1. 第2次真村裁判、福岡高裁の判決を検証する 取材を受けた真村氏に対する言語道断の弾圧 【全文公開】

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2012年06月07日 (木曜日)

第2次真村裁判、福岡高裁の判決を検証する 取材を受けた真村氏に対する言語道断の弾圧 【全文公開】

 5月25日に判決が下された真村裁判・福岡高裁判決(木村元昭裁判長)の検証記事です。判決に問題点が多いことにかんがみて、6日付けと、7日付けを全面公開に切り替えました。

裁判官は人を裁く特権を国から与えられております。一般の人々が絶対に持ちえない権限を有した国家公務員です。従って判決に対して、誰でも自由に意見表明することができます。本来であれば、判決の検証は司法記者の役割ですが、日本の司法記者はその役割を放棄しています。真村裁判の判決を批判すると、自分たちの権益が侵されるからです。

  木村裁判長は、同じ真村事件の仮処命令申立て事件(2008年11月に「決定」)では、真村氏を全面勝訴させる判決を下しました。ところが今回の本訴の高裁判決では、自らが下した仮処分命令申立の「決定」を、否定する内容となっています。

次に読売が強制改廃の理由としてあげた真村氏の「読売敵視の行動」について検証してみよう。具体的には、「黒薮への協力」、「新読売会の設立」、それに真村氏による「別件訴訟の提起」である。

これらの項目の中身は次のようなものである。

1、「黒薮への協力」:真村氏がわたしの取材に応じて、関係資料を提供したこと。

2、「新読売会の設立」:真村氏ら複数の店主らが共同で、新しい読売会を立ち上げたこと。

3、「別件訴訟の提起」:第1次裁判の判決が最高裁で確定したのを受けて、係争中に、読売による「死に店」扱いなどによって受けた損害の賠償を求める裁判を起こしたこと。請求額は、約9000万円。

木村裁判長が下した仮処分申立事件の決定は、「YC広川の新聞販売店たる地位及び債権者(真村)の経済的利益を維持するために取った手段」と評価し、改廃理由として認めなかったのである。

ところが高裁判決では、「1」についての見解が大きく変わっている。この部分の判決を引用してみよう。

【引用】

被控訴人(読売)の指摘する黒薮の記事等には、別件訴訟における控訴人(真村)の主張のほか、被控訴人が、販売店に押し紙を押し付け、それが大きな問題となっていることなどが記載されているが、押し紙の事実を認めるに足りる証拠はなく、控訴人及び黒薮において、押し紙の存在が真実であると信じるにつき正当な理由があると認めるに足りる証拠もない(略)。そうすると、控訴人(真村)において、被控訴人(読売)による違法不当な行為の存在を指摘することが容認される場合があるとしても、本件は、これに当たらないというべきである。

 そして、控訴人(真村)や控訴人代理人(江上武幸弁護士ら)が、上記のような記事の執筆に利用されることを認識、容認しながら、黒薮の取材に応じ、情報や資料の提供を行ったことは明白であり、控訴人(真村)は、少なくとも、黒薮の上記記事等の掲載を幇助したというべきであるから、たとえ控訴人(真村)自身が、押し紙等の批判をウェブサイト等を通じて行ったものではないとしても、その情報や資料の提供自体が、被控訴人の名誉又は信用を害するものというべきであり、本件販売店契約の更新拒絶における正当理由の一事情として考慮し得る。
仮処分申立事件の「決定」とは、正反対の見解を示しているのである。ここには公文書に求められる論理の一貫性は存在しない。かりに仮処分事件の「決定」で、木村裁判官が真村氏の地位を保全していなければ、2つの文書における論理そのものの破綻を重大視する必要はない。世の中にはさまざまな物も見方があると解釈すれば、一応は格好がつく。

が、実際には最初は「白」といっておきながら、後には「黒」と判断しているわけだから訳が分からない。判断を変更した理由を記録しない限り、文書そのものの信頼性だけではなく、執筆者の人間性まで疑われかねなくなる。

改めて言うまでなく、真村氏がわたしの取材に応じ、資料を提供したことを裁判所が改廃理由として認定したことは、今後、言論界に大きな影響を及ぼしかねない。取材に応じたただけ、責任を問われかねないとなれば、こころよく取材に応じてくれる者がいなくなり、ジャーナリズム活動そのものが支障をきたす恐れがある。本来、取材に応じたり自分の意見を自由に表明する行為は、日本国憲法でも保証されているはずなのだが、高裁判決では改廃理由として認定されたのである。

ちなみに真村氏がわたしに提供した資料は、その大半がすでに裁判所へ提出されたものである。つまり裁判所の閲覧室で閲覧すれば、だれでも自由に見ることが出来る資料にすぎない。それにもかかわらず資料を提供した行為が改廃理由として認められたのだ。

さらに特筆しておかなくてはならないのは、読売が社の方針として、わたしの取材を受けない姿勢を貫いている事実である。つまり取材を受けた真村氏が批判され、取材を拒否した読売の主張が認められているのだ。

◆◆◆

話は前後するが、2008年11月に福岡地裁が読売に対してYC広川に新聞の供給を再開するように仮処分命令が下った際に、読売がそれに従わなかった経緯がある。そこで裁判所は読売に対して真村氏へ、1日3万円の間接強制金(制裁金)を支払うように命じた。(このような行為を保全執行という。)その累積額は、現在までに約3000万円に達している。

既に述べたように本訴の判決は、仮処分命令の決定よりも優先する。従って読売は福岡地裁に対して「決定」の取消を求める申し立てを申請した。「決定」を無効にすることで、真村氏に対する間接強制金の支払い中止と、すでに払った金額を返済させることをもくろんだのである。

しかし、これについて福岡地裁は認めない判断を示した。これを不服として読売は、異議を申し立てたが、裁判所はやはり認めなかった。それでも読売はあきらめずに、今度は福岡高裁へ抗告を申し立てた。が、やはり高裁も認めない。

とうとう読売は最高裁に特別抗告を申し立てた。しかし、これも福岡高裁がその必要性がないと判断して棄却した。

ところが第2次真村裁判の福岡高裁判決で勝訴したことで、再び「決定」の取り消しを求める申し立てを裁判所へ行った。裁判所も迅速に対応した。

6月4日、裁判所は読売が100万円を裁判所に担保することを条件に仮に保全執行の停止を認めたのである。公式の決定は、審尋を経てから下される。

これら一連の手続きを担当したのは、本訴で真村氏を敗訴させた当事者である木村判事だった。

真村氏が高裁で敗訴したことに加えて、仮処分申立事件の「決定」の取り消しを求める申立を担当するのが木村判事であることからすれば、結論はほぼ明らかだった。仮処分命令は公式に取り消され、それに伴う保全執行も停止される。そして真村氏が間接強制金として読売から受け取った累積額にあたる約3000万円の返済を迫られる可能性が極めて高い。

しかし、これは見過ごすことができない事態にほかならない。そもそも裁判所が読売に間接強制金の支払いを命じたのは、仮処分申立事件で真村氏の地位が保全されたにもかかわらず、YC広川に新聞を供給しなかったからだ。そのために真村氏が営業を再開できなかったので、読売が命令に従うまでの間、裁判所は保全執行(間接強制金の支払い命令)に踏み切ったのである。

言葉を換えれば、読売が裁判所の命令に従っていれば、真村氏は間接強制金の支払いを受けるまでもなく、販売店経営により生活費を得られたのである。

それにもかかわらず本訴で敗訴したことで、これまで受け取ってきた間接強制金の返済を求められるのだ。

わたしは間接強制金の返済制度そのものが理不尽だと思う。本訴で逆転勝訴した場合、返済が認められるのであれば、経済力があるものは、裁判所の決定に従わない代わりに間接強制金を支払う選択肢があることになるからだ。

10年以上に渡って続いている真村裁判。その全容を検証するとき、単に新聞の商取引きの闇だけではなく、裁判制度の欠点や店主に対する人権侵害の問題も浮上してくるのである。