権者から裁判官の職能に問題があると評価されてもやむを得ない。もっと丁寧に書き直すべきだろう。大学生のレポート以下だ。
国から「人を裁く特権」を与えられている人のレベルがこれなのだ。4枚(実質2枚)ではこまるのだ。