1. 「シリアにおける邦人へのテロ行為に対する非難決議」、国際関係の中での憲法9条という認識の欠落 、唯一の例外は山本太郎議員

日本の政治に関連する記事

2015年02月10日 (火曜日)

「シリアにおける邦人へのテロ行為に対する非難決議」、国際関係の中での憲法9条という認識の欠落 、唯一の例外は山本太郎議員

衆議院の議員数は475人 。 参議院は242人。「シリアにおける邦人へのテロ行為に対する非難決議」が、山本太郎議員を除く、716名の議員による賛成で可決された。決議日は、衆議院が2月5日で参議院が6日である。

非難決議の内容は、次のようなものである。

今般、シリアにおいて、ISILにより二名の邦人に対し非道、卑劣極まりないテロ行為が行われた。本院は、この許しがたい暴挙を、断固非難する。また、御家族の御心痛を思えば言葉もなく、誠に無念、痛恨の極みであり、深い同情の念を表明する。

このようなテロ行為は、いかなる理由や目的によっても正当化されるものではない。我が国及び我が国国民はテロリズムを断固として非難するとともに、決してテロを許さない姿勢を今後も堅持することを本院はここに表明する。

我が国は、中東・アフリカ諸国に対する人道支援を拡充することにより国際社会の平和に寄与するとともに、国連安保理決議に基づいて、テロの脅威に直面する国際社会との連携と取組を一層強化するよう、政府に要請する。

さらに、政府に対し、国内はもとより、海外の在留邦人の安全確保に万全の対策を講ずるよう要請する。

最後に、本院は、我が国国民を代表し、本件事案への対応に際し、ヨルダンを始めとする関係各国、国際機関及び関係者によって示された強い連帯と、解放に向けてなされた協力に対し、深い感謝の意を表明する。

右決議する

◇山本議員の主張

少数意見が多数意見よりもはるかに説得力がある場合がある。山本議員は、非難決議の何を問題にしたのだろうか。山本議員のウエブサイトによると、以下の3点について、考慮する必要性を感じたという。

①今回の事件の検証。イラク戦争の総括を含む。

  発覚から、犯行映像が出るまでの間、政府の指示は的確であったか?拘束から殺害まで、関係機関が、どの様なルートに繋ぎ、危機管理の最高責任者がどんな判断をしたのか。人質の存在を知りながら総選挙まで行った経緯、人質の生命が危険な状態に置かれる事を鑑みることなく行われた中東訪問と、演説内容などなど。人質の救出のために何がベストの方法であったのかも、検証が必要です。

さらに山本議員は、イスラム国を生んだ背景の検証を、有志連合によるイラク侵攻(2003年3月20日)にまでさかのぼって検証する必要性を訴えている。周知のように、米国を中心とした有志連合はフセイン政権が大量破壊兵器を隠し持っているという口実で、イラクに対する軍事作戦を開始した。

が、フセイン政権が崩壊した後、大量破壊兵器が存在した事実がないことが判明している。その前に、フセインは処刑された。

イスラム国は、戦後、イラクの混乱の中から台頭してきた勢力である。これは有志連合による軍事作戦では、紛争を解決できなかったことを意味している。混乱は現在も持続しているのである。

②特定の国名の明記を避けた関係各国への謝辞。

この決議文では具体名が上がっているのは、ヨルダンですが、直接の空爆に踏み込んでいる国でもあります。現在、武力攻撃を行っている国に対して、謝辞を述べる事は、リスクがあると考えます。

それも国民の信託を受けた国会議員の決議文にそれが記される事は、有志連合と一体になって、「屈しない」「許さない」と言う話にとらえられないでしょうか?

中東地域で現在、武力による直接攻撃を行っている有志連合国とは一定の距離を置かなければ、日本国内がテロの標的にされる可能性が高まる、と考えました。

改めて言うまでもなくヨルダンは、米国の同盟国である。パイロットが殺害された後、ヨルダンがイスラム国に対して連日、「鉄の雨」を降らせていることは周知の事実である。しかも、それを非難する報道は皆無に等しい。メディアにより、イスラム国がテロ集団というイメージが広がっているからだ。

③英訳文を同時に用意する事

 総理の発言や発信が、英訳のされ方によって、考えていたよりも強い表現になってしまう、という事を私たちは何度も経験したのが、今回の事件だったのではないでしょうか。

 日本の国会議員が揃って出す決議の内容を意訳されてしまわない様に、一言一句、こちらの意図通りの翻訳で、決議内容を英訳する必要性を提案しました。

◇国際社会の中での憲法9条

私は、この非難決議の内容は、憲法9条を持つ国の議員が採択したとは思えないほど杜撰(ずさん)で形式的なものだと感じている。武力行使で紛争が解決しないことは、イラク侵攻でも、アフガニスタン侵攻でも明らかになっている。

と、なれば憲法9条を持つ日本が、外交でイスラム国問題を解決するイニシアティブを取らなくてはならない。9条を持つ日本は、国際社会の中で、そういう役割を担っているはずだ。

ところが驚くべきことに、

国連安保理決議に基づいて、テロの脅威に直面する国際社会との連携と取組を一層強化するよう、政府に要請する

と、述べているのである。これは、有志連合によるイスラム国に対する空爆を支持しますと述べているに等しい。が、客観的にみれば、「処刑」も自爆テロ(特攻隊)も、空爆も等しく重大な戦争犯罪である。

「国会議員らが烏合の衆(うごうのしゅう)になった」という声をあちこちで聞くようになったが、そのダメぶりは、非難決議に賛成する議員が716人で、修正を求めた議員が1人という結果に如実に現れた。

護憲を主張している議員も、国際関係の中での9条の役割に気づいていないのではないだろうか。