1. 埼玉県知事選挙にみる自民党の大敗ぶり、安倍内閣に対する不信感をそのまま反映

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2015年08月10日 (月曜日)

埼玉県知事選挙にみる自民党の大敗ぶり、安倍内閣に対する不信感をそのまま反映

 【サマリー】埼玉県知事選挙の投票が9日に行われ、非自民保守系の上田清司氏が圧勝した。安倍政権の強引な国会運営の下、自民党の支持を受けた塚田桂祐氏の得票率が注目されたが、上田氏の58%に対して塚田氏は28%だった。自民党の大敗だった。

 一方、共産党系の柴田やすひこ氏は、前回知事選の共産党系候補に比べて得票率(14%)を大きく伸ばした。埼玉知事選は、国政の構図がそのまま反映するかたちになった。

埼玉県知事選挙の投票が9日に行われ、上田清司氏(現職)が4回目の当選を果たした。上田氏は維新の党と民主党埼玉県連の支持を受けた。

知事選には5人が立候補したが、事実上、上田清司(維新・民主支持)、塚田桂祐(自民支持)、柴田やすひこ(共産支持)の三つどもえ戦だった。
上田氏の圧勝は予想していたが、わたしが注視していたのは、自民党県連の支持を受けた塚田桂祐氏がどの程度の票を得票するかという点だった。安保関連法案を強引に押し通そうとしている安倍内閣・自民党の姿勢に対して、埼玉県民がどのような評価を下すのかに注目したのである。

結果は次の通りだった。

《投票率26.63%》

上田清司(現職・民主・維新支持):891,822 [58.4%]

塚田桂祐(自民支持):322,455  [21.1%]

柴田やすひこ(共産支持):228,404 [14.9%]

塚田氏は上田氏に大敗した。上田氏は現職の強みはあったが、みずから条例化した知事の多選(最高で3期12年まで)を自粛するルールを破るかたちでの立候補だったために、県民の反発も予想され、自民系の塚田氏が善戦する可能性もあった。しかし、結果は自民系の塚田氏の惨敗だった。まったく太刀打ちできなかった。

◇自民と非自民保守

しかし、当選した上田氏も前回の知事選に比べると、得票率などを大きく減らしている。その要因として、今回は自民党の支持を得られなかったこともある。

前回知事選の結果は次の通りである。

《投票率24.89%》

上田清司(民主・自由・公明支持): 1,191,071票  [84.3%]

原冨悟(共産支持) :171,750  [12.2%]

今回の知事選における自民系の塚田氏と非自民保守系の上田氏の獲得投票を合計すると、1,214,277票となり、前回知事選の1,191,071票 よりも増えている。これは反自民の票が左派の共産党へではなく、非自民保守系へ流れていることを示している。共産党にはアレルギーがあるから、自民系がダメなら非自民保守系へ投票するパターンが続いていることを示している。

このパターンは2大政党制が導入された1990年代の半ばから続いている。しかし、変化の兆しもある。共産党の動きである。

共産党は今回、投票総数も得票率も大きく伸ばした。これらの票は、諸派支持層と無党派層の票を集めた可能性が高い。

◇国政をそのまま反映

個人的な見解を述べれば、自民系と非自民保守系ではほとんど政策に変わりがない。たとえば民主党は時代によっては政策に違いが見られるものの、基本的には新自由主義=構造改革の推進政党である。急進的な新自由主義=構造改革を進めた小泉政権を生み出した原因も、小泉首相に先駆けて、民主党が先に新自由主義=構造改革の政策を提唱していたからである。

それに負けじとして、小泉首相がドラスチックな「改革」を押し進めたのだ。鳩山内閣の時代、民主党は一旦は方向転換したが、菅・野田政権で再び新自由主義=構造改革へと舵を戻した。

軍事大国化の問題にしても、民主党は過去の有事法制を成立させる過程で自民党に協力した経緯がある。

今回の埼玉知事選挙を政党相互の攻防とみるならば、非自民保守系の上田氏と自民系の塚田氏では、明確な対立構造にはなっていない。どちらが知事になっても根本的な違いはない。

それでも自民党が支持を失い共産党が台頭してきた状況は、国政をそのまま反映している。