1. 特定秘密保護法の控訴審で原告が敗訴、判決の全文は異例のたった4ページ、疑問視される裁判官の職能

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2016年04月27日 (水曜日)

特定秘密保護法の控訴審で原告が敗訴、判決の全文は異例のたった4ページ、疑問視される裁判官の職能

フリーランスのジャーナリスト、編集者、映像ジャーナリスト42名が起こしている特定秘密保護法違憲訴訟の控訴審判決が26日、東京高裁であり、小林昭彦裁判長は、原告の控訴を棄却した。

判決文は次の通り。

判決全文

原審の東京地裁・谷口豊裁判長は、特定秘密保護法が実際に適用された具体例が存在しないことを理由に、現在の段階では「法律が憲法に適合するか否かを判断することはできない」として、原告の請求を門前払いしていた。

日本には憲法裁判所がないので、特定の法律が違憲に該当するかどうかは、該当する法律が実際に運用されるまでは判断できないという観点である。

東京高裁の判決文は、全文で4ページという異例の短文。

提訴から1年以上の歳月をかけて繰り返し審理した内容や膨大な証拠書類の検証結果をたった4ページにしか集約できなかったことになる。これでは裁判官の職能そのものが疑われる。

■解説・特定秘密保護法

特定秘密保護法は、戦前の治安維持法に匹敵する恐ろしい法律である。具体的にはどのような性質の法律なのだろうか。

厳密に説明すれば複雑になるが、ごく端的に言えば、日本が軍事大国化の方向へ向かう状況のもとで、日米共同の軍事作戦を行う際に不可欠になる情報共有事項のうち、作戦上、秘密にしなければならない事柄を「特定秘密」として指定できる環境を整備するための法律である。

しかし、問題は「特定秘密」の範囲が、際限なく拡大され、日米共同作戦に関連した「秘密情報」の領域をはるかに超え、公権力が隠したい情報の多くが、「特定秘密」として指定できる仕組みになっている点だ。

事実、特定秘密の指定を行う権限を持つ行政機関は、軍と警察に関連した機関だけではなくて、原発を含む次の19機関に及んでいる。

①国家安全保障会議
②内閣官房
③内閣府
④国家公安委員会
⑤金融庁
⑥総務省
⑥消防庁
⑦法務省
⑧公安審査委員会
⑨公安調査庁
⑩外務省
⑪財務省
⑬厚生労働省
⑫経済産業省
⑬資源エネルギー庁
⑭海上保安庁
⑮原子力規制委員
⑯防衛省
⑲警察庁

これら19の行政機関が特定秘密に指定した情報は、特定秘密保護法の対象になる。

特定秘密の指定対象になる情報は、次の4項目である。

 防衛、外交、特定有害活動の防止、テロリズムの防止

これら4項目を見る限り、特定秘密の指定範囲は極めて限定されているように感じられるが、拡大解釈が一人歩きする可能性が高い。

一例をあげると、次のような状況が想定できる。

■具体例

Aさんの自宅近くに携帯電話の基地局が設置された。Aさんは携帯電話から発せられるマイクロ波で体調を崩し、基地局の所有会社を総務省に問い合わせた。すると、

「基地局は緊急時における大事な無線通信網です。テロの標的になるといけないので、情報開示できません」

と、言われた。

説明に納得できないAさんが、その後もしつこく情報開示を求めた場合、Aさんは逮捕→裁判というリスクを背負う。その裁判でも罪名は明かされない。