1. 安倍内閣の支持率32.6%、新自由主義=構造改革と軍事大国化に対する「NO」

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2014年07月10日 (木曜日)

安倍内閣の支持率32.6%、新自由主義=構造改革と軍事大国化に対する「NO」

「Yahoo!みんなの政治」によると、安部内閣の支持率は次のようになっている。調査期間は、6月26日~6月28日。

支持する:32.6%

支持しない:66.5%

■出典:「Yahoo!みんなの政治」

安部内閣が集団的自衛権の容認を閣議決定したのは、上記の世論調査が実施された後の7月1日である。従って低い支持率の原因が、改憲に対する警戒心にあるとすれば、閣議決定が完了した現時点での支持率はさらに下がっている可能性が高い。

ちなみに「Yahoo!みんなの政治」の世論調査は、2重投票できない仕組みになっている。さらに投票数も、今回の場合、4、4230票で新聞社による世論調査とは比較にならないほど多い。

たとえば日本新聞協会が中央調査社に依頼した消費税の軽減税率の適用措置に関する世論調査の回答者は、たったの1210名だった。「Yahoo!みんなの政治」の投票総数の36分の1である。

しかも、発注先の中央調査社の会長が、新聞協会の幹部であったことも発覚している。

■参考記事:消費税軽減税率、新聞への適用是非を問う世論調査の発注先会長は新聞協会重役 

また、MEDIA KOKUSYOでも既報したように世論調査の専門家集団とされる新聞通信調査会の理事の大半が、共同・時事の関係者であることも判明している。

■参考記事:新聞の優位性を示す世論調査を実施した新聞通信調査会の理事の大半は、共同・時事の関係者、理事のひとりにセクハラで失脚の共同通信の前社長・石井聰の名前も

新聞社の世論調査は信ぴょう性に欠ける。

◇新自由主義=構造改革と軍事大国化  

安部内閣の支持率低下は、何を象徴しているのだろうか。既に述べたように、それは改憲に対する警戒心であると思われるが、厳密に言えば、それは小泉内閣の時代から本格化した新自由主義=構造改革と軍事大国化に対する不支持である。枝葉末節はあるにしても、究極はこれら2つに集約できる。

たとえば新自由主義=構造改革について、分かりやすい例をあげれば、消費増税と法人減税の相互関係がある。法人税を減らすのが、安部内閣の方針(長期的にも税率が下がっている)であるが、改めて言うまでもなく、これは大企業の税負担を軽減することに目的がある。

そのためには小さな中央政府に再編(構造改革)して、財政支出を抑制する体制を整えることで企業の税負担を減らすと同時に、福祉や医療などの公的サービスを民間に置き換えることが必要になる。かくて医療のビジネス化など規制緩和策が並行して行われているのである。

それでも財源が不足するので、消費税を値上げすることでそれを補おうという政策だ。安部内閣は、発足してまもなく、アベノミックスの第2の矢、公共事業の大判ぶるまいを断行したが、現在の時点からこれを検証すると、結局のところ、公共事業の財源を消費税アップで国民がカバーした図式になる。

とはいえ新自由主義=構造改革は、マスコミが宣伝するように単に小さな政府を目指すだけではない。携帯電話の基地局設置に年間50億円もの補助金を支出することに象徴されるように、成長分野の産業にはどんどん財政を支出する。

エリートの養成もその一端である。東京・品川区で石原知事が学区を廃止して、学校格差を容認した政策がその典型である。企業に貢献できる少数のエリートを養成するのが目的だ。その他の「落ちこぼれ」は、「美しい国」を愛する心を精神教育やスポーツで育てる。

司法改革の中で、法科大学院を設置したのも、広義の新自由主義=構造改革の政策である。企業法務の専門家を養成する政策が背景にある。が、司法改革制度が失敗に終わったことは、誰もが認めることである。

国境なき時代を見据えて、バイリンガルの弁護士からなる大手法律事務所も生まれたが、弁護士の数が増えすぎて、スラップの温床となっている。

◇海外派兵と多国籍企業の関係  

軍事大国化については、その背景にあるものが隠されている。「戦争が出来る国にする」のが目的と言った安部批判が盛んだが、抽象的で分かりにくい表現である。社会通念からして、戦争を好むバカはいないからだ。

軍事大国化の目的は、新自由主義=構造改革と連動して、企業活動が海を超えて地理的に拡大した結果、武力で多国籍企業を守る体制を財界が望むようになったからである。

■参考:経済同友会・「実行可能」な安全保障の再構築

海外派兵と多国籍企業の関係を示す典型例は、ラテンアメリカにおける米国の軍事介入に焦点をあてると分かりやすい。派兵の本質が見えてくる。  年代順に米軍による軍事介入(軍事訓練の指導も含む)とCIAによる介入を追ってみよう。

■1954年 グアテマラ

■1961年 キューバ

■1964年 ブラジル 

■1965年 ドミニカ共和国 

■1971年 ボリビア 

■1973年 チリ

■1979年~ニカラグア内戦

■1980年~エルサルバドル内戦

■1983年 グレナダ

■1989年 パナマ

◇「ダウンサイジング オブ アメリカ」  

1996年、今から約20年前にNYT(ニューヨーク・タイムズ)で連載されたルポ、『ダウンサイジング オブ アメリカ』(邦訳は、同名で日経新聞社から刊行)は、新自由主義が吹き荒れた米国の実態を次のように伝えている。今、日本で起こっていることではないだろうか。

ニューヨークタイムズが労働省統計を分析したところによると、1979年以来、米国では4300万以上の仕事が失われてきた。消滅した仕事の多くは、店の廃業や工場移転などごく普通の経済の変動が原因になっている。そして、この間、失われた雇用をはるかに上回る雇用が創出されてきた。

しかし、消えてなくなりつつある仕事のほとんどは高級ホワイトカラーのもので、その多くは大企業での雇用だ。男性と同じように女性の職も失われている。地位の高い仕事も多い。スピード違反の走行距離計がカチカチなり続けるように、消えていく仕事の数は毎日うなぎ登りに増えている。   米国の家庭をのぞいて、いかに多くの人々が傷ついているかを見てみよう。

安部内閣の支持率32.6%は、まさしく現在日本の実態を反映しているのである。