1. 【動画】「押し紙」廃棄の現場、大量に回収される印刷したばかりの新聞、行き先は製紙工場、新聞公称部数だけでなく世論調査の数字も嘘の可能性

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2017年10月18日 (水曜日)

【動画】「押し紙」廃棄の現場、大量に回収される印刷したばかりの新聞、行き先は製紙工場、新聞公称部数だけでなく世論調査の数字も嘘の可能性

「押し紙」とは、新聞社が新聞販売店に対して、搬入する新聞のうち、配達されないまま廃棄される新聞のことである。たとえば2000部しか配達していない販売店に3000部を搬入すると、過剰になった1000部が「押し紙」である。

ただし、予備紙(配達中の破損などに備えて余分に確保しておく新聞で、通常は、搬入部数の2%)は、「押し紙」に含まれない。

公正取引委員会の見解は、実際に配達する新聞の部数に予備紙をプラスした部数が、正常な新聞販売店経営に必要な部数であって、それを超えた部数は、機械的にすべて「押し紙」と定義している。新聞社は、「押し紙」についても、卸代金を徴収する。一種の押し売りだ。

「押し紙」の割合は、新聞社によってまちまちだが、たとえば毎日新聞の場合は、2002年10月の段階で、搬入部数の36%にも達している。現在は、おそらく50%を超えていると推測される。次の記事を参考にしてほしい。「押し紙」率36%の決定的証拠を示している。

【参考記事「押し紙」を排除したときの毎日新聞の販売収入は年間でマイナス295億円、内部資料「朝刊 発証数の推移」を使った試算

上に示すのが、「押し紙」の回収場面を撮影した動画である。

◇産経の店主が「押し紙」小屋を設置

「押し紙」問題は、古い記録によると昭和初期からあった。「押し紙」の量が急激に増えたのは、ここ50年ぐらいである。しかし、日本新聞協会も新聞社も、「押し紙」は1部たりとも存在しないと開き直ってきた。こうした新聞人らの嘘を立証する最良の方法は、「押し紙」の回収場面を動画で示すことである。

埼玉県に住む元店主がいう。

「埼玉県に約3万部の新聞を扱っている大きな販売店がありまして、わたしが現役だったころは、3万部のうち約1万部が『押し紙』でした」

筆者が2004年ごろに取材したことのある産経新聞・四条畷販売所は、搬入される約5000部のうち、2000部から3000部が「押し紙」だった。「押し紙」の量が膨大なので、店主は「押し紙」小屋を建て、そこに「押し紙」を保存していた。

◇「押し紙」の何が問題なのか

「押し紙」には次のような問題がある。

1,新聞販売店の経営を圧迫する。

2,「押し紙」による損害を相殺するために、販売店は、折込広告の水増しをせざるをえない。「押し紙」にも折込広告がセットになってくるので、「押し紙」分の折込広告は、未配達となる。この未配達部数とセットになった折込広告も未配達になる。(ただし、広告主が折込広告の発注量を自主的に減らせば、この限りではない。)

【参考記事】大量廃棄されるイトーヨーカ堂(セブン&アイ・ホールディングス)の折込広告 高齢者対象の「振り込め詐欺」よりも被害が大きい「折り込め詐欺」

3,読まれていない新聞を印刷して廃棄するのだから、資源の無駄となる。環境問題でもある。

◇世論調査の数字も嘘の可能性が?

「押し紙」の損害賠償を求める裁判は、これまで繰り返し起こされている。しかし、そのほとんどで販売店が敗訴している。例外として、山陽新聞に賠償を命じた裁判などがある。また、「押し紙」裁判ではないが、販売店が提起した地位保全裁判で、「押し紙」政策を認定した判例もある。読売新聞の例である。参考までに判決を紹介しておこう。

福岡高裁判決(真村訴訟)

「押し紙」問題は周知の事実になっているが、裁判になると、なぜか新聞社が勝訴する。「押し紙」は存在しないという結論になる。新聞を押しつけた証拠が存在しないという理由で、裁判所はこの問題にメスを入れてこなかったのだ。

筆者にいわせれば、裁判所の見解は完全な詭弁である。「押し紙」回収業が一大産業として成立している事実は、「押し紙」が存在することを意味する。それにもかかわらず裁判所は、この問題にメスを入れない。

なぜか?答は簡単で、新聞社が司法当局と同様に日本の権力構造の一部に組み込まれているからである。マスコミが権力から独立した組織と考えてはいけない。新聞社(さらにテレビ局)は、世論誘導の役割を果たしているので、「押し紙」問題にメスを入れてつぶすわけにはいかないのだ。

筆者はメディアリテラシーの中で、「押し紙」問題も教えるべきだと思う。日本の新聞社に「押し紙」という経営上の汚点があれば、新聞社は政府・警察・公取委からそれにメスを入れられるのを警戒して、公権力に「忖度」せざるを得なくなる。その結果、ジャーナリズムが世論誘導の道具に変質するのだ。

世論誘導の典型としては、新聞社が発表する総選挙の投票動向に関する世論調査の数字である。新聞人は、新聞の部数を誤魔化してきたわけだから、世論調査の数字を操作するぐらい何とも思っていないだろう。

読者が想像している以上に、マスコミは悪質なのである。その象徴が「押し紙」問題の放置にほかならない。