イラク特措法制定時に自民党幹事長だった山崎拓氏が安保法制の改悪に反対
かつて自民党の幹部として、国政の先頭に立った4人の政治家が、12日、安保法制の改悪に反対する声明を発表し、日本記者クラブで記者会見した。
わたしはこれら4人の政治家の軌跡を詳しくは知らないが、一般的な常識の範囲で考えても、違和感を感じる。自民党議員=改憲派といった短絡的な解釈をしているわけではないが、歴代の自民党政権が基本的に米国に追随する路線の上を暴走してきたのは紛れもない事実である。
そして、最後に行き着こうとしているゴールが、米軍と共同で多国籍企業の権益を防衛するための派兵体制である。
もちろん政治家が路線変更することは自由だ。しかし、その場合、自分が過去に行った政治のどこが誤りだったのかを、明らかにするのが前提になるはずだ。政治家はただならぬ影響力を持っているからだ。ひとりの市民が支持政党を変えるのとはわけが違う。
その意味で4氏の行動は、政治家が踏むべき当然のプロセスを経ていないのではないか。また、それを抵抗なく受け入れる民意にも問題がある。
◆山崎氏とイラク特措法
山崎拓氏は、もともと改憲派である。2001年の5月3日(憲法記念日)には、『憲法改正―道義国家をめざして』という著書も出版している。
山崎氏はちょうどこの時期に、新自由主義=構造改革の急進的な導入を図った小泉内閣の幹事長に就任している。
護憲派のなかには、改憲には反対だが、新自由主義=構造改革の導入(小泉改革)には賛成というスタンスの人も少なくない。山崎氏の場合、このカテゴリーにも該当せず、新自由主義=構造改革の導入にも、改憲にも賛成という小泉内閣の方針とまったく同じスタンスに立っていたといえる。
事実、同氏が幹事長だった2003年、イラク特措法が成立して、自衛隊が海外へ派兵されている。
◆政治力学
新自由主義=構造改革の導入と、改憲、あるいは軍事大国化は、1990年代半ばから、日本の政治にみられる著しい特徴である。しかし、ふたつの国策が別々に存立しているわけではない。
新自由主義=構造改革の背景に、企業の多国籍化にともなう国際市場の出現があり、新市場の「秩序」を多国籍企業の側から守るために、海外派兵の体制を構築しようとする政治力学が働いているのである。マスコミは、完全にこの点を隠している。あるいはそれ以前に理解していない。
安倍内閣が新自由主義=構造改革を強引に進め、それと並行して改憲を目指していることに、何の不思議もない。
なお、山崎氏を除く3氏については、情報不足で評価のしようがない。