1. 消費税、混合診療、残業代ゼロ、議員定数削減 、新自由主義政策の整合性を検証する

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2014年04月24日 (木曜日)

消費税、混合診療、残業代ゼロ、議員定数削減 、新自由主義政策の整合性を検証する

安倍内閣のもとで、消費税率の引き上げ、法人税の引き下げ、議員定数の削減、「残業代ゼロ」制度導入、「混合医療」の導入などが進んでいる。これらの政策は、国民の生活を直撃しかねないが、安倍内閣の支持率はあいかわらず50%を維持している。その背景に、マスコミの劣化がある。

マスコミに接していると、安倍内閣が打ち出している個々の政策がばらばらに進行しているような印象を受ける。その原因は単純で政策の背景にどのような政治思想があるかを正確に報じないからだ。

結論を先に言えば、安倍内閣の政策は、すべて新自由主義の土壌から発生している。それゆえに新自由主義とは何かを把握すると、個々の政策の整合性が見えてくる。

新自由主義とは、労働運動の中で人々が獲得してきた資本主義社会の規制を取り払って、経済を市場原理に委ねると同時に、成長産業に対しては財政支援を積極的に行ったり、公共サービスを民営化することで、新市場を提供して、 大企業を手厚く優遇する政策にほかならない。

1993年に小沢一郎氏らが、構造改革を訴えて自民党を飛び出し、細川内閣を成立させた。この政変こそが新自由主義への第一歩である。つまり構造改革とは、厳密に言えば、日本を新自由主義の国へと再編するプロセスである。 それゆえに広義には、教育改革や司法制度改革なども含んでいる。

さらに多国籍企業を防衛するためのシステム?改憲による海外派兵の体制を構築することもその一端として位置づけられている。

新自由主義が導入された背景には、国境なきビジネスの時代の到来に伴い、企業の国際競争力を高める必要が生じたからだ。そのために企業の負担を減らすという大前提がある。「企業の負担」とは、具体的には法人税の負担を意味する。

かつての自民党政治は、税金を公共事業や補助金に割り当てることで、利益誘導をはかり自民党支持層を維持してきた。しかし、莫大な財政支出を続ける限り、大企業は法人税を負担し続けなければならない。そこで日本でも、財界が新自由主義の導入を希望するようになったのである。

◇消費税の引き上げと法人税の引き下げ  

財政支出の削減という観点から安倍内閣の政策を検討してみると、新自由主義の原理が露骨に貫かれている。たとえば消費税を引き上げて、法人税を引き下げる政策である。

周知のように3%の消費税が導入されたのは、1988年の竹下内閣の時代である。この時期は、円高の影響で日本企業の海外進出が本格化する時期である。いわば構造改革が始まる前夜である。

そして新自由主義の導入が本格化したのは、1996年に成立した橋本内閣の時代である。その象徴的ともいえる政策は、大店法の廃止だった。消費税は3%から5%に引き上げられた。

橋本内閣の後継内閣では、新自由主義の導入が鈍化したが、これに怒った財界に押されて小泉純一郎氏が登場し、ドラスチックな構造改革を断行した。その結果、格差が広がり、貧困が大問題になり、構造改革は停滞した。そして新自由主義に歯止めをかける民主党・鳩山政権を産んでしまったのだ。が、鳩山政権はあっけなく崩壊した。

そして菅政権と野田政権で再び新自由主義が再起動し始め、安倍内閣に入ってそれが本格化している。実際、消費税が5%から8%に引き上げられた。

その一方で、法人税は、1990年に37.5%だったものが、2012年には25.5%になっている。さらに安倍内閣の下で、税率引き下げが検討されている。

ここ20数年の間、消費税を引き上げ、法人税を引き下げるという典型的な新自由主義の政策が進行しているのである。

◇「混合診療」導入の愚

昨日の読売新聞(23日付け)に、安倍内閣が導入しようとしている「混合診療」にエールを送る社説が掲載された。「混合診療」というのは、読売によると、「公的医療保険で認められた検査や薬とともに、保険適用が認められていない治療法を併用する」制度である。

読売は、「患者が効率的な先端治療を受けられるよう、早期に実施する必要がある」と述べているが、的はずれな論評である。「混合診療」が目指しているものは、公的医療費の削減である。

「混合診療」の導入により、治療法の選択肢が広がるとしても、それは資金的な余裕を持っている人についていえることである。しかも、公的医療保険でカバーする医療行為の幅を政府が縮小していけば、「貧乏人」は医療を受けられなくなる。福祉としての医療が縮小して、市場原理が持ち込まれるのである。

ここにも財政支出の削減と、公的サービスをつぶして企業への新市場を提供する新自由主義の思想が露骨に現れているのだ。

「残業代ゼロ」制度導入も、大企業に配慮した規制緩和策であることはいうまでもない。

議員定数の削減も、やはり新自由主義の政策と無関係ではない。議員定数の削減は、表向きは議員みずからがムダな財政支出を削減する姿勢を国民に示すことにあるようだが、本当の目的は別のところにある。

小選挙区制という制度を利用して、新自由主義に反対している社民党と共産党を国会から排除することが、その目的といえよう。その意味では、これも新自由主義の導入を図る政策のひとつにほかならない。