1. 「押し紙」を排除したときの毎日新聞の販売収入は年間でマイナス295億円、内部資料「朝刊 発証数の推移」を使った試算

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2016年10月12日 (水曜日)

「押し紙」を排除したときの毎日新聞の販売収入は年間でマイナス295億円、内部資料「朝刊 発証数の推移」を使った試算

最近、再びクローズアップされているのが「押し紙」問題である。あるいは新聞の偽装部数問題である。新聞史の中で、現代の動きを捉えると、第3波が始まっているといえよう。

第1波は1980年代の初頭。5年間にわたり共産党、公明党、社会党の3党が共闘して、国会の場で、新聞販売問題の追及を展開した。質問回数は、実に15回に及んだ。

第2波は2007年、読売の「押し紙」政策を認定した真村裁判の判決が最高裁で確定した時期である。この時期、雑誌が盛んに「押し紙」問題を取り上げた。が、読売が週刊新潮と筆者に対して、名誉毀損裁判を提起したのを機に、ぴたりと第2波がやんだ。

※読売は真村裁判が「押し紙」を認定したとする主張を否定している。次の記事を参照にしてほしい。

【参考記事】新聞の偽装部数「押し紙」を考える集会の講演画像が完成、江上武幸弁護士が真村裁判を語る

この裁判には、喜田村洋一・自由人権協会代表理事が読売の代理人として登場して、歴史的に見ても読売、1部も「押し紙」は存在しないと堂々と主張した。

第3波は、今年の2月に朝日新聞の記者が日本記者クラブで、公取委の杉本和行委員長に「押し紙」問題について質問したのを機として起こった。

◇現在の新聞社経営の決定的な弱点

筆者はかねてから、新聞ジャーナリズムが機能しない、あるいはたとえ記者が大問題の取材に着手しても、結局は途中で「腰砕け」になるのは、新聞社経営のビジネスモデルに重大な汚点があるからだと考えてきた。記者の職能の問題ではない。記者には能力が高いひとがおおい。この問題を公取委や警察が取り締まれば、新聞社経営そのものが破綻しかねないので、権力批判が出来なくなっているのだ。

かりに「押し紙」が排除されたら、新聞社は大きな収入源を失うことになる。販売収入も、広告収入も失う。だから大問題の取材に着手しても、その大半は途中で「腰砕け」になるのだ。

具体的に「押し紙」を排除した場合に新聞社はどの程度の減収になるのか。毎日新聞のケースをシミュレーションしてみよう。

◇「朝刊 発証数の推移」

使用するのは、同社の内部資料「朝刊 発証数の推移」である。この資料によると2002年10月の段階で、新聞販売店に搬入される毎日新聞の部数は約395万部である。これに対して発証数(読者に対して発行される領収書の数)は、259万部である。差異の144万部が「押し紙」である。

当然、シミュレーションは、2002年10月の段階におけるものだ。

■裏付け資料「朝刊 発証数の推移」

かりにこの144万部の「押し紙」が排除されたら毎日新聞は、どの程度の減収になるのだろうか。シミュレーションは次の通りである。大変な数字になる。

◇シミュレーションの根拠

事前に明確にしておかなければならない条件は、「押し紙」144万部の内訳である。つまり144万部のうち何部が「朝・夕セット版」で、何部が「朝刊だけ」なのかを把握する必要がある。と、いうのも両者の購読料が異なっているからだ。

残念ながら「朝刊 発証数の推移」に示されたデータには、「朝・夕セット版」と「朝刊だけ」の区別がない。常識的に考えれば、少なくとも7割ぐらいは「朝・夕セット版」と推測できるが、この点についても誇張を避けるために、144万部がすべて「朝刊だけ」という前提で計算する。より安い価格をシミュレーションの数字として採用する。

「朝刊だけ」の購読料は、ひと月3007円である。その50%にあたる1503円が原価という前提にするが、便宜上、端数にして1500円の卸代金を、144万部の「押し紙」に対して徴収した場合の収入は、次のような式で計算できる。

1500円×144万部=21億6000万円(月額)

最小限に見積もっても、毎日新聞社全体で「押し紙」から月に21億6000万円の収益が上がっている計算だ。これが1年になれば、1ヶ月分の収益の12倍であるから、

21億6000万円×12ヶ月=259億2000万円

と、なる。

ただ、本当にすべての「押し紙」について、集金が完了しているのかどうかは分からない。担当者の裁量で、ある程度の免除がなされている可能性もある。しかし、「押し紙」を媒体として、巨額の資金が販売店から新聞社へ動くシステムが構築されているという点において、大きな誤りはないだろう。同時に「押し紙」によって、販売店がいかに大きな負担を強いられているかも推測できる。

新聞は、一部の単価が100円から150円ぐらいだから、だれても手軽に購入できる商品である。そのためなのか、ややもすれば新聞社の儲けは少ないように錯覚しがちだが、販売網を通じて安価な商品を大量に売りさばく仕組みになっているので意外に収益は大きい。

■冒頭写真:ビニール包装が「押し紙」。新聞包装は、水増しされた折込広告。