1. 多発する通信基地局の設置をめぐるトラブル、認識されはじめた5Gによる人体への影響、懸念される遺伝子毒性

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2020年12月19日 (土曜日)

多発する通信基地局の設置をめぐるトラブル、認識されはじめた5Gによる人体への影響、懸念される遺伝子毒性

電話会社が広範囲に通信基地局の設置を進めている状況の下で、電話会社と住民との間のトラブルが多発している。メディア黒書へも、この1週間だけで5件の相談があった。5Gの普及がはじまる前は、相談件数は月に数件だったが、このところ急増している。大半の係争は、楽天モバイルを相手にしたものである。

基地局の設置をめぐるトラブルが増えている現象を、肯定的に捉えれば、無線通信で使われる電磁波による人体影響が多くの人々に認識されはじめた証である。かつては電磁波の危険性とえば、変電所近辺や高圧電線の下の住宅に住む人々に癌や小児白血病が相対的に多いという疫学調査の結果を、一部の層が知っていた程度だったが、ここにきて5Gに使われる電磁波(マイクロ波とミリ波)による毒性について知る人が増えてきた。

これは裁判を起こしてでも解決しなければならない深刻な問題にほかならない。「予防原則」を理由にすれば訴訟の提起は可能だ。危険物に対する説明義務違反にも問えるのではないか。

◆電話会社の手口
住民たちの話から、電話会社による基地局設置の手口が明らかになってきた。次のような共通点がある。個々のケースで例外はあるものの、多くの住民が次のようにトラブルの実態を報告している。

基地局設置に際して電話会社は、設置場所から半径30メートル範囲内の住宅を対象に、基地局設置を告知するチラシを投函して、基地局設置計画を前へ進める。半径30メートルを超える位置関係にある住宅には、何の告知もしない。もちろん住民説明会も開かない。

住民から苦情が出ると、電話会社の担当者が苦情を申し立てた住民の自宅を訪問して、基地局設置を認めるように説得する。

説得の際に電話会社の担当者が持参するのが、総務省が作成したリーフレットである。そこには無線通信で使う電磁波には人体影響がないことが記されている。さらに担当者は、次のように説明する。

「総務省の電波防護指針(規制値)を遵守して操業しますから、絶対に安全です」

しかし、総務省の電波防護指針は実質的には規制になっていない。そのことは海外で採用されている規制値と総務省の規制値を比較すれば、明らかである。たとえば次のように。

日本の総務省:1000 μW/c㎡ (マイクロワット・パー・ 平方センチメートル)

欧州評議会:0.1μW/c㎡、(勧告値)

日本の総務省は、規制値を欧州評議会の勧告値に比べて1万倍も緩やかに設定している。米国と並んで世界で最もゆるやかな規制にしている。しかも、総務省が安全性の根拠としているのは、1990年以前に行われた電磁波に関する研究データで、それ以降の研究データは考慮されていない。検証したことはあるが、規制値を更新することはなかった。

ところがマイクロ波に遺伝子毒性があることは、世界の常識となっている。現在では、原発のガンマ線から家電の低周波電磁波まで、電磁波の仲間には、種類のいかんを問わず遺伝子毒性があると考える説が有力になっている。

事実、WHOの外郭機関である国際がん研究機構(IARC)は、2011年にマイクロ波に発がん性がある可能性を認定した。さらに現在、発がんリスクのランク付けの引き上げを検討している。

また、アメリカの国立環境衛生科学研究所のNTP(米国国家毒性プログラム)の最終報告(2018年)は、マイクロ波と癌の関係は明白と結論づけた。

そのマイクロ波に、基地局周辺の住民は24時間・365日さらされる。たとえ微弱な電磁波であろうが、それが長い歳月に渡って蓄積した場合、どのような人体影響が現れるのか、まだ明確には分かっていない。これまでドイツやイスラエル、それにブラジルで行われた大がかりな疫学調査では、癌との関係が指摘されているが、それだけではすまない可能性が高い。

住民が電話会社に対して5Gで使われる電磁波のリスクを指摘すると、「予定している基地局は5Gではなく、4Gです」と説明する。しかし、近い将来に5Gへ切り替えますとは説明しない。

◆新築のマイホームがだいなしに
基地局設置のトラブルは、だれにでも降りかかってくる可能性がある。新築した家の隣の土地に、基地局が設置されてしまえば、せっかく手に入れたマイホームで、延々と電磁波を浴び続けることになる。電話会社のビジネスの背後で、このような悲劇が起きているのである。

 

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