1. 世論誘導の危険、三重大学・児玉克哉副学長による裏付けがない参院選議席獲得の予想

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2016年01月07日 (木曜日)

世論誘導の危険、三重大学・児玉克哉副学長による裏付けがない参院選議席獲得の予想

7月の参院選で予想される各党の獲得議席数を推測する記事が、早くも掲載されるようになった。たとえば三重大学副学長の児玉克哉氏は、Yahooニュースで、自民党の圧勝を予測している。タイトルは、「参議院選挙の予想~自民党単独過半数、自公おおさかで3分の2を確保」。

■記事の全文

具体的には次の数字を示している。

自民党  61議席(比例19議席)総計  127議席
公明党  15議席(比例8議席) 総計   26議席
おおさか  5議席(比例4議席) 総計 10議席
こころ   0議席(比例0議席) 総計  3議席

民主党  26議席(比例6議席)総計  42議席
維新の党  4議席(比例4議席) 総計    5議席
共産党   5議席(比例 4議席)総計   13議席
生活の党  2議席(比例1議席) 総計      3議席
社民党   1議席(比例1議席)総計        2議席
日本を元気 1議席(比例0議席)総計    3議席

何を根拠にこのような数字を予測しているのかは、まったく分からないが、同氏は、『週刊現代』による予想も紹介している。次の数字である。

    自民党  61議席(比例19議席)総計   127議席
 公明党   15議席(比例8議席) 総計 26議席
 おおさか 5議席(比例4議席) 総計 10議席
 こころ     0議席(比例0議席) 総計  3議席

 民主党  26議席(比例6議席)総計   42議席
 維新の党  4議席(比例4議席) 総計  5議席
 共産党   5議席(比例 4議席)総計  13議席
 生活の党  2議席(比例1議席) 総計    3議席
 社民党   1議席(比例1議席)総計  2議席
 日本を元気 1議席(比例0議席)総計  3議席

◇数字の裏付けが不明

選挙前に予想獲得議席数を公開する行為は、世論誘導の典型的な手口のひとつにほかならない。自民党が圧勝するという予測を流せば、自民党政治を嫌う人々は、「自民党の圧勝なら、投票に行く必要はない」と考えるからだ。

その結果、投票に行かない。当然、投票率が下がる。投票総数も低下する。その結果、自民党の得票数も落ちる。が、それでも「勝者ひとり」の小選挙区制の仕組みで、自民党の圧勝という奇妙な構図になる。

逆にメディアが自民党大敗の予想を流せば、反自民の勢力は、政権交代の可能性に期待して、投票場へ足を運ぶことになる。それが自民党に不利に働くことは言うまでもない。

こうしたメディアを利用した世論誘導は昔から行われてきた。メディア側がそれを自覚的にやっているのか否かは不明だが、結果として世論誘導の片棒をかついでいる。しかも、それは新聞・テレビだけではない。雑誌もインターネットも同類である。

選挙予想を公表してはいけないというルールはないが、しかし公表する以上は、数字の裏付けを詳しく示さなければならない。

ところが三重大学・児玉副学長の記事には、どういう取材と調査によって、自民党が圧勝するという結論に至ったのかが、まったく説明されていない。情報としてまったく信用できない。

◇マスコミによる世論誘導

非正規社員が労働者の約4割を占め、消費税による庶民の負担がどんどん増え、医療・福祉も削られる一方で、多国籍企業化した大企業は海外のタックスヘイブンに利益を蓄積し、空前の内部留保と好景気を享受している。このような矛盾した構図を、ジャーナリズムが客観的に報じていれば、かなり多くの国民は自民党へ投票することが、自らの首を絞める結果を生むことを自覚するだろう。

が、選挙になれば、とりこぼしはあってもやはり自民党が強い。その背景に日本のマスコミによる巧妙な世論誘導がある。われわれが想像している以上に、日本のマスコミには重大な問題を内包している。社会進歩を妨害している。

■参考記事:安倍首相の応援団と化した日本のマスコミ、『ZAITEN』が首相とメシ食う人々を紹介