1. 情報通信政策に見る政府・官庁・財界の癒着 構造改革(新自由主義)=脱官僚支配のウソ

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2014年02月24日 (月曜日)

情報通信政策に見る政府・官庁・財界の癒着 構造改革(新自由主義)=脱官僚支配のウソ

次に示すのは、安倍内閣の下で総務省に設置された「電波政策ビジョン懇話会」の構成員一覧である。

■「電波政策ビジョン懇話会」構成員一覧 

最も異様なのは、企業や業界団体の面々が名を連ねていることである。つまり選挙で選ばれたわけでもない企業人が望む政策が、直に政策決定に反映する仕組みが機能しているのだ。

驚くべきことに経団連の常務理事・椋田哲史氏も構成員になっている。改めていうまでもなく、経団連は財界人の集まりである。

■経団連の役員一覧??

また、情報通信ネットワーク産業協会専務理事の大木一夫氏も、構成員になっている。ちなみに同協会の役員構成は次の通りである。

■「情報通信ネットワーク産業協会」構成員一覧??

他にも野村総合研究所、三菱総合研究所、日本総合研究所などの関係者が名を連ねている。

さらに興味深いことに、日経新聞の論説委員までがメンバーに加わっている。おそらくこれは「広報」の役割を果たしてもらうための措置ではないか。皮肉にも、日経の論説委員が独立したジャーナリストと見なされていない証である。

日本の権力構造を、内閣府や省庁に設置される各種の審議会・委員会などを検証することで部分的に解剖すると、極めて前近代的で、議会制民主主義の理念に反した側面が露呈する。

委員は、選挙で国民の信任を得ているわけではない。政治家や官僚の裁量で選出されているのだ。

ちなみに「電波政策ビジョン懇話会」の他に、総務省には、情報通信審議会も設置されている。委員は次の通りである。読売新聞の知野恵子氏の名もある。

■情報通信審議会の委員

◇ 「構造改革=脱官僚支配」のウソ

1996年に橋本内閣の下でスタートした構造改革=新自由主義の政策とは、?規制を緩和することであり、?官僚支配から脱却することであり、?小さな政府を構築して大企業の財政負担(税負担)を軽減することなどだった。

その背景にはビジネスの国境が消え、しかも、旧社会主義圏に新市場が開けた時代が到来した下で、企業に国際競争力を付けてもらい、大企業の繁栄により、国民全体を富ませようという思想があった。

このような政策は、米国レーガン政権や英国サッチャー政権、それにチリのピノチェト将軍による独裁政治の下で強力に推進された前例がある。これらの政策の評価は、賛否両論があるが、日本の場合、少なくとも官僚支配から脱却する政策には、極めて多くの人々が共感して、民主党を躍進させる原動力になった。小沢一郎氏が支援されたもの、このあたりの政策にあったようだ。

ところが構造改革=新自由主義の総仕上げの段階に入った第2次安倍内閣の下では、これまでにないほど、財界の要望を政策決定に直に反映されるシステムが構築されているのだ。少なくとも電波政策に関しては、財界が直接政策決定に大きな影響力を及ぼす状況が進行している。

構造改革=新自由主義は、結局、大企業の繁栄をサポートするシステムにほかならない。必要となれば、アベノミックスに見られるように、大企業に対する財政支出も辞さない。その一方で、雇用形態を「非正規」の方向で構造改革した結果で、貧困が大問題になっている。

長野県の飯田市でNTTドコモが、住民の反対を押し切って、携帯基地局の設置工事を断行した背景にも、財界が安倍内閣と共働体制にあるという安心感があるからではないか。

「失われた20年」は、構造改革=新自由主義に騙された20年だった。