1. 『秘密保護法』(集英社新書)、共謀罪・盗聴法との関係②

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2015年02月20日 (金曜日)

『秘密保護法』(集英社新書)、共謀罪・盗聴法との関係②

『秘密保護法』の第2章は、足立昌勝・関東大学名誉教授の執筆である。足立氏は、秘密保護法に連動して共謀罪と盗聴法が果たす負の役割についても、認識する必要性を訴えている。
共謀罪について足立氏は、次のように言う。

人が殺人をしようとした場合、計画から始まり、準備し、実行し、結果を発生させます。計画を除いたそれらは、予備・未遂・即遂という犯罪にあたりますが、それぞれは個別の犯罪というより一連の動きであり、一つのものとしてとらえたうえで判断を下すというのが常識的な解釈でした。

ところが共謀罪が適用されると、「犯罪の実行行為がなくても2人以上で話し合うなどすると処罰される」ことになる。

たとえば原発による土壌汚染についてのデータが特定秘密に指定されたと仮定する。しかし、土壌汚染は住民の生命に直接かかわる問題なので、データの入手が必要と判断したジャーナリストAが、雑誌の編集者Bにこのデータを入手する方法について相談を持ちかけたとする。

この時点で、2人の会話が警察に傍受されていれば、共謀の証拠となり、2人に対して「共謀罪」が適用されてしまう。傍受(盗聴)を警察が合法的に実行するためには、盗聴を合法化する法律が必要になる。特定秘密保護法と共謀罪、それに盗聴法が整合性をもった3点セットになっているゆえんである。

さらに次のような事情もある。
周知のように特定秘密保護法を運用するためには、公務員など情報を管理する立場の人々が、管理者としての適正があるか否かを「審査」しなければならない。たとえば防衛省にスパイが潜り込んでいれば、防衛秘密が外部へもれかねないからだ。

そこで情報管理を担当する人々の「適正検査」が行われる。これを担当するのは、公安警察だと言われている。

具体的にどのような方法で「適正検査」を実施するのか?。結論を先に言えば、それは身元調査である。監視カメラなどを使った個人情報の収集、スパイを使った聞き込み、さらには盗聴である。実際、特定秘密保護法と連動して、盗聴法も改悪され、その運用範囲が大幅に広がっている。

◇野中広務氏の「転身」

盗聴法が最初に成立したのは、1999年である。この年、小渕内閣の下で、日本の軍事大国化につながる重要法案が矢継ぎ早に成立した。前年に再販制度という新聞社の既得権を政治家に守ってもらった新聞・テレビは何の抵抗もしなかった。

成立した法案は、周辺事態法、盗聴法、国旗・国家法、改正住民基本台帳法である。後にこれらの法律は、特定秘密保護法の運用と連動してくる。

さらに後年、テロ特措法(2001年)と有事関連3法(「武力攻撃事態法」「自衛隊法改正」「安全保障会議設置法改正」2003年)が成立している。これらの延長戦上に特定秘密保護法があるのだ。

辺見庸氏は、『私たちはどのような時代に生きているか』の中で、野中氏が官房長官だった1999年の通常国会を指して、次のように述べている。

1999年の諸問題は、もちろん、ここに至る長いプロセスがあって、突然に降ってわいてきたわけではないのですから、結果だけを論じることはできないのです。ともあれ、僕としては99年問題の重大性を最大限強調したい。年表で言えば、ここはいちばん太いゴチックにしておかないとまずい。

当時の小渕内閣の官房長官は、現在、憲法9条の重要性を訴えている野中広務氏である。

わたしは、考え方を変えるのが悪いと言っているのではない。大きな影響力を持つ人物でありながら、それまで自分が指揮した政策のどこが誤っていたのかを公にしていないから問題なのだ。

野中氏の「転身」を受け入れる側も、寛大すぎるのではないか?周辺事態法、盗聴法、国旗・国家法、改正住民基本台帳法といった法律が、すべて特定秘密保護法に連動している事実を見据えるとき、野中氏の責任は重い。