1. 読売裁判を担当してきた福岡高裁の木村元昭裁判官が福岡家裁へ異動 真村裁判再考?

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2013年08月07日 (水曜日)

読売裁判を担当してきた福岡高裁の木村元昭裁判官が福岡家裁へ異動 真村裁判再考?

時事通信のニュースによると、福岡高裁の部総括判事で真村裁判や黒薮裁判など、読売関連の裁判を担当してきた木村元昭裁判官が、福岡家裁の所長に就任した。

福岡家裁所長(福岡高裁部総括判事)木村元昭▽福岡高裁部総括判事(那覇地裁所長)高野裕▽那覇地裁所長(那覇家裁所長)高麗邦彦▽那覇家裁所長(東京高裁判事)鶴岡稔彦(以上24日)定年退官(福岡家裁所長)榎下義康(23日)(了)

木村裁判官が、真村裁判でいかに物議をかもす判決を下してきたかは、本サイトで報じてきたとおりである。その裁判官が国費で運営されている福岡家裁のトップに座るとなれば、今後、福岡県民は家裁にトラブルの解決をゆだねることに躊躇(ちゅうちょ)を覚えるのではないか。この人事異動は、日本の司法制度の信用や尊厳にかかわる問題を孕んでいる。

繰り返しになるが、木村裁判官が真村裁判で下した判決で問題になっているのは、次の記述である。(熟知されている方は、スキップしてください。ただし赤字に注意

被控訴人(読売)の指摘する黒薮の記事等には、別件訴訟における控訴人(真村)の主張のほか、被控訴人(読売)が、販売店に押し紙を押し付け、それが大きな問題となっていることなどが記載されているが、押し紙の事実を認めるに足りる証拠はなく、控訴人(真村)及び黒薮において、押し紙の存在が事実であると信じるにつき正当な理由がると認めるに足りる証拠もない(かえって、控訴人は、平成13年には、現実には読者が存在しない26区という架空の配達区域を設けていたところ、これを被控訴人[読売]も了解していたと認めるに足りる証拠はない。)

そうすると、控訴人において、被控訴人による違法不当な行為の存在を指摘することが容認される場合があるとしても、本件は、これに当たらないというべきである。

?? そして、控訴人(真村)や控訴人代理人(江上弁護士ら)が、上記のような記事の執筆に利用されることを認識、容認しながら、黒薮の取材に応じ、情報や資料の提供を行ったことは明白であり、控訴人は、少なくとも、黒薮の上記記事等の掲載を幇助したというべきであるから、たとえ控訴人自身が、押し紙等の批判をウェブサイト等を通じて行ったものではないとしても、その情報や資料の提供自体が、被控訴人の名誉又は信用を害するというべきであり、本件販売店契約の更新拒絶における正当理由の一事情として考慮し得る 。??

?判決内容を予約すると、次のようになる。 ? ? ?黒薮は、「押し紙」についての記事を執筆しているが、「押し紙の事実を認めるに足りる証拠はなく、控訴人(真村)及び黒薮において、押し紙の存在が事実であると信じるにつき正当な理由があると認めるに足りる証拠もない」。 ? ?それゆえに真村さんや真村さんの弁護団が黒薮の取材に協力したことは、黒薮の名誉毀損的なジャーナリズム活動を「幇助」したことになる。 ? ?それは読売の名誉と信用を害するものである。 ? ?従って真村さんを解任する理由として正当である。

多様な議論がある「押し紙」をどう評価するかは、まったく個人の自由である。肯定しようが、否定しようが個人の自由である。憲法21条でもそれを保証している。

ところが「押し紙」を批判する立場で、わたしの取材を受けたことを、黒薮に対する「幇助(ほうじょ)」と位置付け、読売が真村さんを解任する正当な理由として認めているのだ。これでは取材に応じる人がいなくなりかねない。読売の記者にとっても、憂慮すべき事態である。

引用文の赤で表示した部分は、読者には分かりにくいので、解説しておこう。真村さんの店には、若干の「押し紙」があった。しかし、新聞の商取引では、表向きは「押し紙」は1部も存在しないことになっている。その理由は簡単で、「押し紙」が独禁法に抵触するので、親会社である新聞社に迷惑がかかるからだ。

と、なれば店主は「押し紙」も帳簿上は、配達されている新聞として事務処理しなければならない。それが忠実な店主の普通の態度である。そこで真村さんは、PC上に「26区」という架空の配達区域と架空の読者を設定して「押し紙」の事務処理をしたのである。客観的に見れば、これは虚偽の処理である。

ただし、このような方法を誰が真村さんに「指導」したのかは不明だ。木村裁判官の下した判決では、

これを被控訴人(読売)も了解していたと認めるに足りる証拠はない。

と、述べている。だから、読売は「押し紙」の存在を認識していなかったという論理である。「押し紙」は存在しないとする見解の裏付けである。

◇根源的な別の問題が

さらに赤字の記述には、根源的な別の問題もある。    既報してきたように真村裁判は、1次裁判と2次裁判に分類できる。1次裁判は、2002年から2007年の期間である。真村さんが店主としての地位保全を求めて提訴した裁判である。

結果は、地裁、高裁、最高裁とも真村さんの勝訴だった。判決が確定したのは、厳密に言えば2007年12月25日である。本来であれば、この時点で真村さんの地位は完全に保全されたのである。

ところが7ケ月後の2008年7月31日、読売は一方的に真村さんを解任した。そこで真村さんが地位保全を求めて起こしたのが第2次裁判である。

つまり第2次裁判は、2007年12月26日から、2008年7月31日の期間に、真村さんが解任されるに値するような不祥事を起こしたか否かが争点になったのである。ところが、解任理由の理由づけとして、木村裁判官は、すでに第1次裁判で決着がついた「26区」の問題を持ち出しているのである。

ちなみに「26区」について、第1次裁判の高裁判決は、次のように読売を批判している。

聞販売店が虚偽報告をする背景には、ひたすら増紙を求め、減紙を極端に嫌う一審被告の方針があり、それは一審被告の体質にさえなっているといっても過言ではない程である。

この判例は最高裁も認定している。木村裁判官は、その判例を変えただけではなくて、審理の対象外の時期に問題となり、1次裁判で決着したことを、わざわざむし返して、解任理由にしているのだ。

◇870万円の支払いも取り消し

さらに2次裁判について、特筆しなければならない別の事実がある。2次裁判の進行期間に、真村さんは、読売に対する約1億円の損害賠償裁判を起こした。自店を「飼い殺し」にされたわけだから当然だ。

第2次裁判と、損害賠償裁判は、後に統合された。

地裁判決は真村さんの敗訴だった。しかし、損害賠償については、1部を認めた。読売に対して約870万円の支払いを命じたのである。

ところが控訴審で木村裁判官は、損害賠償金の870万円の支払いをも取り消したのである。第1次裁判で真村氏が完全勝訴して、読売に対して慰謝料の支払をも認めたにもかかわらず、損害賠償の必要はないと判断したのである。

木村裁判官が福岡高裁から福岡家裁へ異動したことで、現在進行している真村裁判??読売が真村さんを被告(後に真村さんの奥さんも被告に)に対して、間接強制金(制裁金)約3600万円の支払いなどを請求している裁判??の行方はどう変わるだろうか。成り行きを見守りたい。

裁判官は人を裁く特権を有している。それが濫用された時、国民はどう対処すべきなのだろうか?