1. 数字で見る小選挙区制のカラクリ、前回の衆院選で自民は27%の得票率で294議席を獲得

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2014年12月02日 (火曜日)

数字で見る小選挙区制のカラクリ、前回の衆院選で自民は27%の得票率で294議席を獲得

衆院選がスタートする。わたしは衆院選のたびに小選挙区制の理不尽さを痛感する。

小選挙区制についての論文は多いが、その中でも際だって説得力があるのは、渡辺治著『安倍政権と日本政治の新段階』(旬報社)の劈頭(へきとう)に掲載された「総選挙の結果が示した日本政治の新たな段階」と題する論考である。

この論文は小選挙区制の矛盾をずばり指摘している。とても明快に論じられている。

渡辺氏が例として引き合いにだしているのは、2012年12月16日に投票が行われた衆院選である。周知のように、これは第2次安部内閣を成立させた選挙である。客観的な事実(数字)をもとに小選挙区制のカラクリを説明している。

この選挙で自民党は、294議席を獲得した。このうちの237議席が小選挙区の議席である。民主党が大勝した2009年の衆院選における自民党の獲得議席数は、119議席だったから、議席を約2.5倍に増やしたのである。

この数字だけを見れば、自民党は国民から圧倒的な支持を受けたような印象を受ける。ところが2009年の衆院選と2012年の衆院選における自民党の得票率(比例区を採用)を比較してみると、それが幻想であったことが分かる。小選挙区制のカラクリが一目瞭然になる。

【自民党の得票率の変化】
2009年の衆院選:26.72% (119議席)
2012年の衆院選:27.62%  (294議席)

つまり自民党の得票率は0.9%しかアップしていないのに、議席数は2.5倍に増えているのだ。それどころか、「得票数においては投票率が下がったことも影響して、およそ219万票も減少している」(同書)のである。

このような現象が起こった原因は、民主党の大敗である。渡辺氏は次のように述べている。

では、小選挙区において自民党はなぜ議席の独占を果たすことができたのだろうか。その最大の理由は、定数一という小選挙区制の条件のもとで、自民党に対抗して議席を争ってきた民主党が激減し、維新の会はじめ新党も、小選挙区では知名度、浸透の点で、自民党に遠く及ばなかったからである。民主党票の歴史的激減、これが自民党大勝の第一の理由である。

◇小選挙区制と小沢一郎氏

つまり2012年の衆院選で自民党が議席を大幅に増やした事をもって、自民党が国民から信任されたとは言えないのである。この選挙は、小選挙区制は民意を反映しない典型である。

国民から信任されたとはいえない自民党・安部内閣が強引に進めたのが、特定秘密保護法、解釈改憲、TPP推進、10%の消費税導入の決定、など大半の国民が嫌がっている政策である。今回の選挙で自民党が勝てば、法人税の段階的引き下げ、労働法制の改悪、議員定数の削減、改憲などが進む可能性がある。

今回の衆院選の小選挙区でも、自民党が議席を独占する可能性が高い。もはや二大政党制が崩壊しているからだ。たとえ民主党と連携した野党が議席をとっても、政策そのものが、自民党と基本的には同じである。

たとえば、民主党はアベノミックスに反対しているが、これは反新自由主義の立場からの反対ではなくて、新自由主義で生じた矛盾を克服しながら新自由主義を柔軟に導入することを主張しているだけの話だ。維新の党に至っては、急進的な新自由主義者の集まりである。次世代の党は、ネオコンである。

ちなみに小選挙区制の導入でイニシアチブを発揮したのが、小沢一郎氏である。

その小沢氏は、生活の党のウエブサイトに掲載されたインタビューで次のように語っている。

「小沢代表、小選挙区制度と政権交代、二大政党政治の未来について語る 」 

個人的な感想になるが、小沢氏と生活の党の支持者のあいだには、考え方や方針について、相当に大きなギャップがあるように感じる。支援者が「○」で、議員が「×」なのがこの政党である。