1. 懸念される安保関連法と特定秘密保護法の「複合汚染」、核兵器の運搬を支援物資の運搬と偽ることも可能に

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2015年09月03日 (木曜日)

懸念される安保関連法と特定秘密保護法の「複合汚染」、核兵器の運搬を支援物資の運搬と偽ることも可能に

【サマリー】安保関連法と特定秘密保護法は、相乗効果によりとんでもない事態を招きかねない。たとえば自衛隊から戦死者が出た場合、戦死者に関する情報を特定秘密に指定してしまえば、だれがどのような状況で戦死したのか、誰も知ることができない。核兵器を運搬しても、それに関する作業を特定秘密に指定しておけば、「支援物資を運んだ」で通用してしまう。

  特定秘密保護法は広義の安保関連法である。特定秘密保護法を廃止に追い込めば、ジャーナリズム活動により戦争の実態を伝え、安保関連法も廃止に追い込むことができるが、同法への関心は薄れはじめているようだ。

 今、日本では安保関連法の「複合汚染」が始まろうとしている。

複合汚染という現象がある。これは公害に即していえば、単一の因子では、さして深刻な人体影響を及ぼさないが、複数の要因が重なると相乗効果によって重大な人体影響を出現させるメカニズムを意味する。

たとえば子宮けい癌の原因はヒト・パピロマ・ウィルスによる感染であるが、それだけでは癌を発症するリスクは高くならないが、これに環境因子が加わったときに、発症率が高くなる現象は、よく知られている複合汚染の具体例である。

8月30日に東京・永田町の国会議事堂周辺を12万の人々が取り囲んだ事実に象徴されるように、今、日本では安保関連法案の危険性を感じている人々が増え続けている。ところがこうした世論の動きとは裏腹に、2014年の12月から施行された特定秘密保護法の危険性については、むしろ認識が薄れ始めているようだ。この法律についても、かつては疑問を呈する声が広がり、法案が成立した夜には、人波とプラカードが国会を取り囲んでいたのだが。

特定秘密保護法と安保関連法は、個々部別のものなのだろうか。意外に認識されていないようだが、特定秘密保護法も広義の安保関連法のひとつである。しかも、両者を同時に運用することによって、ドラスチックな「複合汚染」を生むことになる。

たとえば、自衛隊の派兵先を特定秘密に指定すれば、日本軍が地球上のどの地域で銃撃を繰り返しているのかというような情報は、海外のメディアにアクセスできる者をのぞいて知ることができない。核兵器を自衛隊が運搬しても、この「作戦」を特定秘密に指定しておけば、誰が、誰に、何の目的で、何を運搬したのか、だれも知ることができない。

核兵器ではなく、たとえば救援物資を運搬していることにしておけば、それで通用するのだ。

海外の戦地で自衛隊員が銃弾に倒れても、戦死者に関する情報を特定秘密に指定しておけば、戦争被害の実態はベールに包まれたままになる。

かりに特定秘密保護法がなければ、ジャーナリズムの力で戦争の事実を伝えることで、世論を喚起し、戦争を中止へ追い込むことができるかも知れないが、この法律によりジャーナリズム活動そのものが著しい制限を受けるわけだから、大半の国民は、海外で自衛隊が何をしているのかすら知ることができなくなる。

◇自衛隊から死者が出ても秘密に

もともと特定秘密保護法は、武力行使を前提とした日米共同作戦を遂行する上で、両軍の軍事秘密を守るための法的根拠を担保するために、米国側から発案された法律である。しかし、その適用範囲が日米の軍事秘密の枠を超え、恐らくは原発をはじめ、ほとんどあらゆる分野にまで及んでしまったというのが実情だ。

が、この法律の元来の運用目的は、戦争に関する情報を隠蔽することにある。と、すれば特定秘密保護法も安保関連法のひとつとして位置づけるべきではないだろうか。両者を切り離して報じるのは誤っている。

安保関連法案は、残念ながら成立する勢いだが、まず特定秘密保護法を廃止に追い込んで、ジャーナリズムを正常に機能させることが、海外派兵を止めるための重要な作業ではないだろうか。

海外へ進出した多国籍企業を「政変」や「革命」から守るために、自衛隊員が血を流すのは道理がない。他国民の民族自決権を踏みにじること自体が蛮行にほかならない。