1. 「仕掛け人」の世代交代、小沢一郎氏から橋下徹氏へ、野党再編の茶番劇20年の中身とは?

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2015年09月04日 (金曜日)

「仕掛け人」の世代交代、小沢一郎氏から橋下徹氏へ、野党再編の茶番劇20年の中身とは?

【サマリー】野党再編の仕掛け人が、小沢一郎氏から橋下徹氏に交代しようとしている。これまで野党再編の場に常に登場してきたのが小沢氏である。小沢氏は自民党政治に不満を持つ人々の受け皿になりながら、政策の中身は自民党と基本的に変わらない構造改革=新自由主義の路線を支持してきた人物である。

  安倍政権が危機に立たされるなか、同じような役割を担って登場してきたのが橋下徹氏である。しかし、橋下新党は、自民党に不満を持つ有権者の受け皿となっても、中身は基本的に同じだ。結局、自民党延命装置として機能する可能性が高い。

メディアで伝えられているように維新の党が分裂する公算が強くなった。同党から離れた橋下徹・大阪市長と松井一郎・大阪府知事が中心になって年内に新党を立ち上げる見込みだ。

橋下氏がこの時期に「再編」に打ってでたのは、単に現在の政情に反応したというだけではなくて、新党結成が来年にずれ込むと、政党助成金の取り分がなくなる事情があるからだと思われる。政党助成金は12月末日の時点における議員数に応じて、次年度に交付される。秋口から冬にかけて、毎年、政界再編の現象がみられるゆえんにほかならない。

さて、政界再編というキーワードで連想するのは、小沢一郎氏である。小沢氏はもともとは自民党に所属していたが、1993年に構造改革=新自由主義を叫んで、果敢に自民党を飛び出し政界再編に着手した。

小沢氏は新進党を皮切りとして、なんらかの形で常に野党再編に加わり、民主党政権の時代には、総理に就任する手前まで階段を上り詰めた。93年ごろに小沢氏が目指していた日本の未来像は、たとえばみずからの著書『日本改造計画』(講談社)の冒頭で語られている「自己責任論」などに見ることができる。

皮肉なことに小沢氏が提唱した構造改革=新自由主義は、小泉政権の手で急進的に実行された。が、小泉政治がもたらした非正規社員の増加や医療・福祉の切り捨て、それに貧困層の急増は、国民の自民党離れを引き起こして、民主党・鳩山政権を誕生させる。

鳩山首相は、自民党政治で生じた社会的不公平を是正したり、軍事大国化に歯止めをかけようと試みたが、思想的なひ弱さが原因したのか、米国の圧力に屈した。改革はできなかった。

後継者の菅首相は再び構造改革=新自由主義へ軌道を修正し、野田首相を経て、自民党・安倍首相にバトンを返した。

こんなふうに1993年からの日本の政治的軌跡を検証してみると、ひとつのあるパターンが定着していることに気づく。それはこうである。

①自民党政治に対する国民の不満が高まる。

②政界、あるいは政党の再編を目指す人物がしゃしゃり出てきて、自民党のニセの「対抗勢力」を結集する。この対抗勢力は、さすがに看板には「自民党」とは明記していないが、基本的な路線は、自民党そのもの、構造改革=新自由主義の推進派路線である。

③しかし、メディアが両者を対抗勢力として描き出すために、自民党政治に不満がある有権者の大半が、「対抗勢力」に投票する。が、もともと政策に大きな違いがなく、自民党政治の不満の受け皿の役割を果たしているわけだから、政治が変わるはずがない。変わらないのが当たり前だ。そこで再び、「やはり自民党の方がまし」ということになり、自民党政治が復活する。

日本はこのようなパターンを繰り返してきた。

◇再び政界再編の茶番劇が

そしていまかつての小沢氏の「役割」を代行する人物が現れた。橋下徹その人である。橋下氏は大阪市政の実態を見る限り、生粋の新自由主義者である。「小さな政府」の提唱者である。自民党よりも右寄りで、安倍内閣との連携が噂されるゆえんにほかならない。

橋下氏が担っている役割は、かつて小沢一郎氏が担っていた役割にほかならない。「仕掛け人」の世代交代が実現することになる。

ちなみに、現在、維新の党と民主党の連携もメディアの話題になっているが、すでに述べたように、維新の党はいうまでもなく、民主党も構造改革=新自由主義の推進政党である。つまり安倍政権が崩壊し、彼らが政権を取っても、政治はほとんど変わらない。

野党が政界の再編を行うのであれば、これまで政界再編において排除してきた共産党と社民党を再編の中心軸にしなければ、本当の対立構造にはならない。こんな単純なことをメディアが報じないために、日本は没落の一途をたどっている。