1. 「押し紙」認定の判例、2007年の対読売新聞裁判、PC上に架空の配達区

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「押し紙」認定の判例、2007年の対読売新聞裁判、PC上に架空の配達区

新聞販売店が起こした訴訟の中で、「押し紙」が認定されたケースは、これまでに3件ある。2006年の福岡地裁、2011年の岡山地裁、そして2020年の佐賀地裁である。

このうち福岡地裁のケースは、その後、2007年12月に最高裁で判決が確定した。福岡高裁の判決は有名で判例タイムズ(2008年6月1日)にも掲載されている。

真村裁判・福岡高裁判決

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しかし、真村裁判は「押し紙」の損害を求めた裁判ではなく、店主の地位保全を求めた裁判である。YC広川(福岡県)の真村久三さんが、2002年に読売新聞・西部本社を訴えた裁判である。

発端は、真村さんが読売本社から自店の営業地区の一部を、隣接するYCへ譲渡するように求められたことである。真村さんは理不尽な要求を断った。これに対して読売は、真村さんの店主としての地位を解任しようとした。そこで真村さんが地位保全を求めて提訴したのである。

読売が提示した解任理由のひとつに、真村さんが新聞の部数内訳を虚偽報告していたというものがあった。具体的に言えば、残紙が存在するのに、それを実配部数に加算して報告し、残紙の存在を隠していたというものである。読売は、これらの残紙が「積み紙」だと主張し、それを改廃理由のひとつにしてきたのである。

「積み紙」とは、販売店が折込広告の水増し手数料を稼ぐためにみずから注文した残紙である。 「積み紙」は、折込詐欺の温床であり、当然、公序良俗に違反し、正当な改廃理由になる。それゆえに読売は、真村さんが虚偽報告していた残紙が「積み紙」だと主張したのだ。

これに対して、真村さんの弁護団は、残紙は「押し紙」だったと主張した。虚偽報告を認めたうえで、そうせざるを得なかった背景に、「押し紙」政策があったと主張したのである。

地位保全裁判にもかかわらず争点が、真村さんが虚偽報告していた残紙は、「押し紙」か、それとも「積み紙」かが争点になった。

福岡地裁と福岡高裁は、読売による「押し紙」を認定した。そして2007年12月に最高裁で判決が確定した。

この判決で興味深いのは、残紙の存在を隠すために、真村さんがコンピュータ上に「26区」と呼ばれる架空の配達区を設置して、架空の読者を登録していた事実が認定されていることだ。そうせざるを得なかった背景に、読売の販売政策があったと認定したのだ。

この裁判には、読売の代理人として、日本を代表する人権擁護団体であり護憲派である自由人権協会の代表理事を務める喜田村洋一弁護士が、読売支援のために東京から福岡へ駆けつけていた。判決が確定した後も別の係争が続いたこともあり、喜田村弁護士は東京と福岡を何度も往復されたようだ。

わたしも1年半の間に被告として3件の裁判に巻き込まれ、約8000万円を請求された。

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『月間HANADA』(2016年7月)に掲載した記事の中で、わたしは真村裁判の福岡高裁判決にふれ、「押し紙」政策が認定された旨を記載した。すると読売東京本社の滝鼻広報部長が版元に抗議文を送付した。

これに対して、わたしはメディア黒書上で反論した。この反論は、福岡高裁判決がどのような性質のものであるかを、一般読者にも分かりやすいように解説している。参考までに下記にリンクを張っておく。

 

読売の滝鼻広報部長からの抗議文に対する反論、真村訴訟の福岡高裁判決が「押し紙」を認定したと判例解釈した理由