最高裁、真村裁判の関連資料を公開できず プロセスカードの存在も疑問 検証作業を経ずに判決を下した可能性も
最高裁に対して行った情報公開請求に対する回答があった。そこで2回に渡って回答内容を検討したい。第1回目は、6月26日付けで行った次の情報公開請求に対する回答を取り上げる。
結論を先に言うと、最高裁は情報開示請求を拒否した。わたしからの請求内容は次の通りである。
上告人・真村久三と読売新聞西部の裁判(平成24年(オ)1604号・平成24年(受)1987号)で、2013年6月18日に、上告を棄却するに至る手続き、議論などのプロセスの内容を示す全文書を公開せよ。
回答は次の通りだった。
文中の上告人・真村久三とは、YC広川(読売新聞販売店)の元店主・真村久三さんである。
◆検証期間は7カ月
真村さんは2001年に読売から、店主としての地位を解任されそうになり、地位保全の仮処分を申し立てた。その後、本訴を提起。2006年9月に地裁で勝訴判決を受けた。さらに2007年6月に高裁でも勝訴する。同年12月には、最高裁が読売の上告(受理申立て)を棄却して判決が確定した。
ところがその7カ月後の2008年7月に、読売は真村さん経営のYC広川を一方的につぶした。そこで真村さんは再び、地位を保全するために仮処分を申し立てると同時に、本訴を起こした。これが第2次真村訴訟である。
まず、仮処分の申し立ては、1審から4審(最高裁への特別抗告)まで真村さんの勝訴だった。ところが不思議なことに本訴では、真村さんが敗訴。高裁と最高裁も、それぞれ下級審の判決を認定して、2013年に真村さんの敗訴が確定した。
第2次真村訴訟を検証するに際しては、次の大前提をおさえておかなければならない。
1、2007年12月に第1次真村訴訟が最高裁で決着して、真村さんの地位保全が確定したわけだから、第2次訴訟で審理の対象になるのは、2008年1月(厳密に言えば、最高裁判決の翌日)から、店主を解任された7月末までの7ヶ月の間である。この7ケ月の間に、店主解任が正当化されるような重大な「不祥事」を起こしたか否かという点である。
◆木村元昭裁判官が下した解任理由
既に述べたように第2次訴訟は真村さんの敗訴である。わたしが疑問視しているこのは、福岡高裁の木村元昭裁判長が下した次の解任理由である。
被控訴人(読売)の指摘する黒薮の記事等には、別件訴訟における控訴人(真村)の主張のほか、被控訴人(読売)が、販売店に押し紙を押し付け、それが大きな問題となっていることなどが記載されているが、押し紙の事実を認めるに足りる証拠はなく、控訴人(真村)及び黒薮において、押し紙の存在が事実であると信じるにつき正当な理由がると認めるに足りる証拠もない(かえって、控訴人は、平成13年には、現実には読者が存在しない26区という架空の配達区域を設けていたところ、これを被控訴人[読売]も了解していたと認めるに足りる証拠はない。)
?そうすると、控訴人において、被控訴人による違法不当な行為の存在を指摘することが容認される場合があるとしても、本件は、これに当たらないというべきである。?
? そして、控訴人(真村)や控訴人代理人(江上弁護士ら)が、上記のような記事の執筆に利用されることを認識、容認しながら、黒薮の取材に応じ、情報や資料の提供を行ったことは明白であり、控訴人は、少なくとも、黒薮の上記記事等の掲載を幇助したというべきであるから、たとえ控訴人自身が、押し紙等の批判をウェブサイト等を通じて行ったものではないとしても、その情報や資料の提供自体が、被控訴人の名誉又は信用を害するというべきであり、本件販売店契約の更新拒絶における正当理由の一事情として考慮し得る 。
判決内容を予約すると、次のようになる。
?黒薮は、「押し紙」についての記事を執筆しているが、「押し紙の事実を認めるに足りる証拠はなく、控訴人(真村)及び黒薮において、押し紙の存在が事実であると信じるにつき正当な理由があると認めるに足りる証拠もない」。
?それゆえに真村さんや真村さんの弁護団が黒薮の取材に協力したことは、黒薮の名誉毀損的なジャーナリズム活動を「幇助」したことになる。
?それは読売の名誉と信用を害するものである。
?従って真村さんを解任する理由として正当である。
◆問題の根源は、「押し紙」
最高裁(岡部喜代子、大谷剛、寺田逸郎、大橋正春)も木村裁判官の下した判決を認定した。
そこでわたしは、最高裁判事がどのような検証を経て、上記の恐るべき判決を認定したのかを確かめるために、情報公開を求めたのである。
たとえば何月何日に第2次真村訴訟の判決についての検討会を開催したことを示す司法行政文書の開示。その検討会に誰が参加したかなどを示す司法行政文書の開示。こうした資料の開示を求めたのである。
ところがこれらの基本情報さえも公開の対象には、ならないというのである。
通常、裁判のスケジュールや実施は、プロセスカードに記録されるはずだ。真村裁判のプロセスカードは存在しないというのだろうか。
かりに今回のような情報公開拒否が許されるなら、最高裁の職員が上告された裁判の関連資料を代理で作成して、判事が事務的に捺印することも可能になる。第2次真村裁判の判決を、最高裁判事らが真面目に検討したのか、疑わしくなる。
第1に「押し紙」が存在しないという認識は、完全に間違っている。もちろん「押し紙」の定義を、狭義に「押し売りされた新聞」と限定してしまえば、理論上は、「押し紙」が存在しないという論理も成り立つが、「押し紙」問題の本質は、新聞社が無駄な新聞を「押し付けたか否か」ではなくて、新聞業界が新聞の公称部数を偽っている事実である。この部分が本質的な問題なのだ。
最高裁判事は、このあたりの事情をまったく理解していない。真村さん側の弁護団が作成した綿密な書面を本当に読んだのか、疑問に思うのである。
ちなみに最高裁が認定した真村さんらがわたしに行った「情報や資料の提供」 が具体的に何を指しているのかも不明のままである。たとえ何らかの資料を受け取っていても、それは弁護団が裁判所へ提出したものだったと記憶している。つまり裁判所で誰でも閲覧できる資料である。それを提供したことが、なぜ、店主を解任する正当な理由になるのか、疑問がる。
あるいは第2次真村訴訟の審理対象になる7ケ月の間には、真村さんからは何も受け取っていない可能性もある。その前の期間には、受け取っているが。
わたしは第2次真村訴訟の判決は、完全に間違っていると思う。最高裁判事には、「押し紙」とは何かという問題から、再検証してほしい。
法律の専門家の皆様は、プロセスカードを公開できない最高裁の姿勢をどう評価されるだろうか?